ノンアルコール飲料って本当にアルコール0%?定義・醸造法や味わいについて解説 | 水と健康の情報メディア|トリム・ミズラボ - 日本トリム

ノンアルコール飲料って本当にアルコール0%?定義・醸造法や味わいについて解説

アルコール飲料とソフトドリンクの中間あたりに位置する「ノンアルコール飲料」。

なんとなく味気ないイメージがある飲料ですが、近年では嗜好品の一つとして選ばれることもあるようです。

その背景には飲料メーカーの地道な努力があるようで、消費者の嗜好に合わせて少しずつ改良を重ね、今では一つのジャンルを確立したともいわれています。

このように飲料市場において徐々にその知名度を上げてきているノンアルコール飲料ですが、いまだ一部の人にとっては未知の飲み物であるようです。

今回は「ノンアルコール飲料とは何か」といった疑問に対し、定義や醸造方法、飲用に際しての注意点などを交えながら解説をしていきたいと思います。

ノンアルコール飲料の定義

ノンアルコール飲料とは、アルコール度数が「1%未満」の飲料を指します。

アルコール度数が「1%以上」になると、日本の酒税法では「酒類」に分類されますので、ノンアルコール飲料とは呼べません。

アルコール度数 0.00~0.99%・・・ノンアルコール飲料
1.00%以上・・・酒類

広義においては「ソフトドリンク」もノンアルコール飲料に含まれますが、ノンアルコール飲料はお酒のような飲用シーンや満足感を想定して造られることが多いため、一般的にはノンアルコール飲料とソフトドリンクは、それぞれ別のジャンルとして捉えられているようです。

ノンアルコール飲料とジュースとの違い

上記の通り、ノンアルコール飲料はお酒のような飲用シーンや満足感を想定して造られた飲料です。そのため、アルコールはほとんど含んでいませんが、それ以外の「香り・苦み・味わい」といった要素ができるだけ失われないように造られています。

こういった要素を大切にして造ることで、さまざまな料理とのペアリングがはかれます。実際、バーやレストランなどでも来店されたお客様に対して、料理とともに積極的にノンアルコール飲料を提供するところも増えてきています。

これに対してジュースは、主に甘味による満足感を得るための飲料で、料理とのペアリングにおいてもノンアルコール飲料ほどには適性を示しません。

ノンアルコール飲料を飲んで車を運転してもいい?

アルコール度数が「0.00%」のノンアルコール飲料であれば、飲んだ後に運転しても飲酒運転で捕まることはありません。

ただ、上記でも示したとおり、ノンアルコール飲料のアルコール度数は「0.00~0.99%(1%未満)」と幅があります。そのため、商品によってはノンアルコール飲料と謳っていても微量にアルコールを含んでいるものがいくつかあります。それらを飲んだ後に車を運転すると、飲酒運転で捕まる可能性があるだけではなく、他人に危害を与えることにもなりかねません。

車を運転する人は、ノンアルコール飲料かどうかで判断するのではなく、アルコール度数が「0.00%」かどうかで判断するようにしましょう。

ノンアルコール飲料なのにほろ酔い状態になる理由

アルコール度数「0.00%」のノンアルコール飲料を飲んでいるにもかかわらず、酔っぱらった気分になることがあります。これは、いわゆる「空酔い」と呼ばれる現象です。

この現象が起こる主な原因は、次の2つと考えられています。

① 酒類とフレーバーが似ているため、脳が誤認をして酔ってしまう
② 酒類だと強く期待して飲むことで酔ってしまう

②は「プラセボ(プラシーボ)効果」と呼ばれるもので、ある体験を強く思い込むことによって、その体験が実現されることをいいます(新薬の治験などでよく観察される効果です)。

ノンアルコール飲料を妊娠期や授乳期に飲んでもよい?

アルコール度数が「0.00%」であれば、アルコールによる影響はないようです[※1]。

もしも妊娠期にアルコールを飲むと、胎盤を通じてアルコールが胎児に届けられてしまいますので、分娩異常や早産、FASD[※2]になる危険性があります。

また、授乳期にアルコールを飲むと、母乳を通じてアルコールが赤ちゃんに届けられてしまいますので、短期的には赤ちゃんが傾眠状態(意識障害の一種)になったり、ホルモンバランスが崩れたりする可能性があります。

ただ、これらのリスクは酒類を飲んだ場合に危惧されているものであって、アルコール度数が1%未満のノンアルコール飲料を少量飲んだ場合に、必ず同様のリスクが現れるとは言い切れません。

一般的には断酒することが推奨されていますが、完全にお酒を断つことが大きなストレスになる方もいらっしゃると思います。時にノンアルコール飲料を楽しむことでストレスなく育児ができるなら、総じてその方がよい場合もあるかもしれません。各自できちんとリスクを理解した上で判断するようにしましょう。

※1.ノンアルコール飲料の中には、カラメル色素やアセスルファムKを使用しているものも多くあり、それらの添加物が胎児や赤ちゃんにどのような影響を及ぼすかは不明です。
※2. 胎児性アルコール・スペクトラム障害(知能障害・発育障害などの症状が現れる障害)。

ノンアルコール飲料を子供が飲んでもよい?

