逆浸透膜浄水器とは?ろ過の仕組みや導入メリットなどを解説 | 水と健康の情報メディア|トリム・ミズラボ - 日本トリム


逆浸透膜浄水器とは?ろ過の仕組みや導入メリットなどを解説

逆浸透膜浄水器(RO膜浄水器)は、水に含まれる不純物や微細な物質をほぼ完全に除去できる高性能な浄水装置です。医療や研究分野で使用されている印象が強いかもしれませんが、近年では家庭用としても注目され、導入するご家庭が増えています。

一方で、「逆浸透」という言葉から難解な印象を受け、関心を持ちながらも導入を躊躇している方も少なくありません。

今回は、逆浸透膜浄水器の構造や主要部品の役割、ろ過の仕組み、さらには導入時に知っておきたいメリット・デメリットについて解説します。まずは逆浸透膜浄水器をよく知るために、「浸透現象」や「逆浸透現象」の知識について学んでいきましょう。

浸透現象とは?

「浸透現象」とは、濃度の異なる溶液が「半透膜[※]」と呼ばれる特殊な膜を挟んで接したとき、濃度が低い方から濃度が高い方へと水分子が移動する現象のことです。

例えば、純水(何も混ざっていない純粋な水)と塩水を半透膜で仕切った容器に入れると、純水側の濃度が低いため、純水側から塩水側に向かって水分子が移動することになります。その結果、塩水側の体積が徐々に増えていき、水面の高さも上昇します。

この浸透現象が起こるのは、両側の濃度を均一に近づけようとする自然の原理が働くためで、私たち人間の体内でも頻繁に起きています。

例えば、細胞の外壁にある細胞膜が上記の例で言うところの半透膜の役割を果たし、細胞内外の水分バランス調整を行っています。この水分バランス調整も浸透現象によるものなのです。

※. 半透膜とは、水分子のような小さな分子は通すが、塩や糖などの溶質分子は通さない膜のこと。

逆浸透現象とは?

「逆浸透現象」とは、浸透現象とは逆向きに水分子が移動する現象です。つまり、濃度の高い方から濃度の低い方へと、強制的に水分子を移動させる仕組みを指します。自然に起こる浸透現象の方向を、人の力で逆転させているため「逆浸透」と呼ばれます。

例えば、半透膜で仕切られた容器に純水と塩水を入れたとしましょう。このまま放置すると、浸透現象によって純水側の水分子が塩水側へと移動していきますが、塩水側に圧力をかけることで、純水側に水分子を押し戻すことができます。すると、塩水中の塩分は半透膜を通過することができないため塩水側に残り、純粋な水分子のみが膜を通って、純水側に移動します。結果として、塩分を含まないきれいな水を得る(増やす)ことができるというわけです。

この逆浸透現象を浄水器として実用化したものが、「逆浸透膜浄水器」です。

逆浸透膜浄水器とは?

逆浸透膜浄水器は、前述の「逆浸透現象」の原理を応用した高性能な浄水装置です[※1]。水道水に含まれる不純物をナノメートル(10億分の1メートル)レベルでろ過し、不純物をほぼ完全に除去できる浄水器として知られています[※2]。

最大の特徴は、「逆浸透膜」という膜を使用している点にあります。逆浸透膜とは、逆浸透現象を利用して純水を取り出すために使用される半透膜のことで、水の分子サイズ程度を透過させることができる特性を持っています。

この膜を使用することによって、以下のような不純物をほぼ完全に取り除くことができると言われています。

・細菌
・ウイルス
・鉛
・カドミウム
・ヒ素
・アルミニウム
・アスベスト
・ビスフェノールA
・トリハロメタン類
・塩素
・放射性物質
・農薬類
・硝酸性窒素
・亜硝酸性窒素
・ダイオキシン
・環境ホルモン
・トリクロロエチレン
・テトラクロロエチレン など

また、他の浄水器では難しいとされる、溶解性物質(ナトリウムイオンや塩化物イオンなど)の除去ができるという点は、逆浸透膜浄水器の大きな強みといえるでしょう。

逆浸透膜浄水器の技術は、1950年代にアメリカで海水を淡水化するために開発され、1981年にはNASAが宇宙飛行士の生活用水(尿など)の再利用に採用したことで、実用化が大きく前進しました。その後、工業用や研究用に広がり、1990年代には家庭用としても普及が進みました。

そして、近年では医療機関や製薬・食品工場、飲料メーカーなどで、高純度の水を得る手段としても利用されています。さらに、災害時の緊急用浄水装置としても有用性が評価され、いくつかの自治体では実際に導入・配備が進んでいるようです。

※1. 逆浸透膜浄水器は、「逆浸透」の英語読みである「Reverse Osmosis」にちなんで、「RO膜浄水器」と呼ばれることもあります。
※2. 水道水に含まれる不純物の除去率は、通常95%以上とされており、中には99%以上の除去率を誇る製品もあるようです。

