糖質の摂り過ぎによる症状と摂取目安量について | 水と健康の情報メディア|トリム・ミズラボ - 日本トリム

糖質の摂り過ぎによる症状と摂取目安量について

もし仮に「3日間だけ糖質を摂らないで生活をして下さい」と言われたら、皆さんはそれを達成する自信がありますか?

糖質を摂らないということは、パンやご飯、麺類はもちろんのこと、お菓子やフルーツ、お酒なども断つことになります。他にも様々な食べ物の中に糖質は含まれていますが、おそらく多くの人は「パン、ご飯、麺類」の3つだけでも、3日間の制限はキツイと感じることでしょう。

しかし、私たちはなぜ糖質を摂らないとキツイと感じるのでしょうか?「エネルギーが不足するから」と答える人もいますが、その回答は大正解とは言えません。なぜなら、現代人の多くはおなか周りに十分なエネルギー源(皮下脂肪や内臓脂肪)を持っているからです。また、摂取されたタンパク質や脂質などもエネルギーに変換して利用することができるため、糖質を制限することが、そのまま「エネルギー不足」につながるとは限らないのです。

しかし、それでもなお、私たちの体は糖質を強く欲してしまいます。この異常な欲求を引き起こす糖質とは、いったいどのようなものなのでしょうか。今回は糖質の摂り過ぎが引き起こす症状と、一日の摂取目安量、そして上手な糖質制限の仕方などについて解説をしていきます。

糖質とは?

私たちが食事から摂取している栄養素には様々な種類がありますが、その中に「三大栄養素」と呼ばれるものがあります。三大栄養素とは「たんぱく質、脂質、炭水化物」の3つの栄養素を指します。この3つの栄養素は多くの食品(食材)に含まれていて、私たちの体をつくったり、活動する際のエネルギーになっています[※]。「糖質」とは、この三大栄養素の1つである炭水化物から食物繊維を除いたものを指します。糖質がたくさん含まれている代表的な食品は「パン、ごはん、麺類、イモ類、砂糖」などです。

この「糖質」という言葉は、次の5つのグループを含んだ総称として使用されます。

・単糖類(ブドウ糖、果糖など)
・二糖類(ショ糖、乳糖、麦芽糖など)
・多糖類(デンプン、オリゴ糖、デキストリンなど)
・糖アルコール(キシリトール、エリスリトール、ソルビトールなど)
・合成甘味料(アセスルファムK、アスパルテーム、スクラロース、サッカリンなど)

一方で、糖質とよく似た言葉に「糖類」というものがありますが、これは単糖類と二糖類だけを指した総称です。よく食品のパッケージなどに「糖類ゼロ」と記載されたものを目にしますが、これは単糖類や二糖類が含まれていない(糖類が0.5g未満である)ことを表しています。ただし、他の糖質が含まれている場合もあり、必ずしも「糖質がゼロ」というわけではないので注意が必要です。

※. たんぱく質は1gあたり4kcal、脂質は1gあたり9kcal、炭水化物に含まれる糖質は1gあたり4kcalのエネルギー(カロリー)を産生します。

糖質の中毒性

中毒ときいて、真っ先に連想されるのは「アルコール中毒」や「ニコチン中毒」ですが、それらと肩を並べる強力な中毒がもう一つあります。それは「糖質中毒」です。あまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、糖質の中毒性については、多くの人が体感していることだと思われます。たとえば、それほどお腹が減っていなくても間食が欲しくなったり、ご飯やお菓子などの炭水化物を我慢するとイライラしてくるのも、糖質がもたらす中毒性に他なりません。

糖質を摂取すると、アルコールやニコチン、そしてコカインなどの違法薬物を摂取したときと同様に、脳内に大量のドーパミンやβエンドルフィンが放出されて、強い快感がもたらされます。しかし、その後には血糖値が急降下して強い不快感や空腹感に襲われ、その気分の落差を埋めるために(欲求を満たすために)、より一層糖質を求めるようになるのです。また、糖質を摂取した時の快感は脳内に強く記憶されているため、次の日も、その次の日も無意識に糖質を貪り続けるようになるのです。

