研究開発

Scientific Reports (サイエンティフィックレポーツ)

分子状水素(H2)溶存血液透析液を使った新しい血液透析療法は、慢性血液透析患者の予後を改善する:前向き観察研究

要約:近年の研究により水素分子(H2)は抗炎症剤としてのユニークな生物活性を有することが明らかとなっている。我々は水の電気分解を利用した水素分子H2(30-80ppb)溶存透析液を供給する新しい血液透析システム(E-HD)を開発し、そして臨床効果探索のために非ランダム化、非ブラインドによる前向き観察研究を行った。維持透析患者を電解水透析(E-HD n=161)または通常透析(C-HD n=148)に振り分け研究期間中、前向きで血液透析を受けた。主要評価項目は総死亡と非致死性心血管合併症(うっ血性心不全、虚血性心疾患、脳卒中、虚血による下肢切断)の複合発生率とした。平均観察期間は3.28年で、その間両群間に透析パラメーターの違いはみられなかった。


しかし、E-HD患者においては透析後高血圧が、降圧薬の有意な減少をもって抑制された。91イベントが発生し、その内C-HDは50イベント、E-HDは41イベントであった。交絡因子(年齢、心血管合併症歴、血清アルブミン、C-反応タンパク)を調整後のコックス比例ハザード多変量解析により、E-HDは主要評価項目に対して独立寄与因子であった(ハザード比0.59(95%コンフィデンスインターバル:0.38-0.92)。H2溶存透析液による血液透析は、慢性透析患者の予後を改善しうる。


試験対象および方法:7施設の透析患者309名(161名が電解水透析、148名が通常透析。いずれも通院)を対象とし、5年間連続して治療と並行して前向き観察調査を行い、患者の身体所見および各種臨床 検査、服薬歴、患者の自覚症状に関するアンケートなどのデータを集め、比較解析しました。


結果:透析自体の臨床的効果・安全性に両群間に違いは見られませんでしたが、電解水透析群では透析後の高血圧の改善、必要な1日当たりの降圧薬の投与量の減量が観察されました。平均観察期間3.28年の間に、91件の死亡および心脳血管病が確認されました(電解水透析群41件、通常透析群50件)。電解水透析群では通常透析群と比較して死亡・心脳血管病の発生が41%低い結果(*)となり、電解水透析は、慢性透析患者の心脳血管病を抑制し、患者予後を改善する可能性が示されました。
*:ハザード比0.59(95%信頼区間:0.38-0.92)。通常透析における発生率を1とした際に電解水透析は0.59であり41%低く、電解水透析は統計学上有意に有効であることを示します。




■論文は下記よりご覧いただけます(英文、オープンアクセス誌)
https://www.nature.com/articles/s41598-017-18537-x

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