内部構造と主要部品の機能

逆浸透膜浄水器は、複数の部品(コンポーネント)が連携して機能する精密な浄水システムです。その内部構造は、主に以下の4つの部品から成り立っています。

①プレフィルター
②電動増圧ポンプ
③逆浸透膜
④貯水タンク

それぞれの機能について、具体的に見ていきましょう。

プレフィルター

最初に水が通過する部品は「プレフィルター」です。

一般的に、逆浸透膜浄水器には複数のプレフィルター(カートリッジ)が設置されていて、最初に目の粗いフィルターで大きな粒子を除去し、次により細かなフィルターで微小な粒子を除去します[※]。また、プレフィルターには活性炭が採用されているものもあり、塩素や有機化合物、悪臭の原因となる物質を吸着除去します。

最初からいきなり逆浸透膜でろ過しようとすると、逆浸透膜が目詰まりを起こしやすく、また水道水中の塩素によってダメージ(腐食)を受け、逆浸透膜の寿命が短くなってしまいます。プレフィルターには、これらの不具合を予防するための重要な役割があるのです。

※. プレフィルターの種類や本数は、製品によって異なります。

電動増圧ポンプ

前述のとおり、逆浸透現象を起こすためには、水に一定の圧力をかける必要があります。逆浸透膜浄水器には、その圧力を発生させるための「電動増圧ポンプ(加圧システム)」が実装されています。これにより、水道の水圧が弱いご家庭でも逆浸透を起こすことができ、効率的なろ過が行えます。    

逆浸透膜

プレフィルターで大まかにろ過され、電動増圧ポンプで加圧された水が、次に通過する部品は「逆浸透膜」です。

逆浸透膜には、0.0001μm(マイクロメートル)ほどの非常に微細な孔が空いていると言われています [※]。そのため、水分子は通過させますが、ナトリウムやカルシウムなどのイオン、重金属、農薬、細菌、ウイルスなどの不純物はほぼ完全に阻止します。そして、この膜を通過した水は「きれいな水(RO水)」と「汚い水(排水)」に分離され、純度の高い水だけが次の工程へと進みます。

※. 実際に「0.0001μm」の穴が均一に空いているわけではありません(電子顕微鏡でも確認できません)。ろ過性能の高さを示す目安として、この数値が使用されています。       

貯水タンク

ろ過された水は、浄水器本体に連結されている「貯水タンク」に、いったん貯められます。

貯水タンクに水を貯める理由は、逆浸透膜浄水器のろ過スピードが遅く、直接蛇口から吐水させると勢いのある水を十分に使うことができないからです。そのため、あらかじめ一定量の水を貯水タンクに貯めておき、いつでも勢いのある水を十分に使えるようにしているというわけです。ただし、製品によってはろ過スピードが改善され、貯水タンクを介さなくても、十分な水量を吐水させることができるものもあるようです。

逆浸透膜エレメントの構造

逆浸透膜は、逆浸透膜浄水器の中心的な役割を担っている膜ですが、この膜が単体で水道水をろ過しているわけではありません。逆浸透膜は、逆浸透膜浄水器の内部において「逆浸透膜エレメント」という複合部品の一要素として機能しています。

ここで「逆浸透膜エレメント」という言葉が出てきましたが、この言葉を聞いて形をイメージできる人は、業者でもないかぎり、ほとんどいないことでしょう。しかし、この逆浸透膜エレメントは、多くの人が知っている「あるモノ」に形が酷似しています。それは、時代劇などに出てくる「巻き物」です。

巻き物は「巻軸(かんじく)」という木製の軸を中心にして、「本紙(ほんし)」という紙が何重にも巻き重ねられています。それに対して、逆浸透膜エレメントは「透過水集水パイプ」という管を中心にして、「逆浸透膜」と「スペーサー[※]」の多重シートが巻き重ねられています。

この逆浸透膜エレメントに対して、水道水は片側の側面から入り、エレメント内をスパイラル状に進行して、もう片側の側面へと向かいます。その過程で、ろ過された水は中心にある透過水集水パイプへと集まっていき、最終的には透過水集水パイプの先端から吐水され、貯蓄タンクなどへ送られます。しかし、逆浸透膜エレメントに入った水道水の全量が、浄水(RO水)として、透過水集水パイプの先端から出てくるわけではありません。水道水の半分ほどは、排水(不純物が濃縮された水)として、逆浸透膜エレメントの出口側の側面から排出されます。

※. シートとシートの間に空間を作って、水が流れやすくするためのもの

独自の「ろ過方式」

「一般的な浄水器」と「逆浸透膜浄水器」とでは、ろ過方式に大きな違いがあります。

一般的な浄水器・・・デッドエンド方式(全量ろ過方式)
逆浸透膜浄水器・・・クロスフロー方式

二つの方式を簡略的に説明すると、以下のようになります。

【デッドエンド方式(全量ろ過方式)】[※1] 
タテ向きに設置した管の中に活性炭などのろ材を敷き詰め、その上から水道水を注いで、不純物をこしとるのが「デッドエンド方式」です。注がれた水道水は、ほぼ全量が浄水に変えられるため、「全量ろ過方式」とも呼ばれます。

