飲酒時のアルコール代謝における水分補給の重要性 | 水と健康の情報メディア|トリム・ミズラボ - 日本トリム

飲酒時のアルコール代謝における水分補給の重要性

お酒を上手に飲む人は、お酒と一緒に水を飲んでいます。また、気の利いたバーテンダーも、客にお酒を提供した後に水を勧めることがあると言います。水はお酒と一緒に飲むことで、どのような役割を果たすのでしょうか?

早稲田大学の研究では、ある種の水が「飲酒時に理想的な水」として報告されています。その水は一体どのような水なのでしょうか?そして、どのような作用があるのでしょうか?

今回は飲酒時における水分摂取の重要性について解説をしていきます。

アルコールの吸収・代謝の仕組み

水分摂取の重要性について触れる前に、まずは摂取したアルコールが体内でどのように吸収・代謝されるのかについて解説していきます。

摂取したアルコールは、大まかに以下のような流れで全身に行き渡ります。

【 口 → 食道 → 胃 → 小腸 → 肝臓 → 心臓 → 全身 】

まず、口から摂取したアルコールは食道を経由して胃に届けられ、ここで2割ほどが血中に吸収されます。そして、残りのアルコールは胃からさらに進んで小腸に届けられ、ここで8割ほどが血中に吸収されます。

血中に吸収されたアルコールは、毛細管から門脈と呼ばれる静脈に入り、その門脈を通じて肝臓に届けられ、肝臓の分解酵素によって分解(代謝)されます。しかし、肝臓の分解速度はとても遅く、少しずつしか処理することができません[※1]。

肝臓の分解能力を上回るほどのアルコール量がある場合、それらのアルコールは血中で未分解のまま肝臓を通過し、心臓へと届けられます。心臓に届けられたアルコールは、そこから全身に拡散されますが、そのほとんどは血液循環によって再び肝臓に戻り、少しずつ分解されていきます。

血液循環の過程において、一部のアルコールは別の器官で分解されたり、「汗・尿・呼気」によって体外へ排出されたりもしますが、その量は微々たるもので、吸収されたアルコールの9割ほどは肝臓で分解されます。

アルコールは肝臓内で酢酸にまで分解されますが、その過程は二段階に分かれていて、段階ごとに異なる分解酵素が働きます。

▼一次代謝
ADH(アルコール脱水素酵素)の働きによって、アルコールは毒性の強いアセトアルデヒドに分解されます [※2]。

▼二次代謝
ALDH(アルデヒド脱水素酵素)の働きによって、アセトアルデヒドは無害の酢酸に分解されます。

肝臓での分解によってつくられた酢酸は、最終的には筋肉などの組織で、水と炭酸ガス(二酸化炭素)にまで分解され、「汗・尿・呼気」として体外へ排出されます。

日本人の場合、ALDHの働きは欧米人よりも弱い傾向にあると言われています。これは、一次代謝でできたアセトアルデヒドを分解するのに長い時間がかかり、そのかかった時間の分だけアセトアルデヒドの影響を受け続けるということを意味しています。

肝臓は、もともとアルコールの分解スピードがそれほど速いわけではありませんので、短時間に大量のお酒を飲んだ場合、日本人はアルコールの影響に加えて、アセトアルデヒドの影響もたくさん受けてしまうというわけです。

※1. 日本人の肝臓でのアルコール分解能力は、体重10kgあたり1時間に約1gと言われています。
※2. アルコールからアセトアルデヒドへの分解は、MEOS(ミクロゾームエタノール酸化系)やカタラーゼによっても行われますが、大半はADHによるもののため、ここでは割愛しています。

アセトアルデヒドとは

アセトアルデヒドは、主にアルコールの一次代謝によってつくられる毒性の強い物質です[※1]。

体質的にアセトアルデヒドの分解(二次代謝)が遅い人は、少量のお酒を飲んだだけでも、頭痛や吐き気、動悸、顔面紅潮などの「フラッシング反応」が引き起こされ、二日酔いにもなりやすいと言われています。

