災害時やアウトドアで役立つ!「携帯浄水器」の種類と活用シーン | 水と健康の情報メディア|トリム・ミズラボ - 日本トリム


災害時やアウトドアで役立つ!「携帯浄水器」の種類と活用シーン

皆さんは、浄水器に「携帯用」があることをご存知ですか?

台所の蛇口に取りつける「家庭用浄水器」については多くの人が知っていますが、携帯用の浄水器(以下「携帯浄水器」)については、比較的知っている人は少ないようです。携帯浄水器はその知名度の低さとは裏腹に、利便性と必要性が高いアイテムです。

「どのようなシーンで役立つのか?」「どのような種類があるのか?」

今回は、携帯浄水器の使い方や選び方のヒントになる情報を紹介します。

携帯浄水器の活用シーン

携帯浄水器

携帯浄水器は、種類や性能によって、以下のようなシーンで活用することができます。

・災害(人間)
・災害(ペット)
・救援活動
・アウトドア
・旅行、出張
・職場の休憩時間

それぞれについて、見ていきましょう。

災害(人間)

大規模な地震によって水道が断水された場合、携帯浄水器があると近隣の水源から安全な飲み水をつくることができるため、非常に助かります。

また、仮に水道水が出ていたとしても、深刻な水質汚染が起きている場合もあります。地震発生後は電気が止まり、家庭用浄水器が使えなくなる可能性もあり、そのようなとき手動の携帯浄水器があると非常に役立つのです。

避難生活を強いられた人たちの話では、安全な水の確保は大きな問題で、震災後のかなり早い段階で水不足に陥ったという声もあります。また、近年の震災事例では、支援物資の到着が大幅に遅れるケースも見られます。そんな非常時に、携帯浄水器は大きな力を発揮するでしょう。

災害(ペット)

災害時はどうしても人間が優先になりがちですが、ペットの飲み水の確保も忘れてはなりません。携帯浄水器があれば、犬や猫だけでなく、水に敏感なウサギ、モルモット、鳥などの小動物にも安心して水を与えることができます。また、観賞魚を飼っているご家庭においては、停電で浄化システムが動かなくなった場合にも、携帯浄水器が応急アイテムとして役立ちます。

救援活動

災害時には、被災者だけでなくボランティア従事者も、状況によっては飲み水の確保が難しくなることがあります。また、海外(特に発展途上国など)での復旧支援やボランティア活動でも、現地の水に不安を感じる場面は多くあるでしょう。こういった場合に、従事者自身の飲み水を確保する手段として、携帯浄水器が役立ちます。

アウトドア

キャンプや山登り、トレイルランニングなどのアウトドアでは、水の確保が大きな課題です。

携帯浄水器があれば、川の水や湧き水をその場で浄水して飲めるため、荷物を減らしながらも安心してアウトドアを楽しむことができます[※]。また、カヤックや渓流釣りなど水辺のアウトドアの際にも、淡水を活用して飲み水を確保できるので、大変便利です。

その他、万が一の遭難時に備えて、飲み水を確保できる手段を持っておくことは、命を守る上で非常に重要です。

※. 水源の汚染度や携帯浄水器の性能によっては、飲めない場合もありますので、使用前に製品の仕様書をしっかりと確認しておきましょう。

旅行・出張

水質が心配な国へ旅行や出張に行く際には、携帯浄水器があると助かります[※]。現地の水道水を安全に飲むことができるだけでなく、ペットボトル水を購入する手間や費用を抑えることもできます。

一方、国内旅行においても、携帯浄水器は役立ちます。たとえば、旅行先がレジャー施設などの場合、自動販売機の価格が高く設定されていることがあるため、頻繁に水分補給をする場合には、携帯浄水器を使用した方が出費を抑えることができるでしょう。

※. 電力量が100Wh以下の一般的な携帯浄水器の場合、通常は飛行機への「持ち込み」は許可されています。しかし、航空会社によっては、バッテリーに対する厳格な規約を設けていることもあるため、念の為、事前に規約を確認しておくとよいでしょう。

職場の休憩時間

携帯浄水器があれば、水道水を利用して、職場でおいしい水を作ることができます。そのため、わざわざ職場に水を入れた水筒や市販のペットボトル水を持っていかなくてもよくなります。また、水筒やペットボトル水を鞄に入れて通勤した場合、鞄が重たくなるだけでなく、鞄の中にある書類やノートPCが、予期せぬアクシデントで濡れてしまうリスクもあります。携帯浄水器を職場に持っていけば(もしくは職場に置いておけば)、そのような心配はなくなりますし、節約にもなるでしょう。

携帯浄水器の種類

携帯浄水器にはたくさんの種類がありますが、代表的なタイプには以下のものが挙げられます。

・フロアポンプタイプ
・バルブポンプタイプ
・電動タイプ
・吊り下げタイプ
・ストロータイプ
・プレスタイプ
・水道水専用タイプ

メリットとデメリットも交えて、具体的にみていきましょう。

フロアポンプタイプ

このタイプは、自転車の「空気入れ」を小さくしたような形をしています。本体には、取水チューブと吐水チューブが接続されていて、取水チューブの先端にはプレフィルター[※]がついています。また、本体の上部には、片手で握れる小さなハンドルがついていて、空気入れのように上下に動かせるようになっています。

