安全で美味しい水を手軽に使える浄水器ですが、たくさんの種類があるため「どの浄水器を選べばよいか分からない」という人も多いのではないでしょうか?理想とする品質の水を使うためには、浄水器がどのような物質を除去してくれるのか(除去物質)を知ったうえで購入することが大切です。
この記事では、浄水器の品質表示や除去対象物質の見方、浄水能力が高い製品を導入するポイントや使用時の注意点を詳しく説明します。
浄水器の品質表示について知っておこう
市場には多くの浄水器が出回っているので、それぞれどのような特徴を持った製品かを知らなければ、思ったような品質の水を使えません。
浄水器ごとの特徴を見分ける方法のひとつとして「品質表示」があります。製品ごとに表示されている品質表示をうまく比較できれば、選ぶべき浄水器を見つけやすくなるでしょう。ここでは、浄水器の品質表示を詳しく説明します。
家庭用品品質表示法で義務づけられている
浄水器の品質表示は、2002年4月から経済産業省の「家庭用品品質表示法」によって表示が義務づけられたものです。浄水器が日本で初めて販売されたのが1950年代といわれていますが、この法律が施行されたことによって浄水器を選ぶ基準が初めて明確になりました。
品質表示の項目には、次の7つがあります。
- 材料の種類
- ろ材の種類
- ろ過流量
- 使用可能な最小動水圧
- 浄水能力
- ろ材の交換時期の目安
- 使用上の注意
品質表示にどのような項目が含まれているかを知っておけば、浄水器ごとの特徴を適切に比較できるようになります。
品質表示をする浄水器の要件
浄水器には品質表示が義務づけられていると述べましたが、すべての製品が対象となっているわけではありません。品質表示が義務付けられているのは、以下3つの要件をすべて満たす浄水器です。
- 水道水を用いるもの
- 飲用水を得るために使用されるもの
- 水道水に含まれる残留塩素などの物質を除去または減少させる機能があるもの
そのため、次のような製品は、家庭用品品質表示法の対象外になります。
- 浄水機能付きジャーポット
- 浄水機能付きコーヒーメーカー
- 浄水機能付き軟水器
- 浄水機能付きアルカリイオン整水器
- 浴室の浄水シャワー
- トイレ用水
- 洗濯用水
- 観賞用水槽に使う水
浄水器を導入する際は、家庭用品品質表示法の対象となっているかを知ったうえで、性能をチェックできるようにしておきましょう。
浄水器の除去対象物質(項目)とは?
浄水器を選ぶ際は、除去対象物質(項目)を比較することも大切です。除去対象物質とは「水道水に含まれるどの種類の物質を除去できるのか」を示したもので、日本産業規格「家庭用浄水器試験方法(JIS S 3201)」の中で以下の17物質が規定されています。
①遊離残留塩素(カルキ) ②濁り ③クロロホルム ④ブロモジクロロメタン ⑤ジブロモクロロメタン ⑥ブロモホルム ⑦シス-1,2-ジクロロエチレン及びトランス-1,2-ジクロロエチレン ⑧テトラクロロエチレン ⑨トリクロロエチレン ⑩ベンゼン ⑪総トリハロメタン ※③~⑥の物質を総称して総トリハロメタンと言います。 ⑫CAT(農薬) ⑬2-MIB (カビ臭) ⑭溶解性鉛 ⑮陰イオン界面活性剤 ⑯フェノール類 ⑰ジェオスミン(カビ臭)
浄水器は、製品ごとに除去対象物質が異なります。適切な浄水器を選ぶためには、どの物質を除去してほしいのかを明確にしておくことが大切です。
除去対象物質の見方
上記の除去対象物質は、「家庭用品品質表示法」において、JIS規格に基づく方法で試験をおこない、出た結果を「浄水能力」として表示するよう定められています。具体的には、「除去対象物質が除去率80%になるまでの総ろ過水量」を指定された形式で表示します。製品ごとの表示例は、次のようになります。
製品A
浄水能力 | 遊離残留塩素(総ろ過水量 1,200L除去率 80% JIS S 3201試験結果) |
製品B
浄水能力 | 遊離残留塩素(カルキ) | 10000L |
濁り | 10000L | |
総トリハロメタン | 10000L | |
クロロホルム | 10000L | |
ブロモジクロロメタン | 10000L | |
ジブロモクロロメタン | 10000L | |
ブロモホルム | 10000L | |
テトラクロロエチレン | 10000L | |
トリクロロエチレン | 10000L | |
1.1.1-トリクロロエタン | 10000L | |
CAT (農薬) | 10000L | |
2-MIB (カビ臭) | 10000L | |
溶解性鉛 | 10000L | |
※JIS S 3201 試験結果 |
このように、浄水器によって除去対象物質の数や、除去率が80%になるまでの総ろ過水量は異なります。もちろん、ただ除去対象物質が多ければ良いわけではなく、除去してほしい物質をきちんと除去できるかが大切です。
浄水能力が高い製品を導入するポイントとは?
