緑茶を学ぼう!種類や淹れ方、期待される健康効果について

私たち日本人にとって、緑茶は昔から親しまれている身近な飲み物です。毎日の食事のお供として、多くの人にとって欠かせない存在となっています。しかしその一方で、緑茶の種類や淹れ方、さらには期待される健康効果については、あまり知られていないようです。
緑茶の基礎知識を知ることで、味のバリエーションを楽しむことができ、健康管理にも役立てることができるでしょう。また、今まで味わったことのない、緑茶の本当の風味を知ることになるかもしれません。
今回は緑茶の種類や特徴、淹れ方について解説していきます。
目次
緑茶の種類
緑茶にはさまざまな種類があり、品種や収穫時期による分類も含めて考えると、その数は数百を超えると言われています。
ここでは、「栽培法」と「製造法」によって分類された代表的な緑茶の種類を紹介します。
煎茶
煎茶は日本で最も生産量が多く、広く一般的に飲まれている緑茶です。甘味や苦味、香りのバランスがよい割に、価格が安く、コスパのよいお茶として人気があります。また、料理との相性も良く、和洋問わずさまざまな料理と一緒に楽しめるのが特徴です。カテキンやカフェイン、テアニンなどの有用成分もバランスよく含まれ、健康維持にも役立つ緑茶です。
深蒸し煎茶
深蒸し煎茶は、一般的な煎茶の約2倍の時間をかけて蒸して作られます。そのため茶葉が細かく砕けやすくなります。抽出時には、細かく砕けた茶葉が抽出液に微粒子として混ざることで、水に溶けにくい成分(食物繊維やクロロフィル、βカロテン、ビタミンEなど)であっても、体内に取り入れやすくなるのがメリットです。水色(すいしょく)は濃く、鮮やかな緑色になり、味わいは苦味や渋みが抑えられ、まろやかでコクのある風味が特徴です。
番茶
番茶は、古葉や硬い新葉を原料にして作られる緑茶です。カテキンやカフェイン、テアニンなどの含有量が煎茶よりも少ないため、苦味や甘味が控えめですっきりとした味わいが楽しめます。脂っこい食事と一緒に飲むと口の中をさっぱりとするため、食後のお茶としても重宝されています。また、煎茶よりも価格が安く、普段飲みのお茶として親しまれています。
ほうじ茶
ほうじ茶は、煎茶や番茶などの茶葉を強火で炒(い)ってつくる加工茶です。高温で炒ることによって、香ばしさが引き出され、それと同時にカテキンやテアニンの量が減ります。カテキンの摂り過ぎによって胃を傷めてしまう危険性が少ないため、高齢者や小さな子供にも安心して飲んでもらえます。また、香ばしくすっきりした味ですので、脂っこい料理とよく合います。
玄米茶
玄米茶は、煎茶や番茶などの茶葉に蒸した玄米を炒ったものを加えた加工茶です。玄米のこうばしい香りと、煎茶や番茶のさっぱりとした味わいが組み合わさり、非常に飲みやすい緑茶です。玄米を加えている分、茶葉の量が少なくなるため、カフェインやカテキンの含有量も抑えられ、苦味や渋味が少なくなります。食後に飲めば、口の中をすっきりとリフレッシュさせることができます。
抹茶
抹茶は、蒸した茶葉(碾茶)を揉まずに乾燥させ、これを石臼や微粉砕機で細かく挽いたものです。茶葉をまるごと飲むことになるため、カテキン、テアニン、食物繊維、ビタミン類などの有用成分を摂取することができます。特にテアニンの含量が高く、旨味と甘味が豊かで、緑茶独特の渋みや苦味もバランス良く感じられます。濃厚な風味を持つため、和菓子や、しっかりした味わいのお菓子との相性も抜群です。
玉露
玉露は、栽培中に20日間ほど茶葉に覆いをかけ、日光を遮りながら育てられる高級緑茶です。日光を遮ることでカテキンの生成が抑えられ、代わりに旨味や甘味の成分であるアミノ酸(特にテアニン)が引き出されます。また、「覆い香(おおいか)」と呼ばれる海苔に似た香りも楽しめます。低温のお湯を淹れ、少量ずつ丁寧に味わうのが玉露の正しい楽しみ方です。ほかのお茶と比べて、テアニンの量が多いため、リラックス効果が期待できるお茶としても知られています。
