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炭酸水の種類や味の違いについて知ろう!

一昔前には単に「お酒を割るためのもの」という位置づけでしかなかった炭酸水ですが、今ではそのまま飲む清涼飲料の一つとして、スーパーやコンビニなどでも様々な種類が販売されています。

しかし、炭酸水のことをよく知らない人にとっては、どの炭酸水もすべて同じように見えてしまうかもしれません。実際、炭酸水自体の見た目はどれも同じで、違いがあるとすれば「容器の形状」や「ラベルの表示」くらいではないでしょうか。

今回は、どれも同じに見えてしまう炭酸水について、三つの分類を紹介しながら解説をしていきたいと思います。

天然炭酸水と人工炭酸水

天然炭酸水と人工炭酸水

まず一つ目の分類として、炭酸水は「天然のもの」と「人工のもの」とに分けられます(以下、天然炭酸水・人工炭酸水と呼ぶ)。国内で流通している天然炭酸水のほとんどは海外産(主にヨーロッパ)のもので、日本産の天然炭酸水の数はかなり限られています。よく100円ほどのペットボトル商品がスーパーなどに並んでいますが、これらは大抵の場合、人工炭酸水です。

それでは、それぞれの炭酸水の違いについて見てみましょう。

天然炭酸水

天然炭酸水とはその名の通り、天然の炭酸ガス(二酸化炭素)を元々含んでいる地下水(ミネラルウォーター)のことです。自然界で天然の炭酸ガスが発生する原因はいくつかありますが、主な原因としては次のようなものが挙げられます。

【火山ガス起源】
火山ガスには大量の炭酸ガスが含まれています。マグマから分離した炭酸ガスは大部分が地中にとどまっているものとみられます。その一部が地下水に溶け込んで炭酸泉をつくっています。

【地殻有機物起源】
地中にすむ微生物やバクテリアなどの生物が、化石燃料(石油・石炭など)をつくる活動によって炭酸ガスを生産します。また、堆積した岩石に含まれている動植物の遺骸が、炭酸ガスの成因となっているとも考えられています。

【変成作用起源】
岩石が地中深くに埋没したり、マグマの影響などによって高温になったりすると、岩石中の鉱物がそれまでとは異なるものに変化(変成)します。この過程で、新たに変成される鉱物に取り込まれず、余剰となったCO2の一部が、地下水に溶け込みながら地表へ運ばれていくとも考えられています。

このようにして生成された天然炭酸水は、温泉や飲料などに利用され、古来より世界中の人々に親しまれています。現在、日本国内での正確な炭酸泉の数は把握されていませんが、特に密集している地域は以下の通りです。

群馬県南西部から長野県八ヶ岳周辺にかけて 磯部・妙義・稲子湯など
岐阜、長野県境の御嶽山周辺 湯屋・塩沢・王滝など
近畿地方中央部 有馬・吉川・花山・二見など
島根県西部 小屋原・三瓶など
大分県久住・直入 長湯・阿蘇野・赤川など
霧島周辺 高原町、新川など

炭酸温泉のいくつかは「飲泉可能」なものもありますが、日本産の天然炭酸水を飲料商品として販売しているのは、現在のところ、福島県の金山と大分県の九重連山の二地域と言われています。

人工炭酸水

一方、人工炭酸水とは、ふつうの水に対して後から人工的に炭酸ガスを含ませたものです。そのため、人工炭酸水の商品ラベルには「原材料名:水/炭酸」といったように、「水」と「炭酸」とを分けて表示しています。そして、この「水」には天然水を使用したものや純水を使用したものなど、いくつかの種類があります。

炭酸ガスは、空気中の二酸化炭素としては微量にしか含まれていないため、一般的には空気分離で製造することはありません。石油化学プラントや製鉄所などから発生する「オフガス(使われずに焼却・放散されるガス)」を回収し、それを精製してからそれぞれの製品製造工場で再利用されています。

製品製造工場では、精製された炭酸ガスを加圧状態で水に溶け込ませる「カーボネーション(炭酸ガス圧入溶解)」が行われます。本来、水に溶け込みにくい性質をもっている二酸化炭素ですが、高い圧力をかけることによって二酸化炭素を水に溶け込みやすくしています。また、二酸化炭素の水に溶ける量は「圧力に比例し、温度には逆比例する」ことから、カーボネーション工程では、水を10℃以下に冷却して圧入するのが一般的です。

