「ミネラルウォーターってどんな水?」そんなふうに聞かれたら、皆さんはどんなふうに答えるでしょうか。
ペットボトルに入った水?ミネラルが含まれた水?天然水と呼ばれる水?安全でおいしい水?
近年ではミネラルウォーターを購入するのが当たり前とも言えるようになってきましたが、実際にはどんな水かよくわからないまま利用している人も多いのではないでしょうか。
そこでここでは気になる5つの疑問から、「ミネラルウォーターってどんな水か?」見ていきたいと思います。
ミネラルウォーターとは?
そもそもミネラルウォーターとはどのような水なのでしょうか?ここでは、ミネラルウォーターの基本的な知識から見ていきます。
原水・製造方法
ミネラルウォーター類は食品衛生法の中で「水のみを原料とする清涼飲料水」として定義されています。
原水・製造方法は具体的に次のようなものになります。
原水
- ミネラルウォーターは、地下水を原水としています。山々に降り注いだ雨や雪は、河川を形成して海へ流れ込むほか、一部は地中深くへ染み込みます
- そして、長い年月をかけて地層のフィルターでろ過され、さらに土壌中のミネラルを溶かし込みながら地下を滞留・移動していきます。これらの地下水をくみ上げたり、湧出したところを採水したりしたものが、ミネラルウォーターです。
製造方法
- 日本で製造されるミネラルウォーターは、くみ上げた地下水に加熱殺菌、あるいはそれと同等の殺菌処理を施してから容器詰めにしています
- ヨーロッパでは、殺菌処理をしていないものがほとんどです
- 現在日本では、国産品と輸入品を合わせて1000商品ほどが販売されていると言われています。
品質表示ガイドライン
もう一つ、農林水産省による「ミネラルウォーター類の品質表示ガイドライン」。では、その分類を以下のように定めています。
ナチュラルウォーター
特定の水源から採水した地下水を原水とし、濾過・沈殿・加熱殺菌以外の物理的・化学的処理を行わないもの
ナチュラルミネラルウォーター
ナチュラルウォーターのうち、鉱化された地下水(地表から浸透し、地下を移動中又は地下に滞留中に地層中の無機塩類が溶解した地下水(天然の二酸化炭素が溶解し、発泡性を有する地下水を含む)をいう。)を原水としたもの
ミネラルウォーター
ナチュラルミネラルウォーターを原水とし、品質を安定させる等の目的のためにミネラルの調整、ばっ気、複数の水源から採水したナチュラルミネラルウォーターの混合等が行われているもの
ボトルドウォーター・飲用水
上記以外のもの
<参考>
「Q&A集」一般社団法人日本ミネラルウォーター協会 https://minekyo.net/publics/index/7/
ボトル入りの水はすべてミネラルウォーター?
「ミネラルウォーターって、ペットボトルなどの容器に入った水でしょ?」
こんな風に思っている方も多いのではないでしょうか?
実際に日本では、ペットボトルなどの容器に入った水を総称してそう呼ぶことがあります。ただし品質表示ガイドラインであったように、「ボトルドウォーター」と表示されているものに関しては 地下水や湧水を原水とはしていないため、厳密には「ミネラルウォーター」とは呼びません。
具体的に、ミネラルウォーター以外のボトル入りの水には以下のようなものがあります。
水道水
最近では、水道水の水質の良さをアピールするために自治体が水道水をボトルに入れて販売しているケースもあります。
海洋深層水
海洋深層水とは、水深200メートル以深の海水に脱塩処理やミネラルの調整などをほどこし飲用可能にしたもの。表層水と比べて汚染が少ない、ミネラルに富むなどといった特性を持つと言われています。
これ以外にも、最近ではボトルなどの容器に入れられたさまざまな水が登場しています。ボトル入りの水ならどれも同じということではなく、原水や処理方法についてよく確認してから利用することも必要です。
<参考>
「おいしい水道水ボトルドウォーター」
公益社団法人日本水道協会 http://www.jwwa.or.jp/anzen/bottle.html
ミネラルウォーターにはミネラルが多い?