一部の食品メーカーや清涼飲料水メーカーは、どれくらいの糖質を商品に混ぜ込めば、このような中毒症状が現れるのかを徹底的に研究し、リピート購入につなげているとも言われています (至福点の研究)。糖質を過剰に摂取してしまう人は、糖質量を抑えようとする前に、まずは自分が「中毒患者」であるということを強く認識する必要があるでしょう。

糖質を摂り過ぎた時に起こる症状

通常、糖質を含んだ食事を摂ると、一時的に血糖値は上がります。そして、その血糖値の上昇を抑えるために膵臓からインスリンが分泌され、およそ2時間以内に正常値に戻されます。このように、食事をして血糖値が上昇したり正常値に戻ったりすることは、健康な人でも普通に起きている現象ですので、特に気にする必要はありません。

しかし、糖質を一気にたくさん摂取すると血糖値が急上昇し、それに連動してインスリンが大量分泌され、血糖値が急下降します。このように短時間の間に血糖値が激しく乱高下する現象のことを「血糖値スパイク(グルコーススパイク)」と言います。この血糖値スパイクが起きる際には、インスリンの過剰分泌によって血糖値が下がり過ぎてしまうことがあります。これを「反応性低血糖症(機能性低血糖症)」と言いますが、血糖値が70mg/dLを下回り、そこからさらに低くなるにつれて段々と症状が悪化していきます。

血糖値70~60mg/dL 強い空腹感、不快感、あくび、思考の鈍化
血糖値60~50mg/dL 頭痛、吐き気、眠気、倦怠感、いらだち、目のちらつき、無気力、会話の停滞、計算ができない
血糖値50~40mg/dL 冷や汗、震え、動悸、めまい、呼吸が速くなる、上腹部痛、複視、顔面紅潮(または蒼白)
血糖値40~30mg/dL 立っていられなくなる
血糖値30~20mg/dL 意識朦朧、異常行動
血糖値20mg/dL以下 意識不明、痙攣、深い昏睡

(それぞれの血糖値レベルに対応する低血糖症状は一般的な目安です)

血糖値スパイクを繰り返していると、血管が傷ついて動脈硬化を起こしやすくなります。動脈硬化は、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞を招き、最悪の場合には死につながるリスクもあります。また、糖尿病になるリスクも高く、糖尿病の三大合併症である「神経障害、網膜症、腎症」にまで進行すると、足の切断や失明、人工透析を受けないといけなくなる場合もあります。その他、糖質の摂り過ぎは、以下のような病気やデメリットを招く恐れがありますので、十分な注意が必要です。

・むくみ
・冷え性
・口内環境の悪化
・花粉症
・消化力の低下
・睡眠の質の低下
・活性酸素の発生
・認知症
・高血圧
・脂肪肝
・痛風
・精神疾患(うつ病)
・糖化(AGE)
・がん など

目安となる一日の摂取量は?

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、糖質の理想的な摂取量は男女ともに1日に必要な総エネルギー摂取量の50~65%とされています。たとえば、1日に必要な総エネルギー摂取量が2000kcalの人の場合、その57.5%(50~65%の中央値)は1150kcalになります。糖質は「1g=4kcal」と換算されますので、「1150÷4」の計算をすると、一日あたりの糖質量は287.5gと割り出されます(一食あたり約95.8g)。

しかし、活動強度が低い(運動量が少ない)人や高齢者などは、1日に必要な総エネルギー摂取量は2000kcalよりも少なくなるはずですので、当然ながら一日当たりの推奨糖質摂取量も287.5gよりは少なくなります。

ちなみに、日本人の平均糖質摂取量は1日あたりおよそ「270~300g」と言われていますが、糖質制限を推奨している専門家の中には「この摂取量では食後高血糖のリスクは避けられない」と危惧している人もいます。

糖質制限とは?

