たばこの健康被害とは?有害物質や受動喫煙について | 水と健康の情報メディア|トリム・ミズラボ - 日本トリム

たばこの健康被害とは?有害物質や受動喫煙について

寝起きや食後に決まって吸いたくなる「たばこ」。嗜好品の一つとして多くの人が吸っていますが、実はニコチン依存症に陥っている可能性があります。その場合、自分の意思でたばこを楽しんでいるのではなく、ニコチンによって吸わされていることになります。

たばこは吸えば吸うほど身体を害し、時には家族や周囲の人に対しても自分より大きな害を与える可能性がありますので、できるだけ早くにやめる必要があります。近年では、加熱式たばこなどによる喫煙も一般的なものとなっていますが、その安全性に関してはまだ不明なところが多くあります。

今回は、たばこや加熱式たばこの有害性について解説をしていきます。

喫煙は百害あって一利なし

酒は「百薬の長」とも言われ、適量であれば健康を増進する効果があるとも言われています。一方、たばこはどうでしょうか?たばこは「百害あって一利なし」です。良いことは全くなく、悪いことばかりと言えるでしょう。

このようなことを言ってしまうと、「そんなことはない!タバコを吸うとリラックスして心が安らぐし、頭が冴えて良いアイデアも浮かびやすい」と反論する人がいます。しかし、それらの現象は、喫煙によってニコチンの禁断症状が解消し、低下していた大脳機能が回復(正常化)しただけにすぎないのです。「それでも、喫煙者同士のコミュニケーションの場においては、たばこは一つの親睦促進ツールになっている」という意見もあるかもしれません。親睦の本質についての議論は脇に置き、仮にそれを一つのメリットとしてカウントしたとしても、そのメリットを上回るいくつもの強烈なデメリット(害)が、数少ないメリットを埋没させてしまうことになるでしょう。

また、実際のところ、たばこの害は間接的なものまで含めると百害どころの話ではありませんし、それらの多くは私たちの命を奪いかねません。「百害あって一利なし」という表現の妥当性は、たばこの有害性を知れば知るほど共感して頂けるはずです。

たばこに含まれる有害物質

たばこの煙には、実に5000種類以上の化学物質が含まれています。そのうち、有害物質は約200種類、発がん性物質は60~70種類もあると言われています。また、それらの中でも特に有害とされているものは「ニコチン・タール・一酸化炭素」で、三大有害物質と呼ばれています。

ニコチン

ニコチンは体内に入ると、血中に溶け込んで全身をかけめぐります。そして、アルコールや覚せい剤と同じように、中枢神経系(脳や脊髄など)に作用して、依存傾向を作り出します。この依存傾向が高まるにつれ、肉体と精神はさらに強い刺激を望むようになり、摂取量はだんだんと増えていくのです。また、体内のニコチンが切れると強い不快感に襲われるため、絶え間なく吸い続けるようになります。これが、いわゆる「ニコチン中毒」と呼ばれるもので、チェーンスモークを引き起こしてしまう主な原因となっています。

タール

タールとは総称であり、タバコの葉や添加物に含まれる成分が、不完全燃焼による化学変化によってできたものを指しています。たばこの燃焼時には、4000種類以上もの化学物質が複雑な化学反応を起こすため、その作用の全貌は解明されていません。しかし、タールに数十種類の「発がん性物質」が含まれていることは、今までの研究によって明らかにされています。

また、たばこに含まれているタール以外の発がん性物質は、タールと混ざることで発がん性がより強化されるとも言われています。もはや凶器と呼んでも過言ではないタールですが、一度体内に入ってしまうと長期にわたり体内に残留し続けます。

一酸化炭素

よく「火災時には煙を吸わないように」と警告されますが、それは一酸化炭素の吸引(一酸化炭素中毒)によって命を落とすことがあるからです。たばこを吸い過ぎた時に、頭痛やめまい、吐き気などを感じることがありますが、それは軽い一酸化炭素中毒が起きている状態です。通常、体内の酸素は血中のヘモグロビンと結合して運搬されますが、一酸化炭素が体内に入ると、酸素よりも優先してヘモグロビンと結合します。その結果、全身に十分な酸素が運ばれず、酸素欠乏状態に陥るのです。

たばこの煙に含まれている一酸化炭素の量は、環境衛生基準の許容量(人体の健康を害さない目安)の数千倍とも言われています。

喫煙によるリスク

たばこはタールなどの有害物質が含まれているため、あらゆるがんの原因となります。また、がん以外にも、動脈硬化、心筋梗塞、脳卒中、歯周病、骨粗しょう症、顔面のしわ、老化の促進などの原因にもなります。