セッティングは、取水チューブの先端を水源に入れ、もう一方の吐水チューブの先端を空容器に入れたら、完了です。その状態で、ハンドルを上下に何度も動かすと、水が水源から吸い上げられ、本体のフィルターを通過し、浄水が吐水チューブから出てくる仕組みです。

【メリット】
・電源がなくても、浄水がつくれる
・短時間で多量の浄水をつくれる

【デメリット】
・ポンピングが面倒(多量の浄水をつくる場合、一定の労力が必要)
・ポンピング時に、台が必要
・使用後の水抜きと乾燥が面倒

※. 本体側のフィルターで本格的なろ過をする前に、砂や落ち葉、虫の死骸といった大きな異物をある程度取り除くことができます。

バルブポンプタイプ

ハンドブロワーのような握りやすい本体(ポンプ部)と、そこから伸びる取水チューブで構成された携帯浄水器です。本体の内部にはフィルターがあり、上部には浄水を注ぎ出すための吐出口が設置されています。また、取水チューブの先端には、プレフィルターが取り付けられています。

使い方は、片方の手で取水チューブを水源に入れつつ、もう片方の手で本体を何度も握り込みます。そうすることで、取水チューブから水が吸い上げられ、本体内部のフィルターを通って、水がろ過されます。ろ過された水は、上部の吐出口から直接飲むこともできますし、ボトルやカップに注ぐこともできます。日本ではそれほど有名ではありませんが、アメリカなどではトレイルランニングや長距離ハイキング、バックパックなどでよく使用されている携帯浄水器です。

【メリット】
・軽量
・コンパクト
・小さな水たまりなどの水源からでも取水が可能

【デメリット】
・ポンピングが面倒
・かがむような体勢で取水(ポンピング)しなければならない
・ろ過速度がやや遅い

電動タイプ

電動タイプは、バッテリー駆動のモーターによって水をろ過するシステムです。

本体サイズは、小型なものだと350mL缶よりもやや大きいくらいのサイズで、内部にモーター、充電式バッテリー、フィルターカートリッジが内蔵されています。本体には取水用と吐水用の2本のチューブが接続されており、取水チューブの先端にはプレフィルターが取り付けられています。操作はボタン一つで行え、電動モーターが自動的に水を吸い上げてフィルターを通過させます。

商品によっては、外づけバッテリーをつないで使用できるものもあり、電源が安定的に得られる状況ではかなり役立ちます。ファミリーキャンプや、水質の悪い国や地域での長期滞在などに重宝します。

【メリット】
・ポンピングなどの手動作業がないので楽
・短時間で多量の浄水をつくれる
・ソーラー充電器と接続すれば、長時間使用ができる

【デメリット】
・やや重たい
・落下による故障のリスクがある
・電源がないと動かない  

吊り下げタイプ

重力を利用して水をろ過するシンプルな仕組みを採用しており、「重力タイプ・グラビティータイプ・自動落下タイプ」とも呼ばれます。

大まかな構成は、未浄化の水を入れる上部バッグ、フィルターユニット、そして浄化後の水(浄水)を貯める下部バッグ(またはボトル)からなります。上部バッグと下部バッグの間はチューブで接続され、その途中にフィルターユニットが設置されています。

使用時は上部バッグに未浄化の水を入れ、木の枝やロープなどに吊るして高い位置に固定します。重力の力で水がフィルターを通過し、下部バッグに浄化された水が溜まっていく仕組みです。バッグには柔軟な素材が使用され、折りたためるようになっているため、収納時は意外とコンパクトになります。

【メリット】
・一度セットアップすれば、手作業なしに自動的に浄水が進む
・シンプルな作りのため、故障のリスクが低い
・バッグが折りたため、コンパクトに収納可

【デメリット】
・バッグを吊るす場所が必要
・セッティングや片づけに、やや時間と手間がかかる
・ろ過速度が遅い

ストロータイプ

長さ約20cm、直径2~3cmの筒状で、太めのストローのような形状をしています。

本体内部にはフィルターがあり、両端には取水口と飲み口があります。使用時は取水口を直接水源に入れて、反対側の飲み口から吸引します。吸引の力で水がフィルターを通過し、飲み口から浄化された水を飲むことができます。

ただし、ストロータイプの携帯浄水器は、フィルターの浄化性能が弱いモデルもあり、川などの水源から直接水を吸引することができない場合があります。その場合、浄化前の水をコップなどに入れ、そこに除菌剤を入れて除菌を済ませてから、吸引することになります。

比較的安価なため、災害時に多くの人に配布する「応急支援(救援)物資」には、向いているかもしれません。

【メリット】
・最も軽量でコンパクト
・比較的、安価
・直感的な操作が可能

【デメリット】
・浄化性能がやや低い
・水をストックできない(都度、飲むだけ)
・衛生的観点から、複数人での共有には不向き
・吸引力が弱い幼児や高齢者にとっては使いにくい