一般的に「糖質制限」や「ローカーボ」という言葉はダイエット法の一つとして知られていますが、医療においては糖尿病などの食事療法としても重要視されています。様々な概念を含んだ総称ですので、糖質の制限強度にもいろいろな種類があります。たとえば、1食当たりの糖質摂取量を7g以下に設定したり、1食だけ何も食べないといった方法や、3食すべてを完全に断糖食にするといった方法もあります。

また、その人の年齢や性別、体重、活動強度、体質なども考慮する必要があります。特に医療上の糖質制限においては持病、病気の進行度合いによっても摂取量や制限期間は異なりますので、医師指導のもとで適切に取り組むことが重要です[※]。

【自己判断で糖質制限を行ってはいけない人】
・糖尿病治療で、血糖降下剤の使用やインスリン注射をしている人
・重度の肝硬変を患っている人
・活動性膵炎の人
・長鎖脂肪酸代謝異常症の人
・尿素サイクル異常症の人 など

※. 健康体であっても、妊婦や成長期の子供には推奨されていないことがあります。

上手な糖質制限の仕方

上記のことを前提とした上で、近年注目されている「ロカボ」と呼ばれる糖質制限法をご紹介します。ロカボとは、山田悟先生(北里研究所病院 糖尿病センター長)が提唱している「ゆるやか」な糖質制限方法です。

ロカボでは一食当たりの糖質を20~40gにして、それに加えて糖質10gの間食もOKとしています。

朝食(糖質20~40g)
昼食(糖質20~40g)
夕食(糖質20~40g)
間食(糖質10g)
 ↓
一日の糖質量(70~130g)

メリットとしては糖質を完全に断つわけではないので、食事のバリエーションがあまり制限されない点にあります。そのため、それなりに食事を楽しみながら長く続けていくことができる方法と言えます。

デメリットとしては、体脂肪を燃やしてケトン体を作りエネルギー源とする、いわゆる「ケトジェニック」体質への転換ができない点にあります[※]。そのため、まずは糖質を完全に断ち「ケトジェニック体質」になってから、適度にロカボを取り入れるといったハイブリッド型の糖質制限を提唱している人もいます。ただし、体内でケトン体をうまく処理することができない特殊体質の人も稀にいますので、ロカボはそういった人も考慮した比較的安全な糖質制限方法と言うことができるでしょう。

※. 1日の糖質摂取量が50gを下回ると、ブドウ糖の代替エネルギーであるケトン体が産生されるようになると言われています。

さいごに

動脈硬化や糖尿病の自覚症状はほとんど無く、気付かないまま進行して合併症など重篤な状態を現すことも多いと言われています。

自分は健康だと思っていても、食生活に不安をお持ちの方は一度医療機関で診断してもらうと良いでしょう。そして、その診断結果が仮に「異常ナシ」であったとしても、毎日の食事において栄養バランスには気を配り、糖質の過剰摂取は避けるように心掛けましょう。そうすることでQOL(生活の質)を向上させるだけではなく、将来の人生を守ることにも繋がります。

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参考文献

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)1-4_炭水化物」

https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586559.pdf

メディカルック「糖質の過剰摂取で起こること|摂りすぎってどれくらい?症状チェックも」

https://epark.jp/medicalook/excessive-carbohydrate-intake/

書籍「糖質制限の大百科」江部康二 著

書籍「ゼロから知りたい!糖質の教科書」前川智 著

書籍「決定版 糖質オフの教科書」牧田善二 著

書籍「糖質制限2.0」西脇俊二 著

書籍「糖質中毒」牧田善二 著

書籍「面白いほどわかる 糖質の新常識」前川智 著

書籍「沖縄の医師が教える糖質コントロール健康法」安谷屋徳章 著

書籍「最新版 よくわかる血糖値を下げる基本の食事」松葉育郎 著

書籍「糖質と血糖値の教科書」麻生れいみ 著

書籍「医者が教える 正しい糖質の減らし方」江部康二 著

書籍「炭水化物の摂り方・選び方パーフェクト事典」竹並恵里 著

書籍「糖質制限の真実」山田悟 著

書籍「糖質制限完全マニュアル 血糖値が安定すればやせられる」山田悟 著

雑誌「Tarzan(2021 11/25 No.822)」マガジンハウス 出版