このようにして製造される人工炭酸水ですが、巷では自分でオリジナルの炭酸水を作って飲むこともチョットしたブームになっているようです。ただ、冷やした水に重曹(炭酸水素ナトリウム)を良く溶かし、そこにクエン酸を入れることによって作られるオリジナルの炭酸水は、工業的に製造される商品としての人工炭酸水とは、いくつかの点で異なります。

①成分
炭酸水商品の原料は主に「水+炭酸ガス」なのに対し、オリジナルの炭酸水は「水+重曹+クエン酸」。後者は原料の化学反応(中和反応)によって「クエン酸三ナトリウム」という成分が水に含まれることになります。

②味
オリジナルの炭酸水には「クエン酸三ナトリウム」が含まれているため、ほのかに塩味がします。それに対して炭酸水商品には塩味がなく、使用している原料水の味に依存します。

③効果
炭酸水は食事と一緒に飲むことで満腹感を得やすくなります。そのため、食べ過ぎ防止にはどちらの炭酸水も一定の効果が期待できます。また、炭酸水商品には「特定保健用食品」として、食後の血中中性脂肪の上昇を穏やかにする効果が認められたものもある一方、オリジナルの炭酸水には、クエン酸の働きにより疲労回復や血液サラサラなどの効果が期待できます。

④コスト
仮に容量500㎖で比較してみた場合、炭酸水商品が100円くらいで購入できるのに対し、オリジナルの炭酸水は10~20円ほどで作れてしまいます(重曹小さじ1杯+クエン酸小さじ1杯)。もちろん、比較する商品や原料(国産・海外産など)によって若干の価格差はありますが、いずれにしても価格に大きな違いがあることに変わりはないでしょう。

天然炭酸水は、水と炭酸とがしっかりと馴染んでいて、泡が細かく口あたりがよいと言われています。一方、人工炭酸水は、大量生産ができる点や価格が安い点、炭酸濃度が一定している点など、利用用途によっては天然炭酸水よりも支持される場合があるようです。

炭酸水の硬度の違い

二つ目の分類は「硬水・軟水」の分類、つまり硬度による分類です。天然水などに「硬水・軟水」の分類があるように、炭酸水にもその分類があります。

硬度とは、水1リットル中に溶けているカルシウムとマグネシウムの量を表した数値のことで、簡単にいうと、この2つのミネラルの含有量が多い水を「硬水」と呼び、少ない水を「軟水」と呼びます。

ヨーロッパなどから輸入されている天然炭酸水の多くは「硬水」または「中硬水」に分類されます。そのため、渋く引き締まったような味がするのが特徴です。ミネラルが豊富で飲みごたえもあることから、好んで硬水を選ばれる人がいる一方で、軟水と比較するとやや飲みづらく感じる人もいるようです。

多くの日本人が軟水の方を好む傾向があるからか、日本でつくられている炭酸水は軟水のものが多いようです。ただ、炭酸水は炭酸によって飲み口が爽やかになっているため、上記のような味や飲み口の違いを天然水ほどには感じないという人もいます。

また、炭酸水の味の違いは硬度だけで決まるものではありません。他にもナトリウムやカリウムなど、炭酸水に含まれているミネラルの種類やその比率などによっても味は異なります。ぜひご自身にあったものを見つけて、楽しんでみて下さい。

炭酸の強さの違い

三つ目の分類は「強炭酸・微炭酸」の分類、つまり炭酸濃度による分類です。最近では、スーパーに並んでいる炭酸水に「強炭酸」や「ストロング」、「微炭酸」といった表示が多く見られるようになりました。これらの言葉は水に含まれている炭酸の多さ(炭酸濃度)を示している言葉です。

強炭酸の炭酸水は、刺激的な飲み口やのどごしを楽しむことができます。気分転換をはかりたい時やシャキッとしたいときなどには、目が覚めるような爽快感がある強炭酸が向いています。また、お酒の「割り材」としてもよく使用されていて、刺激的なのどごしに加え、強い発泡による見た目も楽しむことができます。