プレスタイプ

プレスタイプは、二重構造のボトル型浄水器です。その構造は、アウターボトル(外側のボトル)と、インナーボトル(内側のボトル)からなり、インナーボトルの底部には、フィルター装置がついています。

使用する際は、まずインナーボトルをアウターボトルから取り出し、アウターボトルの中に未浄化の水を入れます。そして、その上からインナーボトルを押し込んで圧力をかけ、その圧力で水をフィルターに通します。インナーボトルを押し込みきると、ボトル内部には浄水が溜まり、その状態のまま携帯用ボトルとしても使用できる設計です。

【メリット】
・浄化後の水をそのままボトル内で保存することでき、携帯することもできる
・浄水を短時間でつくることができる
・洗浄しやすい

【デメリット】
・プレス時に、一定の力が必要
・プレス時に、台が必要
・多量の浄水をつくるには、「セッティング→プレス→浄水の移し替え」を繰り返す必要がある

水道水専用タイプ

このタイプは、川や湖の水をろ過するものではなく、水道水をろ過して「おいしい水」を作るためのものです。

見た目は、普通の水筒とほとんど変わりなく、使用時も浄水器だとは分かりません。構造はシンプルで、水を溜めておくボトル、内ぶた、外ぶたの3つからなります。内ぶたは分解することができ、内部にフィルターカートリッジをセットできるようになっています。また、内ぶたの上部には飲み口(プル式ノズル)が付いていて、ノズルを指や歯で引き出すことで、吐水ができるようになっています。

ボトルは「軟質素材」でできたものと、「硬質素材」でできたものとがあり、前者はボトルを握り込み、その圧力で水を押し出して飲みます(ロードバイク用の水筒と同じタイプです)。後者はボトルを口元よりも上にあげ、傾けた状態にして、口で吸引して水を飲みます。

外ぶたは、コップになっているモデルもあれば、内ぶたとヒンジで連結して「開・閉・ロック」ができるようになっているモデルもあります。セッティングは、ボトルに水道水を入れ、カートリッジを取り付けた状態の内ぶたを閉めれば完了です(持ち運びする際には、外ぶたも閉めてください)。

普段の外出、レジャー、職場の休憩時間など、日常的なシーンで使用することで、節約をすることもできるでしょう。

 【メリット】
・街中や職場で使用しても違和感がない
・洗浄しやすい(食洗器に対応しているものもある)
・持ち運びに適している

【デメリット】
・川や湖、雨水などの自然水源には適していない
・災害時や非常時の水の浄化には適していない
・多量の浄水をつくるのには、向いていない

さいごに

日本では近い将来、南海トラフ地震が発生すると言われています。そのため、防災グッズ(災害準備品)の一つとして、携帯浄水器を購入する人が増えているようです。

携帯浄水器を購入し、準備しておくことは良いことですが、購入後、一度も使わずにしまっておくことは良いこととは言えません。できれば震災が起きる前に、数回は使ってみてください。そうすることで、その製品の使い方が分かり、災害が起きてもムダに焦ることがありません。また、平時に使っておくことで、製品の弱点が見つけられることもあるでしょう。震災直後に初めて使用し、決定的な弱点が発覚して「使い物にならなかった」という事態を防ぐためにも、少なくとも一度は使ってみることをおすすめします。


- 監修者のご紹介 -

参考文献

「ろ材で分けた浄水器のタイプ」一般社団法人浄水器協会

http://www.jwpa.or.jp/jo_rozai.htm

WiFiBOX「飛行機内に持ち込み可能なモバイルバッテリーとは?国内線・国際線条件まとめ」

https://wifibox.telecomsquare.co.jp/blogs/columns/220726

PR TIMES「メリショー・ジャパン 株式会社|工具不要!ポンプ型携帯浄水器【GreeShow GS-287】汚れた水も瞬時に清潔な水へ、アウトドア、災害時に水を確保◎」

https://greenfunding.jp/lab/projects/6626

MSR「トレイルショット マイクロフィルター」

https://e-mot.co.jp/product/31385/?srsltid=AfmBOop2JkZ3O0j5Whsa-hDT__AIyLEJB5o1tLgpSJaPCkXQUYx2G21D

Greeshow「携帯浄水器 5段階ろ過システム GS-2801」

https://jp.greeshow.com/products/portable-water-filter-battery-operated

プラティパス「グラビティワークスフィルターシステム」

https://e-mot.co.jp/product/gravity-works-filter-system/

かりはな製作所「製品情報:携帯用ストロー浄水器 mizu-Q」

https://karihana.com/product/straws_mizuq.html

GRAYL「ウルトラプレスピュリファイヤー」

https://www.grayl.jp/menu247/contents1435

BRITA®「ブリタ ボトル型浄水器 アクティブ」

https://www.brita.co.jp/製品一覧/ボトル型浄水器/アクティブ

BRITA®「ブリタ ボトル型浄水器」

https://www.brita.co.jp/製品一覧/ボトル型浄水器/standard