ここまでは、浄水器における品質表示や除去対象物質について説明しました。
納得いく浄水器を選ぶためには、上記2つのポイントを意識しておくことも重要です。
ろ材ごとの特徴を知っておく
浄水器のろ過水量だけでなく、どのようなろ材が使われているかを知っておくことも大切です。浄水器に使われているろ材の種類は、次の4つが代表的です。
- 活性炭
- 中空糸膜
- セラミック
- ROフィルター(逆浸透膜)
以下では、ろ材ごとの特徴について詳しく説明します。
活性炭
活性炭は、多くの浄水器に使われているろ材で、樹木や竹、ヤシ殻や石炭などを高温で焼いて作られるのが特徴です。孔の大きさは0.1ミクロンと小さく、水道水が孔を通過することで、カルキ臭やカビ臭、残留塩素、トリハロメタンなどの有害物質を除去できます。
活性炭のみを使用した浄水器も多く販売されていますが、ほかのろ過方式を組み合わることでさらに浄水能力を高めた製品もあります。
中空糸膜
中空糸膜は、中空糸と呼ばれる0.1ミクロン程度の穴が空いた糸を束ねてつくられた膜状のろ材です。ストロー状の糸は非常に細くなっているため、カビや鉄サビ、濁り成分だけでなく細菌のような小さなものもろ過できます。
ただし、中空糸膜は小さな物質をブロックできる反面、穴が詰まりやすいという傾向があります。高い浄水能力が期待できますが、製品によってはフィルターの交換頻度が短いものがあることも知っておきましょう。
セラミック
セラミックは、文字通り陶器でつくられたろ材のことです。陶器の壁には微細な穴が空いているため、中空糸膜と同程度の浄水能力が期待できます。また、熱や薬品への耐性に優れているため、ほかのろ材よりも幅広い用途で使えます。
ただし、セラミックは表面積が広がらないため、目詰まりを起こしやすいという傾向があります。利用する量や頻度によっては頻繁にフィルターを交換しなければなりません。
ROフィルター(逆浸透膜)
ROフィルターは、逆浸透膜とも呼ばれるろ材で、0.0001ミクロンの浸透膜に圧力をかけて水分子を通過させるのが特徴です。ほかのろ材とは違い、浄水と廃棄水を分けられるため、より純粋な水を使えます。
しかし、ROフィルターは分子レベルで有害物質を除去するため、同時にミネラル成分も取り除いてしまいます。ミネラルは水の旨味成分ともいわれているので、人によっては味に違和感を感じるかもしれません。
ろ材の性能と交換時期のバランスを考えて選ぶ
浄水器を選ぶ際は、浄水能力と交換時期のバランスを考えて、自分に合った製品を選ぶことが大切です。
先述したように、ろ材によっては目詰まりを起こしやすいものもあります。ろ材の交換時期を過ぎてしまうと浄水能力を保てない可能性があるので、頻繁に交換したくない人は使える期間が長いものを選ぶと良いでしょう。
浄水器の使い方の注意点
ここまでは、浄水能力の高い製品を導入するポイントについて説明しました。
浄水能力の高い製品を選ぶことは大切ですが、正しく浄水器を使い続けるためには、上記2つの注意点を理解しておくことも大切です。
熱湯を使わない
浄水器には、35度以上のお湯を通さないようにしましょう。ろ材に付いたトリハロメタンなどの有害物質が、お湯によって流れ出てしまうからです。
また、中空糸膜にダメージを与えてしまうことも、浄水器にお湯を通さないほうがよい理由です。中空糸膜の素材である「ポリエチレン」は、耐熱性が約40度となっています。40度以上のお湯を通すと、中空糸の穴が潰れたり中空糸を保持する部分が損傷する可能性があるので、長く使い続けるためにも水道水の温度設定には注意が必要です。
交換時期だけでなくろ過量も確認する
理想的な品質の水を使い続けるためには、交換時期のほかに「ろ過量」も確認しなければなりません。たとえ交換時期を過ぎていなかったとしても、ろ材がろ過できる有害物質の量が限界を超えると、浄水能力が低下してしまうからです。
浄水器によって違いはありますが、製品ごとにろ過量は決まっています。製品のパッケージや説明書に記載されているので、交換時期と一緒にろ過量も確認しておきましょう。
まとめ
ここでは、浄水器の品質表示や除去対象物質の見方を説明するとともに、浄水能力が高い製品を選ぶポイントや使用時の注意点を説明しました。
浄水器を使用する目的は人それぞれなので、どのような物質を取り除きたいのか、交換時期はどれくらいがいいのかなどを考えたうえで、適切な商品を選びましょう。
<参考文献>
「浄水器の品質表示について」一般社団法人浄水器協会
「浄水器」消費者庁
「よくあるご質問」株式会社ダスキン
「浄水器のカートリッジは交換時期を守ろう」パナソニック コンシューマーマーケティング株式会社