微炭酸の炭酸水は、比較的飲み口がまろやかで飲みやすい炭酸水です。普通の水では少し物足りないときや、料理と一緒に炭酸水を楽しみたい時には、上品で適度な刺激がある微炭酸の炭酸水が向いています。また、運動後やお風呂上りなど、ゴクゴクと飲みほしたい時にも刺激の少ない微炭酸は好まれます。

このように「強炭酸・微炭酸」といった表示は、色々なシチュエーションによって飲み分けをすることができるので、大変便利な分類表示と言えます。

ただ、炭酸水における「強炭酸」や「ストロング」、「微炭酸」といった言葉には、現在のところ明確な定義は存在していません。どこからどこまでが「強炭酸」で、それ以外が「微炭酸」といった明確な分類はできていないのが現状です。

炭酸濃度の指標としては、GV(ガスボリューム:1Lの液体に1Lの炭酸ガスが溶けている状態を1GV)というものがありますが、一般的な炭酸水商品にはこの指標による値が示されていませんので、どれくらいの強さの炭酸水なのかがよくわかりません。

強炭酸や微炭酸といった表示は、あくまでも1つのメーカーで作られる炭酸飲料群の中において、相対的に使用される言葉であるということを覚えておきましょう。

さいごに

炭酸系飲料には、過度に「加糖・着色・着香」したものも多く見受けられます。それらの飲みすぎは、成人病をはじめとする様々な病気の原因になることがあります。ジュースなどの炭酸系飲料は、炭酸による爽快感と糖分による満足感で、なかなか他のものに代替することは難しいかもしれません。しかし、一度プレーンな炭酸水を試してみて、その爽快感でも満足できるようなら、少しずつでもプレーンな炭酸水に代替していってみてはいかがでしょうか?炭酸水に限らず、水や生野菜といったプレーンなものは、徐々に味覚を正常な状態へ戻してくれると言われています。そうなってくると、プレーンな食べ物や飲み物の味の魅力にも気づくことができますし、何より健康的な毎日を過ごすことができるでしょう。


参考文献

日本ミネラルウォーター協会「Q&A集」

https://minekyo.net/publics/index/7/

立ち寄り温泉みしゅらん「温泉技術者やませみ 温泉の科学」

https://www.asahi-net.or.jp/~vd5h-cb/bbs/special/sience_of_hotspring/sience_of_hotspring_5-5-2.htm

えん食べ「まろやかでおいしい「天然微炭酸の水」情報提供:イオン」

https://entabe.jp/news/gourmet/9978/aeon-natural-sparkling-water

エア・ウォーター炭酸株式会社「炭酸ガス(CO)」

https://www.awi.co.jp/ja/business/industrial/gas/co2.html

岩谷産業株式会社 産業ガス総合サイト「炭酸(CO₂)」

https://industry.iwatani.co.jp/industrial-gas/lineup/245/

一般社団法人 日本産業・医療ガス協会「炭酸ガスのつくられ方」

https://www.jimga.or.jp/gas/produce_co2/

一般社団法人 全国清涼飲料連合会「カーボネーション」

http://www.j-sda.or.jp/manufacturing/manufacturing_method04.php

究建築研究室「炭酸水の作り方(クエン酸+重曹)」

https://q-labo.info/memo/000123.php

サントリー食品インターナショナル「最高ガスボリューム5.0GV 耐圧ボトル×ペプシ史上最強炭酸×強カフェイン 「ペプシストロング5.0GV」「ペプシストロング5.0GV〈ゼロ〉」

https://www.suntory.co.jp/softdrink/news/pr/article/SBF0418.html

株式会社セブン&アイHLDGS「セブンプレミアムの飲料で初のトクホ(特定保健用食品)が登場!『セブンプレミアム そのまま飲める炭酸水プラス』を発売」

https://www.7andi.com/library/dbps_data/_material_/_files/000/000/002/524/7Ptansansuiplus.pdf

九州化工株式会社「クエン酸とは」

http://www.kyushukako.co.jp/service/186/187.html

NANIWA SUPLI MEDIA「血管に良い食べ物【血液をサラサラに】」

https://naniwasupli.com/contents/blood-vessels-food/

書籍「ミネラルウォーターの処方箋」藤田紘一郎 監修

書籍「基礎知識からわかるミネラルウォーターBOOK」井上正子 監修