ストレスとは何か?原因や症状、対処法について解説 | 水と健康の情報メディア|トリム・ミズラボ - 日本トリム


ストレスとは何か?原因や症状、対処法について解説

みなさんが日常的に感じているストレスの種類は、いくつありますか?

おそらくほとんどの人は、少なくとも5種類以上のストレスを答えることができるでしょう。しかし、自分にとって何がストレスになっているかを認識していたとしても、それらに対して積極的に改善の取り組みを行っている人は、少ないのかもしれません。

たしかに、仕事や人生において避けられないストレスはたくさんあります。しかし、改善の取り組みを行うことによって、意外と簡単にストレスをなくせたり、程度を抑えることができる場合もあるのです。ストレスの基礎知識や対処法を学び、ストレスの少ない、すがすがしい人生を目指しましょう。

今回は「ストレスとは何か?」、「主な原因」、「症状」、「対処法」について解説します。

ストレスとは

今日、私たちは「ストレス」という言葉を日常的に使用していますが、これはもともと物理学用語として使われていたもので、外部から力が加わったときに物体が「歪む」という意味を持っています。たとえば、ゴムボールを手で強く握るとグニュっと変形しますが、この変形(歪み)を物理学では「ストレス」と呼んでいます。

この物理学用語を医学の分野に初めて持ち込み、科学的に裏付けをしたのは、カナダの生理学者ハンス・セリエという人物です。セリエ博士は、外部からの力(刺激)を「ストレッサー」、そしてストレッサーによって引き起こされる生体の反応を「ストレス(ストレス反応)」と定義づけました。
この定義によると、医学分野における「ストレス」という言葉は本来「生体に生じる変化」を指していることになるわけですが、日本ではそれを引き起こしている刺激(ストレッサー)も、ストレスと呼ぶことがあります。

ストレスの主な原因

何がストレスの原因(ストレッサー)になるのかは、人によって異なります。
多くの人に共通しているストレッサーといえば「人間関係」ですが、人によってはそれ以外のものがストレッサーになることもあります。
たとえば、他人が吸っている煙草の副流煙がストレッサーになる人もいれば、隣家のピアノの音がストレッサーになる人もいます。
また、ご自身の腸内環境が良くないと、それが思考や感情にも影響を及ぼし、ストレスフルな状態に陥ってしまうこともあるのです(脳腸相関)。

このように、ストレッサーにはさまざまなものがあり、それらから受ける影響の度合いも一様ではありません。
メンタルヘルスを保つ上では、ご自身がどのようなストレッサーに強く影響を受けているのかを把握しておくことが重要です。

【ストレッサーの分類】
①社会的、心理的ストレッサー
・人間関係
・欲求不満
・心配
・緊張
・怒り
・恐怖
・失望

②物理的、化学的ストレッサー
・騒音
・温度
・湿度
・ケガ
・有害物質
・薬物
・大気汚染

③生理的ストレッサー
・腸内環境の悪化
・ウイルス感染
・栄養不足
・過労
・睡眠不足

【ライフサイクルによって変化するストレッサー】
①小児期
・母親の愛情不足
・スキンシップ不足
・厳格なしつけ
・育児放棄

②青年期
・学校での人間関係
・学業成績の評価
・恋愛問題
・自立心の芽生え

③成年期
・職場での人間関係
・仕事(就職、昇進、競争、異動、転職、失業)
・結婚(両親や配偶者との関係、マイホーム購入)
・出産(育児、公園デビュー)

④老年期
・子どもの巣立ち
・配偶者の死亡
・生きがいの喪失
・経済的不安

ストレスによる症状の種類

ストレスが溜まってくると、心や体は普段のバランスを失い、様々な症状が現れてきます。

どのような症状が現れるのか、それぞれ見ていきましょう。

身体の症状

ストレスが溜まってくると、体がだるく疲れやすくなります。これは自律神経の乱れ、つまり「自律神経失調症」に陥っているサインと考えられます。

自律神経失調症に陥っている場合、以下のような症状が現れることがあります。

【自律神経失調症の症状例】
・倦怠感
・頭痛
・動悸
・めまい
・胸の痛み
・呼吸困難
・肩こり
・食欲不振
・胸焼け
・吐き気
・腹部膨満感
・便秘、下痢などの胃腸症状

このような状態を長期にわたって放置したり、我慢したりしていると、「胃潰瘍、十二指腸潰瘍、気管支ぜんそく、狭心症」といった重篤な心身症[※]になる恐れがあります。

また、強いストレスを長期にわたって受け続けていると、体には物理的な変化も見られます。それは脳の萎縮です。具体的には、脳の「前頭前野」と呼ばれる部分と、「海馬(かいば)」と呼ばれる部分の萎縮で、それぞれ以下のような状態に陥りやすくなります。