「ミネラルウォーターっていうくらいだから、ミネラルが多く含まれている水でしょ?」こう思う方も多いかもしれませんね。
確かに長い年月をかけて地層中を移動または滞留した地下水には、土壌中のミネラルが溶解していることが考えられます。
ただし「ミネラルウォーター」と呼ばれる水に関して、その含有量などの定義が設けられているわけではありません。ですから実際にどのようなミネラル成分がどのくらい含まれているのかということは製品によっても違ってくるのです。
中には水道水とその含有量が変わらないものもあります。ですから利用する際には製品表示を確認するなどして、含まれているミネラルの種類や量について調べてみると良いでしょう。
もう一つ気を付けなければならないのは、ミネラルウォーターで体に必要なミネラルを摂取することは難しいということです。必要なミネラルを摂取するためには大量の水を飲まなければならず、それだけ多く飲んでも結局尿として排出されてしまうことになります。
ミネラルは水から摂るよりも、本来は食事からきちんと摂取するのが理想的な形だと言われています。
ミネラルウォーター=天然水?
「ミネラルウォーターは、“天然水”のことでしょ?」これも多くの人が疑問に思うポイントの一つ。
先ほどミネラルウォーターから十分なミネラルを摂取するのは難しいと言いましたが、最近ではそういった目的よりも、“大自然の恵み”や“天然の味わい”などといったイメージからミネラルウォーターを利用している人も増えていますよね。
確かに、天然の地下水や湧水には “天然”や“自然”といった印象があり、また実際に名前にそのような言葉を用いている商品もあります。ただし品質表示ガイドラインでは、ナチュラルウォーターとナチュラルミネラルウォーターの2種類のみが「天然」や「自然」あるいはそれに類似した用語の表示が許されています。
水の混合などが行われたミネラルウォーターは「天然水」と表示することができません。つまりすべてのミネラルウォーターが天然水なわけではなく、原料や処理方法の条件に合ったミネラルウォーターだけが天然水と呼ばれるわけです。
もちろん、「天然」や「自然」という用語が付けられているから、また実際にそのようなイメージがあるから必ずしも良いということではありません。イメージだけで判断するのではなく、実際にどのような水が使われ、どのように処理が行われているのかをチェックしてから商品を選ぶことも必要です。
ミネラルウォーターは水道水よりも安全?
「ミネラルウォーターって水道水よりも安全なんでしょ?」こんな理由から、購入して利用している人も多いのではないでしょうか?ただしこの問いに関しても、一概に「はい」とは言うことはできません。
水質基準
日本の水道水は、水道法によって満たすべき水質基準51項目が厳しく定めら処理されています。ですからそのまま飲んでも健康上問題がなく、また味わいも非常に良いものとなっています。
一方、食品衛生法で定められているミネラルウォーターの規格基準は水道水に比べて項目数が少なくなっています。もちろん、だからと言ってどちらが安全ということではありません。
それぞれどのような項目や基準値が設けられているのか確認することが大切です。
塩素消毒の有無
もう一つは、塩素の問題です。
水道水には雑菌の繁殖などを防ぐために塩素消毒が行われており、蛇口の時点でも残留塩素を0.1mg/L以上保持するよう定められています。ただし原水の水質などによってこの量が多くなると、独特のカルキ臭が生じてしまうこともあります。
一方のミネラルウォーターには、加熱殺菌などは行われているものの塩素は使われていません。ですから塩素特有のカルキ臭は防ぐことができますが、雑菌の繁殖といった心配が出てきます。特に開封後は適切に扱うことが必要です。
一昔前は水道水の水質が今ほど良くなく、しばしば問題に挙がっていたこともあり、「ミネラルウォーターの方が安全」と思われがちでしたが、現代の日本では必ずしもそうとは限りません。
それぞれどのような水かを知った上で、正しく選択していく必要があるのかもしれませんね。
<参考>
「ミネラルウォーター類」東京都水道局 https://www.waterworks.metro.tokyo.jp/suigen/topic/12.html
まとめ
それでは最後に、ミネラルウォーターとは一体どのような水かということをまとめておきたいと思います。
- ミネラルウォーターは、地下水に加熱などの処理を行い容器詰めにしたものを指す
- ボトル入りの水の中には、ミネラルウォーター以外に水道水や海洋深層水もある
- 必ずしもミネラルが多く含まれているとは限らない
- 特定の種類の製品のみが「天然水」と表示できる
- 水道水と比べて安全だということではなく、それぞれの水質や処理方法を確認することが大切
<参考文献>
一般社団法人日本ミネラルウォーター協会 https://minekyo.net/
東京都水道局 https://www.waterworks.metro.tokyo.jp/
公益社団法人日本水道協会 http://www.jwwa.or.jp/anzen/index.html