また、アセトアルデヒドは活性酸素種を生成することで、肝臓中のタンパク質などを破壊して、肝臓にダメージを与えることが知られています(アルコール性肝細胞障害)。

さらに、WHOの国際がん研究機関(IARC)の評価によると、「アルコール飲料に関連するアセトアルデヒド」は、「ヒトへの発がん性がある」とされています[※2]。

※1. たばこの煙やアルコール飲料自体にも含まれています。
※2. 食品添加物などに使用されるような「極微量(超低濃度)」のアセトアルデヒドは、この限りではありません。

水分補給の重要性

お酒は上手に飲むことで人間関係を深めたり、料理の味を引き立てたりしてくれます。しかし、楽しい雰囲気の中でお酒を飲んでいると、ついついペースを乱して強いお酒を飲んだり、盛り上げようと一気飲みなどの度を越えた飲み方に発展してしまう危険性もあります。そのような飲み方をしてしまうと、泥酔状態を招くだけではなく、最悪の場合、昏睡状態に陥って命を落としてしまうこともあるのです。

飲酒時における水分摂取の重要性は、そういった状態に陥るリスクを抑えてくれる点にあります。具体的な水分摂取の重要性については、次のようなものが挙げられます。

【 脱水状態を防ぐため 】
アルコールには利尿作用があり、飲酒量以上の水分が体内から尿として排出されます。自分の飲酒量を確認しながら水分補給を行うことで、脱水状態に陥りにくくなります。 

【 お酒の飲みすぎを防ぐため 】
飲酒の合間に水を飲むことで飲酒頻度(回数)が抑えられ、結果的にアルコール摂取量が少なくなります。また、水を飲むことで満腹感が得られるため、それによってもアルコール摂取量を抑えることができます。

【 酔うスピードを緩やかにするため(急性アルコール中毒を防ぐ) 】
水を飲むことで胃の中などでお酒が薄められ、実質的にアルコール度数が下がるため、酔うスピードを緩やかにしたり、急性アルコール中毒のリスクを抑えることができます。

【 内臓のダメージを軽くするため 】
特にアルコール度数の高いお酒は、食道や胃腸の粘膜にダメージを与えますが、水を飲むことでお酒が薄まって、ダメージを軽減することができます。    

和らぎ水(チェイサー)をとろう

お酒を飲んだ後、すぐに飲む水のことを「和らぎ水(やわらぎみず)」と言います。すぐに飲む理由は、酔うスピードを緩やかにしたり、内臓のダメージを軽くしたりするためです。和らぎ水は、主に日本酒などの和酒と一緒に飲む水のことを指していますが、いわゆる「普通の水」ですので、お店でオーダーしても、たいていは無料で提供されます。

もう一つ、和らぎ水と同じ役割を持つものに「チェイサー(chaser)」という水があります。先に飲んだお酒を追いかけるように(Chase)して飲むことが、名前の由来となっているようです。チェイサーは、主にウイスキーなどの洋酒と一緒に飲む水のことを指していますが、国や店によっては水以外の飲み物[※]を指している場合がありますので、オーダーの際は注意が必要です。

和らぎ水やチェイサーという名称は、お店などでお酒をたしなむ場合には、知っておくと何かと便利です。しかし、この2つの水は「脱水状態を防ぐための水」や「お酒の飲みすぎを防ぐための水」という意味合いが薄いため、十分な量を提供されない場合があることも知っておく必要があるでしょう。

※. 先に飲んだお酒よりもアルコール度数が低い飲み物であれば、すべてチェイサー扱いされることもあります。例えば、ウイスキーを飲んだ後、ビールやコーヒーがチェイサーとして提供されることもあります。利尿作用のある飲み物がチェイサーとして提供された場合には、脱水状態に陥らないよう注意する必要があります。   

飲酒時に理想的な水「電解水素水」

皆さんは電解水素水という水を知っていますか?