さらに、近年では「たばこ病」として、「COPD(慢性閉塞性肺疾患)」という病気も世界的にクローズ・アップされています。COPDは咳や痰、息切れが主な症状で、「慢性気管支炎」と「慢性肺気腫」のどちらか、または両方によって肺への空気の流れが悪くなる(呼吸困難になる)病気です。吸った空気がうまく吐き出せないため、その分新しい空気も吸えず、ずっと呼吸しにくい状態が続く、とても辛い病気です。自由に呼吸ができないため酸素吸入器をつけなければいけませんし、呼吸が荒くならないようヨタヨタと歩くことになります。やがて、誤嚥性肺炎[※]を何度も繰り返すようになり、最終的にはガリガリに痩せて死亡します。COPDは喫煙者すべてがかかる病気と言われており、まさに「喫煙者のなれの果て」です。このような老後を送りたくなければ、今すぐにでもたばこはやめなければいけません。

※. 本来気管に入ってはいけない物が気管に入ることで引き起こされる肺炎。

煙の種類

たばこの煙は3種類あります。

主流煙(しゅりゅうえん) 喫煙者がたばこのフィルターを通して吸い込む煙
呼出煙(こしゅつえん) 喫煙者が肺まで吸い込んで吐き出した煙(主流煙と成分は、ほぼ同じ)
副流煙(ふくりゅうえん) 点火されたたばこの先端から立ちのぼる煙

この3つの煙のうち副流煙は、主流煙や呼出煙と違ってフィルターを通過していないため、刺激性があり、毒性もかなり強くなります。三大有害物質に限ってみても、副流煙には主流煙の2.8倍のニコチン、3.4倍のタール、4.7倍の一酸化炭素が含まれています。

受動喫煙とは

非喫煙者が他の喫煙者のたばこの煙(呼出煙と副流煙)を吸い込まされることを、受動喫煙と言います(間接喫煙、不随意喫煙、強制喫煙などとも言います)。

呼出煙と副流煙は2つあわせて「環境たばこ煙(ETS)」と呼ばれ、非喫煙者に大きな害を与えるものとして世界中で問題視されています。たとえば、室内での喫煙が許されている職場で働いている場合、8~9時間、ずっと受動喫煙を余儀なくされます。この場合、肺がん死亡率は4~6倍、虚血性心疾患による死亡率は3~4.5倍に上がると言われています。

この受動喫煙において注目すべきは、喫煙者よりも非喫煙者の方が、環境たばこ煙を吸い込む可能性が高いという点です。喫煙者はたばこを一口吸うと、次に吸うまでの間、手に持っているたばこをできる限り自分から離しています。これは自分が副流煙を吸い込むと、むせたり不快感を感じたりするためです。また、呼出煙は口から吐き出された後、その空気の勢いに乗って、喫煙者からだんだん遠のいていきます。このようにして放たれた環境たばこ煙は、周囲の人たちの肺に入ることになるのです。

環境たばこ煙は、自分の家族や職場の社員だけではなく、ペット、胎児にまで影響を及ぼします。また、ベランダなどで喫煙していても、その煙が隣の住人を苦しめている場合もありますので、喫煙者は十分な配慮が必要です。

加熱式たばこについて

加熱式たばこは、たばこの葉を燃えない程度の温度で電気的に加熱し、ニコチンなどを含んだエアロゾル(霧状のようなもの)を発生させる方式のたばこです。「IQOS・Ploom TECH・glo」などが代表的な商品で、国内では2013年12月から販売が開始され、2016年ごろから急速に普及していきました。

ある調査によると、加熱式たばこの使用動機として、最も多くあげられた理由は「他のたばこよりも害が少ないと思ったから」、二番目に多くあげられた理由は「たばこの煙で他人に迷惑をかけるのを避けるため」だったそうです。こういった理由が多く見受けられる原因としては、各社のプロモーション戦略が考えられます。

  • IQOS ──「国際公衆衛生機関が優先する9つの有害性成分の量の低減率が約90%」
  • Ploom TECH ──「健康懸念物質を99%オフ」
  • glo ──「有害性物質約90%オフ」

どの文言も健康的なイメージを想起させ、さも病気にほとんどかからないような感じがしてしまいます。しかし、これらの文言には「紙巻たばこよりも有害物質の総量が少ない」ということが示されているだけであって、「病気が減る」とは示されていません[※]。ベンゼンや一酸化炭素などの有害物質は確かに少なくなっているようですが、ホルムアルデヒドやニコチンなど、それほど減っていない物質もあります。また、プロピレングリコロールやグリセロールなどに関しては、加熱式たばこの方がかなり多く含まれているのです。