かぶせ茶
かぶせ茶は、玉露と同じく収穫前に覆いをかける栽培方法で作られますが、その期間は約1週間と短めです。そのため、玉露ほどではないものの、カテキンの渋みが抑えられ、テアニン由来の旨味と甘味を感じられる味わいになります。煎茶のすっきりとした渋みは残しつつも、玉露のまろやかな旨味も感じられる、まさに「いいとこどり」の緑茶ということができるでしょう。
粉茶
粉茶は、煎茶や玉露の仕上げ加工の際にふるい分けられる粉状の茶葉です[※]。一般的には寿司屋などで出される「あがり」として知られています。強い苦味と渋みがある一方で、爽やかさも感じられ、まさに食後の一杯に最適の緑茶と言えるでしょう。抽出液(作った緑茶)の中には、茶こしの目を通り抜けた微細な茶葉が含まれるため、不水溶性の成分(食物繊維やクロロフィルなど)を効率よく摂取できるというメリットがあります。
※. パウダー状の「粉末茶」とは別物ですので、お湯に溶かして飲むわけではありません。淹れる際には目の細かい茶こしを使用します。
茎茶
茎茶は、煎茶や玉露の仕上げ加工時に、新芽の「茎の部分」だけを集めて作られる緑茶です。長さ3~5mm程度の棒状をしていることから「棒茶」と呼ばれることもあります。茎ならではの爽やかな青い香りと、すっきりとしたクリアな味わいが特徴です。特に玉露の茎から作られる「かりがね」は、甘味や旨味がより濃厚です。通常の茶葉とは異なる独特の風味を楽しみたい方にピッタリの緑茶です。
緑茶に期待される健康効果
古代中国では、お茶は解毒や消化促進などの薬として利用されていました。現在では薬としては扱われていませんが、緑茶成分と健康との関係についてはさまざまな研究が行われており、健康維持や病気予防への可能性が注目されています。
以下は、緑茶に期待されている健康効果の一例です[※1]。
・虫歯、歯周病の予防
・脂質異常や糖代謝への影響
・アレルギー症状の緩和
・感染症への抵抗力サポート
・肥満対策
・肝機能サポート
・動脈硬化の予防
・がん予防
・血圧抑制
・脳卒中の障害軽減
・大腸炎の予防
・認知機能の維持
また、以下のような健康面の悩みにも、緑茶が役立つと言われています[※2]。
・睡眠障害
・ストレス
・脳の老化
・運動疲労
・持久力の低下
・自律神経の乱れ
・口臭
・肌の老化
※1.2. 緑茶は病気を治す治療薬ではなく、健康的な生活をサポートする飲み物としてご紹介しています。記載している健康効果は、公的に認められた効果・効能としてお伝えするものではありません。
基本的な淹れ方
緑茶は無造作に淹れても、それなりに美味しく頂けます。しかし、ひと手間を加えて丁寧に淹れれば、より奥深い風味と風情が楽しめます。ここでは、緑茶をおいしく淹れるための基本をご紹介します。
茶器の使い分け
主に使用する茶器は、「急須・茶碗(湯呑み)・湯冷まし」の三つです。
これらのうち急須と茶碗は、緑茶の種類によって、「大サイズ(大振り)~小サイズ(小振り)」を使い分けます。もちろん、大サイズのものを一つ買い、それを兼用として使っても構いませんが、一般的には高級な緑茶に対しては、小サイズのものを使用して、少量ずつ丁寧に作って、じっくりと味わうことが多いようです。
玉露 | 急須( 90mLくらい)+茶碗( 40mL) |
煎茶 (高級) | 急須(250mLくらい)+茶碗(100mL) |
煎茶 (中級) | 急須(600mLくらい)+茶碗(150mL) |
番茶、ほうじ茶 | 急須(800mLくらい)+茶碗(200mL) |
湯冷まし
茶器の名前にも「湯冷まし」というものがありましたが、ここでは作業としての「湯冷まし」を説明します。
湯冷ましとは、お湯を茶碗や湯冷ましに移して、温度を調節する作業のことです。
お湯を1回移すと、だいたい「10℃」ほど、温度を下げることができます。