【海馬の萎縮】
海馬は短期記憶を長期記憶に変換する役割を持っています。ここが萎縮すると、新しい出来事を長期に覚えておく力が落ちます(前向性健忘)。たとえば、初めて会った人の名前が覚えられなくなったり、勉強や仕事などで新しい知識の習得がむずかしくなったりします。

【前頭前野の萎縮】
前頭前野は、理性で本能や感情を抑える役割を持っています。ここが萎縮すると、怒りっぽくなったり、目前の誘惑(飲酒、摂食、性行動など)に負けて依存傾向が強まったりします。また、ワーキングメモリ(短期的に覚えた情報を扱う力)も弱まるため、相手が言った内容をすぐに取りこぼしたり、ついさっき置いたカギやスマホの場所を忘れたりと、うっかりミスが増えます。

これらの部位の萎縮は、後述する「精神の症状」や「行動の症状」に大きな影響を及ぼします。

※. 心理的ストレスが原因で、具体的な体の病気として表れるもの。

精神の症状

ストレスが溜まってくると、情緒が不安定になり、些細なことでも傷心したり、イライラ、ムカムカするようになります。
また、集中力や活力が低下するため、仕事や勉強などのパフォーマンスも低下することが予想されます。
さらにひどい場合には、妄想や幻覚、意識の混濁といった精神症状が現れるようになり、それらによって強い不安感や焦燥感にかられ、まともな判断ができなくこともあります。

このような状態を長期間放置したり、我慢したりしていると「うつ病」や「パニック障害、社会不安障害、強迫性障害、ヒステリー」といった重篤な「神経症[※]」になってしまう恐れもあります。

※. 心理的ストレスが原因で、不安や恐怖など心の症状として表れるもの。

行動の症状

ストレスが溜まってくると、普段とは異なる行動をとることがあります。

・喫煙量の増加
・飲酒量の増加
・食品の過剰摂取
・散財 など

さらにひどい場合には、会社や学校などで「遅刻、欠勤」が見られるようになり、中には自宅に引きこもってしまう人もいます。また、攻撃的な言葉を吐いたり、実際に暴力をふるってしまう人もいます。

ストレスへの対処法

ストレスへの対処法は、その人の特性(持病や気質など)や、ストレッサーの種類、現時点での重症度などによって異なるため、一概には言えません。ただし、多くの人が悩まされている「社会的、心理的ストレッサー」への一般的な対処法としては、以下のものが有効と言われています。

セルフトークを行う

ミシガン州立大学のジェイソン・モーザー准教授らの論文では、不安やイラつきなどの感情が現れたとき、頭の中で自分に話しかけることで、それらの感情をコントロールしやすくなると述べられています。また、この論文では、自分への話しかけを行う際、「一人称」ではなく「三人称」を使うことが、重要な前提として述べられています。

例えば、ユウコというピアニストがいたとします。彼女が演奏会の直前に極度の不安状態に陥ったら、自分自身に対して「彼女はいま、強い不安を感じているようだ」と頭の中でつぶやいたり、「なぜ彼女は、強い不安感に襲われているのだろうか?」と問いかけます。このように、一人称の「私」ではなく、三人称の「彼女」または「自分の名前」でつぶやくことで、自分の心理を客観的に捉えることができるのです。

その結果、本能的な情動をつかさどる扁桃体などの動きが低下し、感情のコントロールがしやすくなると言われています。

リアプレイザルを行う

リアプレイザル(reappraisal)とは「認知的再評価」のことで、出来事を新たな視点から捉えなおす(意味づけを変える)心理的な手法を指します。

例えば、ある人から理不尽に怒られたとき、通常であれば「なんで自分が怒られなければならないんだ!」と怒りの感情にまかせた反応をしてしまいがちです。これはとても自然な反応ですが、怒ることでストレスを増幅・蓄積させてしまうことがあります。

一方、リアプレイザルを行うことで、以下のような「捉えなおし(意味づけの変更)」がなされ、ストレスの増幅や蓄積を抑え、ポジティブな感情を維持しやすくなります。

「この人は今日、なにか不幸な出来事に遭遇して、気持ちが不安定なのかもしれない」
「この人は、理不尽な八つ当たりに対して、私がどう反応するかを見ているのかもしれない」 など

専門医に診てもらう

メンタルの専門医は「心療内科」と「精神科」です。

・心療内科 ── 別名:心身医学科、心療医学科、心療科
・精神科 ── 別名:神経科、精神神経科、神経精神科

似たような名前に「神経内科」というものもありますが、こちらは心の病気ではなく脳や神経の器質的異常を扱っているところになりますので間違えないようにしましょう。

心療内科では心身症を中心に、うつ病や神経症などストレス性の健康障害の診断と治療を行っています。
一方、精神科では統合失調症なども含めた、心の病気全般を診るところになります(心療内科では統合失調症などの精神病は扱っていません)。