上述のとおり、日本の酒税法ではアルコール度数が「1%未満」の飲料は酒類ではないため、子供が飲んでも法律上は問題ありません。ただし、ノンアルコール飲料を子供に飲ませた場合、酒類への興味が強まって、実際に飲酒をしてしまう危険性が大いにあります。

また、ノンアルコール飲料は見た目が酒類とよく似ていますので、それを飲んでいるところを第三者が見た場合、変な誤解を生んでしまう可能性もないとはいえません。

さらにメーカー側も「飲むことはできますが、飲まさないで下さい」といったスタンスで注意喚起をしていることが多いため、基本的には飲まさない(飲まない)ようにした方が良いでしょう。

ノンアルコール飲料の醸造方法

ノンアルコール飲料にはたくさんの種類があり、飲料ごと・メーカーごとに醸造方法が異なります。

【ノンアルコール飲料の種類】
・ビールタイプ
・焼酎タイプ
・日本酒タイプ
・ワインタイプ など

ここではノンアルコールビールを例に挙げて、醸造方法の大まかな分類をご紹介します。

① 発酵後にアルコールを除去する方法

いわゆる「脱アルコール製法」と呼ばれる方法で、いったんアルコールを含んだ飲料を造ってから、後工程でアルコールを除去します。

【脱アルコール製法の種類】
・減圧(真空)蒸留法
・減圧(真空)蒸発法
・逆浸透膜法
・透析法 など

いったんアルコール発酵を行っているため、発酵由来の香りを楽しめますし、アルコール発酵の過程で糖分が減少するため、甘さを抑えることもできます。

② アルコールの原料を減らす方法

はじめからアルコールになる原料の「量」を少なくしてから醸造する方法です。原料の量を少なくすることで原麦汁の濃度が下がり、発酵してもアルコール度数が1%以上にならないようにします。

ただし、このやり方ではノンアルコールビールにコクがでにくく、少し水臭い感じになってしまうというデメリットがあります。

③ 発酵性糖の比率を下げる方法

麦汁中にある「発酵性糖」の比率を下げて醸造する方法です。②の方法と比べて発酵後の残エキス量が多くなるため、コクや風味が出やすくなります。

ただし、本物のビールと比べると、まだフレーバーに「薄っぺらさ」が残ります。

④ 発酵を途中でとめる方法

人為的に発酵をとめて、アルコール度数を1%未満にとどめる方法です。この方法で造ることによって、残エキス量を多くしつつ「薄っぺらさ」も比較的緩和させることができます。

ただし、的確なタイミングで発酵をとめなければ、狙ったアルコール度数にならないという難しさがあります。また、麦汁の濃度や組成をしっかりと研究しなければ、フレーバーが甘くなり過ぎたり、麦汁臭く(生臭く)なったりすることになります。

⑤ 酵母の種類を変えて造る方法

アルコールを生成しにくい酵母を使用して造る方法です。

ビール造りなどで通常用いられている「サッカロマイセス・セレビシエ(出芽酵母)」をピキア族酵母(亜硫酸塩やアルコールに耐性の低い酵母)へ変えることで、アルコール発生を微量に抑える(度数を低く抑える)ことができます。

また、これによって④のような麦汁臭さを抑制することもできます。

ノンアルコール飲料の味わいについて

例えば、ビールとノンアルコールビールを比較してみた場合、「コク・深み」においてはビールの方が若干強いように思われます。

逆に「キレ」や「爽やかさ」においては、ノンアルコールビールの方が勝っているように思われます。

両者の違いを優劣で判断することは難しく、「コク・深み」をくどさや重さと感じる人もいますし、「キレ・爽やかさ」を薄さや軽さと感じる人もいます。

また、どのような料理と一緒に飲むかによっても、味わいの印象は大きく異なります。

飲料は料理との組み合わせによって評価されることも多々ありますが、それはノンアルコールビールも例外ではありません。

種類によっては、ビールよりもノンアルコールビールの方がマッチしている料理もありますので、嗜好の幅を広げるためにも、ぜひ色々な組み合わせを試してみてはいかがでしょうか。

さいごに

一昔前のノンアルコール飲料は、お酒を飲むことができない人たち用に造られた「代替飲料」でした。味わいも決して良いとはいえず、どちらかといえば「仕方なく飲むもの」だったのではないでしょうか。

しかし、近年のノンアルコール飲料は、味わいに改良が重ねられ、いまや一つの飲料ジャンルを確立しています。世間ではノンアルコール飲料だけを取り扱うバーも増えてきました。そこでは「酔うことなくフレーバーだけを楽しむ」という、まったく新しい体験をすることができます。

皆さんも是非一度、ノンアルコール飲料を「嗜好品」の一つとして楽しんでみてはいかがでしょうか。

▼おすすめ動画


参考文献

ALT-ALC「アルコール界のプラシーボ効果-空酔い」

https://www.alt-alc.com/post/アルコール界のプラシーボ効果-空酔い

東京ガス「ウチコト:「ノンアルコール」はホントに0%の意味? 妊娠中に飲んでもいいの? 素朴な疑問を詳細解説」

https://tg-uchi.jp/topics/6687#A3

PRESIDENT Online「授乳中の母親の飲酒はダメ」は科学的にはウソである 医師が解説する「正しい子育て」

https://president.jp/articles/-/32452?page=1

きた産業株式会社「Brewer's Tips 連載第6回 『ノンアルコール醸造酒の製造方法』」

https://kitasangyo.com/pdf/e-academy/tips-for-bfd/BT_6.pdf

書籍「新買ってはいけない」渡辺雄二 著

書籍「ノンアルコールドリンクの発想と組み立て」