電解水素水とは、整水器から生成される水素を含んだアルカリ性の水です。早稲田大学の研究[※]では、この水を摂取すると、肝臓にある2つの分解酵素(ADHとALDH)に作用して、細胞内のアセトアルデヒド量が減少すると報告されています。

【 2つの分解酵素に及ぼす作用 】
・ADHに及ぼす作用 ── ADHの活性を低下させ、アセトアルデヒドの生成を抑制する
・ALDHに及ぼす作用 ── ALDHの活性を高め、アセトアルデヒドの分解を速くする

前述の通り、アセトアルデヒドは活性酸素種を生成することで、肝臓中のタンパク質などを破壊し、肝臓にダメージを与えます(アルコール性肝細胞障害)。そのため、電解水素水の飲用によってアセトアルデヒド量を減少させるということは、必然的に活性酸素種の生成を抑制することにも繋がり、その結果「アルコール性肝細胞障害」から肝臓を保護してくれることになるわけです。

肝臓に対するこのようなアプローチは、水道水や浄水といった「普通の水」では見られず、電解水素水の特異的な性質(水素分子を高濃度に含む性質)によるものと考えられています。

※. 早稲田大学「“飲み過ぎ”時の肝臓を救う電解水素水」

さいごに

一昔前まで、日本の若者や中年者たちの間では、「一気飲み」や「駆付三杯(かけつけさんばい)」といった危険な行為が行われていました。現在でも、たまにそういった行為が行われているようですが、その発端となるのは、たいてい“目上の人”ではないでしょうか。

当人からすれば、「親睦を深めるため」という理由でお酒をすすめていたとしても、すすめられた側としては断るわけにもいかず、無理をして飲んでいることがあります。お酒をすすめる人は、相手が「体質的にお酒が弱い人」なのかどうかを事前に聞いてあげるくらいの配慮は持っていた方が良いかもしれません。

お酒をすすめる人(特に目上の人)は、飲みはじめのころに相手の顔が赤くなっていないかどうかの確認や、お酒をオーダーする際に一緒に「和らぎ水」や「補給用の水」もオーダーしてあげるとよいでしょう。そういった思いやりこそが、本当の親睦に繋がるのかもしれませんね。


参考文献

キリンホールディングス「酔いのメカニズム - お酒のリスク」

https://www.kirinholdings.com/jp/impact/alcohol/0_1/risk/mechanism/

総合南東北病院「アルコールその分解のメカニズム」

https://www.minamitohoku.or.jp/up/news/minamitouhoku/topnews/200612/alcohol.htm

公益財団法人 ルイ・パストゥール医学研究センター 抗酸化研究室「アルコールとアセトアルデヒドの分解について」

https://antioxidantres.jp/column016/

公益社団法人 アルコール健康医学協会「(第3条)強い酒 薄めて飲むのがオススメです」

https://www.arukenkyo.or.jp/health/proper/pro10/pro03.html

厚生労働省「e-ヘルスネット|アルコールの吸収と分解」

https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/alcohol/a-02-002.html

厚生労働省「e-ヘルスネット|アセトアルデヒド」

https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/alcohol/ya-005.html

厚生労働省「フラッシング反応」

https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/alcohol/ya-008.html

アサヒビール「アルコール代謝のしくみ」

https://www.asahibeer.co.jp/csr/tekisei/health/action.html

株式会社ジーンクエスト「アルコール分解の仕組み」

https://genequest.jp/dnatest/alcohol/culture/3

早稲田大学「“飲み過ぎ”時の肝臓を救う電解水素水」

https://www.waseda.jp/top/news/73022

味の素株式会社「飲酒時は脱水状態になりやすい。|経口補水療法」

https://www.ajinomoto.co.jp/nutricare/useful/insyu/02.html

月桂冠「飲酒の心得 和らぎ水で一息置いて、酔いの速度を緩やかに」

https://www.gekkeikan.co.jp/enjoy/enjoy/drink/drink01.html

政府広報オンライン「急性アルコール中毒の怖さを知っていますか?イッキ飲みや無理強いは命にかかわることも!」

https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201804/2.html

株式会社イード「nomooo|お水=チェイサーは間違い!?チェイサーの本当の意味と使い方」

https://www.nomooo.jp/article/2021/08/30/2074.html

書籍「肝臓にぐぐっと効く本」主婦の友社 編

書籍「お酒を飲んで、がんになる人、ならない人」横山顕 著