もしも、「このような診療科には行きづらい」と思ったり、「今すぐにでも話を聞いてもらいたい」と思うようであれば、「電話相談機関(「いのちの電話」など)」を利用してみるのもよいでしょう。
担当する心理カウンセラーが親身に相談に乗ってくれますし、必要であれば専門医も紹介してくれます。

腸内環境を良くする

脳と腸は双方向に影響を与え合っています。これは「脳腸相関」と呼ばれる関係性で、簡単にいうと、脳と腸のどちらか一方の好調や不調が、もう一方の好調や不調を促すというものです。この関係性を積極的に利用することで、腸から脳(メンタル)へのアプローチが可能になります。たとえば、食生活の改善などを行って腸内環境を良くすると、メンタルヘルスも改善され、ストレス耐性の強化に繋がります。

腸内環境を良くする方法は、食生活の改善のほか、睡眠の質の改善や、運動の実践などが有効です。また、腸内で便秘などの不調があらわれている場合には、十分な水分摂取を行うことが解消に役立ちます。

有酸素運動を行う

運動やスポーツは、「有酸素運動」と「無酸素運動」の2種類に大別できます。

有酸素運動とは、体内に酸素を多く取り入れながら長時間続ける全身運動のことで、「ジョギング、サイクリング、ウォーキング、水泳」などが挙げられます。一方、無酸素運動とは、酸素を取り入れずに筋肉の瞬発力で行う運動のことで、「短距離走、筋トレ、相撲、砲丸投げ」などが挙げられます。

心をリラックスさせたり、気分転換をはかるには、有酸素運動の方が効果的だと言われているため、自分が楽しんで行える有酸素運動を見つけ、それを継続的に行うとよいでしょう。また、リラックスや気分転換の効果をさらに高めたい場合には、その有酸素運動を大自然の中で行うことがおすすめです。大自然は「視覚・聴覚・嗅覚」を心地よく刺激して、ストレッサーに束縛されている私たちの心をやさしく解き放ってくれます。

さいごに

ストレスを受けたとき、多くの人は気持ちを軽くするために、愚痴や不平不満を口にしがちです。この行為は、一時的なガス抜きとして機能したり、場合によっては問題解決のキッカケになることもあります。しかし、オハイオ州立大学のブラッド・ブッシュマン教授の研究では、ネガティブな体験に意識を向け続けると、逆に怒りの感情がわきあがることが報告されています。つまり、「ストレス」というネガティブなものに対して、「愚痴をいう」というネガティブな行動をとると、さらなるストレスを招き、負の連鎖に陥りやすくなるというのです。

私たちに求められるのは、ネガティブをポジティブに変える「発想力の養成」と、その発想力を支える「脳の健康維持」だといえるでしょう。そして、その「脳の健康維持」をサポートする取り組みとして、近年では「腸活」が注目されています。

腸活は手軽に行えるストレス対策のひとつですが、さまざまな種類があるので、まずは自分に合った腸活を見つけるところから始めてみてはいかがでしょうか?


- 監修者のご紹介 -

参考文献

こころの耳「1 ストレスとは:ストレス軽減ノウハウ」

https://kokoro.mhlw.go.jp/nowhow/nh001/

新宿ストレスクリニック「ノイローゼ(神経症)とは?うつ病との違いと治療方法」

https://www.shinjuku-stress.com/column/psychosomatic/neurose/

社会保険出版社「メンタルヘルス講座|11月 心身症」

http://www.shaho-net.co.jp/mental-health-kouza/column/11.html

書籍「専門医がやさしく教える心のストレス病」河野友信 著

書籍「心のバランスとストレス」鈴木基司 著

書籍「ストレス解消ハンドブック」加藤貴之 著

東洋経済オンライン「脳に良い習慣と「脳に悪い心理状態」の決定的事実 ストレスや不安は海馬や前頭葉を萎縮させてしまう」

https://toyokeizai.net/articles/-/614884?display=b

脳科学辞典「ストレス」

https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=ストレス

神楽坂女子倶楽部「感情のコントロール法「三人称のセルフトーク」」

https://kagujyo.info/column/ego/2023/07/04/8827/

scientific reports「Jason S. Moser et al.|Third-person self-talk facilitates emotion regulation without engaging cognitive control- Converging evidence from ERP and fMRI」

https://www.nature.com/articles/s41598-017-04047-3

Google Scholar「Brad J. Bushman|Does venting anger feed or extinguish the flame? Catharsis, rumination, distraction, anger, and aggressive responding」」

https://scholar.google.com/citations?view_op=view_citation&hl=ja&user=LUrHrxcAAAAJ&cstart=300&pagesize=100&sortby=pubdate&citation_for_view=LUrHrxcAAAAJ:WA5NYHcadZ8C

日本アンガーマネジメント協会「怒って物に当たると逆効果」

https://www.angermanagement.co.jp/blog/202

雑誌「Newsweek(2017年9月12日号)」CEメディアハウス 出版