他にも加熱式たばこには有害だと考えられている未知の物質が多く含まれています。加熱式たばこは販売開始からの年月が浅いということもあり、いまだ安全性に関する調査データが十分に揃えられていません。たばこ会社のプロモーションイメージをそのまま鵜呑みにするようなことだけは、避けなければいけません。

※. たとえば「たばこ特異性ニトロソアミン」の総量は、紙巻たばこの10分の1程度と少なくなっていますが、この量が化粧品などから検出されれば大問題となり、即座に回収しなければいけないほどのレベルなのです。

禁煙へのチャレンジ

禁煙の方法は、とてもたくさんの種類があります。別のアクションをして気を紛らわす方法、禁煙●日目に自分へプレゼントする方法、ニコチンパッチなどの禁煙補助薬を使う方法などなど、実に様々です。これらの方法はどれも有効で、実際にこれらの方法でたばこを断てた人も多くいるようです。

しかし、これらの方法の根底にあるものは「なんとしても禁煙しなければならない」という忍耐力です。「本当は吸いたいけれど」といった気持ちを押し殺しながら禁煙をする方法では、やがて疲弊して喫煙を再開する可能性があります。そういった気持ちを、喫煙欲求が高まるたびに押し殺すのではなく、そもそも「吸いたくない」と思えるようにする「嫌悪療法」と呼ばれるものもあります[※]。

たとえば、喫煙によって真っ黒になった「肺」の画像をスマホやPCの壁紙に設定するのもその一つです。あまり趣味のいい方法とは言えませんが、見るたびに喫煙欲は失せていきます。より過激な方法としては、透明な容器に「たばこの灰、水(少量)、肉類」を入れ、フタをしっかり閉めてから振って下さい。容器の中で起きていることが、体内でも起きているということを視覚的に刷り込ませていく方法です。ポイントは、その容器のそばに未開封のたばこを置いておくことです。その二つを交互に見ることによって、脳内への刷り込みが一層強化されます。ただし、これらの方法を外出先や会社などで行う場合には、それなりの工夫や配慮も必要です。

※. 好ましくない行動をやめさせるために、その行動と嫌悪刺激の条件づけを行う治療法。嫌悪療法は様々な形態があり、上記で紹介している方法に限定した名称ではありません。

さいごに

イギリスで行われた50年におよぶ追跡調査では、喫煙者は非喫煙者に比べて、寿命が10年縮まるということが報告されています。また、日本の研究でも喫煙者の平均寿命が、男性で8年、女性で10年縮まることが報告されています。

毎日20本のたばこを吸い、それを50年間続けた場合、たばこの総本数は365,000本となり、それを失われた年数を10年として計算すると、たばこ1本で「14.4分」の寿命が縮まることになるのです。ヘビースモーカーの人からすると、たばこを1本吸えるなら「14.4分」くらい失っても構わないと考える人もいるかもしれません。しかし、たばこの影響はそんなにシンプルなものではなく、死亡する前にはもがき苦しむ期間があり、周りの人たちの罹患リスクや死亡リスクも高めてしまいます。喫煙者の方は、喫煙によって失われるものを、今一度しっかりと認識する必要があるのかもしれません。


参考文献

厚生労働省「建築物環境衛生管理基準等の見直しについて」

https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000866659.pdf

厚生労働省「e-ヘルスネット|加熱式たばこの健康影響」

https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/tobacco/t-02-008.html

科学技術振興機構「鹿児島大学大学院教授・竹内亨|一酸化炭素中毒の予防について」

https://www.jstage.jst.go.jp/article/sangyoeisei/51/5/51_wadai9001/_pdf

日本医師会「健康の森|COPDを知っていますか?」

https://www.med.or.jp/forest/check/copd/index.html

政府インターネットテレビ「たばこの煙の恐ろしさ 吸ってる人にも吸わない人にも知ってもらいたいこと」

https://nettv.gov-online.go.jp/prg/prg8643.html

書籍「やさしい禁煙の方法と自己管理」北村諭 著

書籍「新型タバコの本当のリスク」田淵貴大 著

書籍「受動喫煙の環境学 -健康とタバコ社会のゆくえ-」村田陽平 著

書籍「禁煙ドクターが教えるタバコのやめ方」山岡雅顕 監修

書籍「医者が教える最強の禁煙術」奥仲哲弥 著