【クロスフロー方式】[※2] 
逆浸透膜などのろ材に対し、水道水を勢いよく平行に(滑らせるようにして)流します。すると、その水道水のうち何割かは、(水分子として)ろ材に対して垂直方向に通過し、浄水(RO水)になります。

一方、残りの水道水は、不純物を濃縮させながら、そのままろ材の上を勢いよく流れていき、最終的には排水として捨てられます。排水がでることで、水道水の利用効率は低くなり、水道コストの観点からはデメリットが生まれます。しかし、ろ材の上を排水が流れていくことで、膜に不純物が蓄積(目詰まり)しにくくなるというメリットも生まれます[※3]。

※1.「デッドエンド」とは「行き止まり」を意味しています。管の中のろ材が、行き止まりのように敷き詰められていることが、名称の由来になっています。
※2. クロスフロー方式という名称は、「ろ材の表面を流れていく水道水の方向性(平行)」と「ろ材を通過する水分子の方向性(垂直)」とが、交差(クロス)の形になっていることが由来になっています。
※3. 目詰まりの起きやすさは、水道水の水質やプレフィルターの性能などによってもかわります。一般的な浄水器よりも膜の寿命が長いという意味ではありません。

メリットとデメリット

逆浸透膜浄水器は高度な浄水性能というメリットを持つ一方で、いくつかのデメリットも存在します。

導入に際しては、以下のリストを参考にしつつ、メーカーに実際の性能や新たに追加された機能などについて、確認をとってみるとよいでしょう。

メリット
・圧倒的な浄水性能の高さ(水質汚染がひどい地域では、特に役立つ)
・家庭用の製品の中には、災害に対応したものもある(可搬型の逆浸透膜浄水器)
・ペットボトルのプラスチックごみを減らせる
・毎日の飲料水をペットボトルで購入している人の場合、長期的にはコスト削減につながる

デメリット
・初期投資額は、比較的高い
・ろ過スピードが、比較的遅い
・水道水中の有用なミネラルまで除去される(マグネシウムなど)
・ミネラルを後から添加する場合でも、自然なバランスを再現するのが難しい
・「のどごしが軽すぎる」と感じる人もいる
・排水が出るため、水道コストは高くなる
・本体や貯水タンクのサイズが、比較的大きい(シンク下スペースの圧迫)     

さいごに

逆浸透膜浄水器で生成される「RO水」は、不純物をほとんど含まないことから、安全性と利便性に優れた水として重宝されています。実際、災害時に発生した水不足や水質の問題が、RO水によって大きく改善されたという声もあります。

たしかに、純度の高いきれいな水は、不純物の多い水に比べて、安全性や使いやすさの面で優れていると言えるでしょう。しかし一方で、あまりにも純度が高いがゆえに、長期間の飲用による影響を懸念する専門家の意見もあるようです。逆浸透膜浄水器の導入を検討する際には、メリットだけでなく、こうした指摘にも目を向けながら、安心して使い続けられるかどうかを見極めていくことが大切です。


- 監修者のご紹介 -

参考文献

一般社団法人 浄水器協会

http://www.jwpa.or.jp

浄水器協会「RO浄水器」

https://www.jwpa.or.jp/ro/ro-shikumi.html

Aqua Street「RO(逆浸透膜)水の歴史と原理」

https://aqua-street.com/history/

RO純水工房「スペースシャトル/国際宇宙ステーションで活躍」

https://purewateratelier.com/hpgen/HPB/categories/17105.html

有限会社 三心「会社概要 - 次世代型・逆浸透膜浄水システム」

https://hart3.jimdofree.com/%E4%BC%9A%E7%A4%BE%E6%A6%82%E8%A6%81/

株式会社ワイズカンパニー「災害時家庭用逆浸透膜(RO膜)浄水器」

https://www.ozon-uv.com/ys03p-ro.htm

高知防災「消防直結型災害用 逆浸透膜浄水装置」

https://kochi-bosai.com/product/dtl.php?ID=114

株式会社Crystal-Gaia「Clean Water|逆浸透膜浄水器=除去率最大99%」

https://aquaqualia.com/逆浸透膜浄水器-clean-water/

株式会社Crystal-Gaia「逆浸透膜浄水器=除去率最大99%」

https://aquaqualia.com/corporate-profile/

ウォータースタンド株式会社「RO(逆浸透膜)フィルターの仕組み」

https://waterstand.jp/waterlife/water_filter_server/waterlife00103.html?__lt__cid=02fa1988-597a-4c41-9d23-830d9edec41f#01

アクアカルテック株式会社「逆浸透膜の孔の大きさが0.0001とか0.0003ミクロンとかありますが除去性能が違うのですか?」

https://aqua-cultech.com/page004-2/ans07.html

cytiva「ULTA™全量ろ過フィルター(normal flow filter)導入によるろ過製品ラインの拡充」

https://www.cytivalifesciences.co.jp/newsletter/downstream/41_13_ulta.html

書籍「なっとく!の水・浄水器選び」角田隆志&山中登志子 共著

書籍「体をつくる水、壊す水」藤田紘一郎 著