研究開発 発表論文一覧電解水透析関連論文一覧

Kidney International(キドニーインターナショナル)Vol.64(2003),pp.704-714

電解水による末期腎臓疾患患者(ESRD患者)に対する血液透析誘発性酸化ストレスの緩解

電気分解によって得られた電解還元水(ERW)は、活性酸素種(ROS)を消去し、DNAの酸化損傷を防御する。ERWの防御メカニズムは、高い還元能力を有する原子状の活性水素に起因する。この活性水素がROSの消去能を有しており、細胞の酸化還元の制御に関与しているものと考えられる。
血液透析は、実施中に血液内にROSを発生させ、患者に大きな負荷を課すことになる。そこで、血液透析によってもたらされる酸化的ストレスの増大を減少させるため、血液透析実施においてHD-24K(日本トリム社製)によって得られるERWを透析液とする新しい方式を組み込んだ。
3箇月間の血液透析のワンクールに、このインビボ試験を実施し、透析による酸化的ストレスに対するERWの影響を評価した。まず、H2O2(過酸化水素)とHOCl(次亜塩素酸)系の測定法を確立したのち、ERW処理を施した血液透析によって、ROSが消去されることを確認した。ERWのあり、なしの透析の前後で、化学発光(CL)の発光スペクトラムを比較することによって、血漿中のH2O2とHOCl濃度を測定し、また、CL-高速液体クロマトグラム(CL-HPLC)を用いて、PCOOH(フォスファチジルコリン過酸化物)を測定した。ERW血液透析を施すことにより、ROSが消去され、さらに、こうしたERW処置後のESRD患者において、酸化された脂質やタンパクおよび炎症マーカーの血漿中濃度が、処置前と比較すると低下することが本研究で明らかになった。透析液溶媒にERWを用いることは、長期的に透析を実施しているESRD患者において、循環器系の有害事象の引き金となる酸化的ストレスを防ぐという観点から、臨床上有用であると考えられる。

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