① ヤカンなどで沸騰させた熱湯をポットに入れる(例:100℃→90℃)
② ポットのお湯を湯冷ましに注ぐ(例:90℃→80℃)
③ 湯冷ましのお湯を茶碗に注ぐ(例:80℃→70℃)
④ 茶碗のお湯を湯冷ましに戻す(例:70℃→60℃)
⑤ 適温になったところで、湯冷ましの中のお湯を急須に注ぐ[※]
※. 緑茶の種類によっては、湯冷ましをしなかったり、湯冷ましの回数を減らしたりすることがあります。
まわし注ぎ
急須に入っている緑茶は、最初に注いだものと最後に注いだものとでは、味や水色、温度などに違いがあります。複数の来客に緑茶をふるまう際、それぞれの茶碗に注がれた緑茶にムラが出ないようにするには、「まわし注ぎ」をするとよいでしょう。
注ぐ順番は、以下のとおりです(茶碗の数が3つ(A・B・C)の場合)
【茶碗A → 茶碗B → 茶碗C → 茶碗C → 茶碗B → 茶碗A → 茶碗A → 茶碗B → 茶碗C ・・・】
最後の一滴まで、しっかりと注ぎ切ることがポイントです。
種類ごとの淹れ方
緑茶は種類によって、淹れ方が異なります。ここでは、代表的な緑茶の種類として知られている「煎茶、深蒸し煎茶、番茶、ほうじ茶、玄米茶」の、5つの緑茶の淹れ方について解説します。
煎茶の淹れ方
① 茶葉の量
・1人分「2~3g[※1]」として、人数分の茶葉を急須に入れる
・1人分だけを淹れる場合は、少し多めの「4~5g」にすると、二煎目[※2]もしっかりとした味が楽しめる
② お湯の量
・小サイズ~中サイズの茶碗(100~150mL)を、人数分用意する
・ポットのお湯を湯冷ましに注ぎ、そのお湯を用意した複数の茶碗に注ぐ(ここで、お湯が足らない場合は、同じ方法でお湯を注ぎ足す)[※3]。
・一つの茶碗に注ぐお湯の量の目安は「8分目」。ただし、朝顔形の茶碗の場合はやや多めにする
③ お湯の温度
・上級煎茶は使用するお湯の温度は70℃(例:「熱湯→ポット→湯冷まし→茶碗」で、おおよそ70℃)[※4]
・中級煎茶は90℃(例:「熱湯→ポット」で、おおよそ90℃)
④ 抽出時間
・目安は90秒
⑤ 注ぐ
・まわし注ぎをして、最後の一滴まで注ぎ切る
⑥ 二煎目
・抽出時間の目安は45秒
・成分を抽出しやすくするため、一煎目よりも高温のお湯で淹れる
※1. ティースプーンすりきり1杯が2gです。
※2. 一度お茶を飲み終えたあと、もう一度お湯を注いで二回目のお茶を楽しむこと。
※3. 一煎目の茶葉は「茶葉の重さ」の約4倍のお湯を吸うため、できあがる緑茶の量は、使用したお湯の量よりも少なくなることを念頭に置いておきましょう。
※4. 茶碗を手で包むようにして持ち、「何とか持てるくらいの熱さ」が約70℃です。
深蒸し煎茶の淹れ方
① 茶葉の量
・1人分「2g」として、人数分の茶葉を急須に入れる
② お湯の量
・1人分を「60mL」と想定し、小サイズの茶碗(100mLくらい)を、人数分用意する
・ポットのお湯を湯冷ましに注ぎ、そのお湯を用意した複数の茶碗に注ぐ(ここで、お湯が足らない場合は、同じ方法でお湯を注ぎ足す)
③ お湯の温度
・上級煎茶は70℃(例:「熱湯→ポット→湯冷まし→茶碗」で、おおよそ70℃)
・中級煎茶は90℃(例:「熱湯→ポット」で、おおよそ90℃)
④ 抽出時間
・目安は30秒(普通の煎茶よりも茶葉が細かく砕かれているので、やや短めでOK)
⑤ 注ぐ
・まわし注ぎをして、最後の一滴まで注ぎ切る
・ただし、抽出が進み過ぎないように、手早く注ぐこと
⑥ 二煎目
・抽出時間の目安は20秒
・成分を抽出しやすくするため、一煎目よりも高温のお湯で淹れる
番茶・ほうじ茶・玄米茶の淹れ方
① 茶葉の量
・1人分「2~3g」として、人数分の茶葉を急須に入れる
・1人分だけを淹れる場合は、少し多めの「4~5g」にすると、二煎目もしっかりとした味が楽しめる
② お湯の量
・中サイズ~大サイズの茶碗(150~200mL)を、人数分用意する
・お湯の量(熱湯)は、人数分を十分に淹れられる量を用意する
③ お湯の温度
・番茶やほうじ茶、玄米茶は、香りをたたせるために、熱湯で淹れる(湯冷ましはしない)
④ 抽出時間
・目安は30秒
⑤ 注ぐ
・まわし注ぎをして、最後の一滴まで注ぎ切る
⑥ 二煎目
・二煎目も、成分を十分に抽出させるために熱湯で淹れる
・熱湯を注いだ後、すぐに淹れること
「水出し緑茶」も美味しい
水出し緑茶とは、常温または冷水で抽出した緑茶のことを指します。暑い季節や入浴後、スポーツの後などには、お湯で淹れた緑茶よりも冷たい水出し緑茶の方が、より美味しく感じられることでしょう。
実は、水出しとお湯出しでは、抽出される成分の種類や量に大きな違いがあります。たとえば、覚醒作用のある「カフェイン」は水ではあまり抽出されず、逆にリラックス効果が期待できる「テアニン」は多く抽出される傾向があります。そのため、寝る前に少量の水出し緑茶を飲むことで、質の良い睡眠をサポートしてくれることも。
さらに、水出し緑茶には免疫力の向上や認知症予防など、健康面でのさまざまなメリットも期待されています。日常の水分補給としても、ぜひ取り入れてみてはいかがでしょうか。
以下の記事では、水出し緑茶について解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
【水出し緑茶の作り方・効能とは】
https://www.nihon-trim.co.jp/media/29965/
さいごに
緑茶の風味を左右するのは、「茶葉の質」や「淹れ方」だけではありません。忘れてはならないのは、「お水の質」も関わってくるという点です。
水道水に残留塩素が含まれているということは広く知られていますが、これがカルキ臭の原因となり、緑茶の風味に影響を及ぼす可能性があります。特に「水出し緑茶」を作る際には、水を沸騰させないため、カルキ臭などが残った状態のお水を使用することになります。
緑茶成分「カテキン」によって、ある程度のカルキ臭は抑えられるようですが、その前段階で残留塩素が除去できるのであれば、それに越したことはないでしょう。
こうしたカルキ臭を軽減するためには、水道水をきれいにろ過してくれる浄水器や整水器の利用が有効です。
中でも、整水器から生成される電解水素水は抽出力が高く、茶葉の香りや色、有用成分(カテキン類)をしっかりと引き出してくれるため、水出し緑茶づくりには最適です(ダシどりやアク抜きなど、料理の下準備にも重宝します)。
毎日使うお水だからこそ、よりこだわりたいものです。緑茶はもとより、料理全般の味わいや香りが際立つかもしれませんね。
- 監修者のご紹介 -
参考文献
農林水産省
http://www.maff.go.jp/j/seisan/tokusan/cha/ocha.html
東京都茶協同組合
http://www.tokyo-cha.or.jp/
「飲みかた」公益財団法人世界緑茶協会 O-CHANET
http://www.o-cha.net/teacha/nomikata/index.html
「ユーザー情報 緑茶」アルカリイオン整水器協議会
http://www.3aaa.gr.jp/userinfo.html
宇治田原製茶場「茶の間|カテキン豊富な深蒸し煎茶とは?その特長とおいしく味わう秘訣」
https://shop.chanoma.co.jp/special/detail/024
YouTube動画「名もなき茶師/新井製茶チャンネル|粉茶の淹れ方」
https://www.youtube.com/watch?v=53FDAfYSh20
YouTube動画「静岡県教育委員会チャンネル|お茶の淹れ方~お湯の温度をかえて淹れてみましょう~」
https://www.youtube.com/watch?v=SjJwUDbgKKI
書籍「緑茶はすごい!」中村順行&海野けい子 共著
