睡眠の重要性(後編)|腸内環境と睡眠の関係性について | 水と健康の情報メディア|トリム・ミズラボ - 日本トリム

睡眠の重要性(後編)|腸内環境と睡眠の関係性について

 

最適な睡眠時間は?

健康な毎日を送るためには、一体どれくらいの睡眠時間が最適なのでしょうか?
実は、これに対して「○○時間です」という答えはありません。なぜなら、最適な睡眠時間は人によって様々で、同じ人であっても、以下の前提条件によって最適な睡眠時間は異なるからです。

・年齢
・体調
・職業(転職)
・生活環境(引越し)
・季節 など

しかし、過去に行われたいくつかの研究では「6.5~7.4時間」の睡眠が最もリスクが低い睡眠時間として報告されており、その内容をテレビや雑誌などから見聞きした人もいるのではないでしょうか。例えば、2004年に行われた名古屋大学の研究[※1]では、 男女ともに「6.5~7.4時間」が、もっとも死亡リスク(死亡危険率)が低く、それよりも長い睡眠や短い睡眠は、どちらも死亡リスクが高まるという結果が出たそうです。また、2002年に発表されたアメリカの大規模な疫学調査[※2]でも、同じく「6.5~7.4時間」の睡眠時間が、もっとも死亡リスクが低く、それよりも長い、または短い睡眠時間は、死亡リスクが高まるという結果が出ています。

これらの研究結果に限らず、睡眠時間と死亡リスクの関係を調べた研究では、ほとんどの研究において「7時間前後」の睡眠が、最も死亡リスクの低い睡眠時間として示されているようです。この他、肥満・メタボ・糖尿病・うつ病・認知症などの発症リスクについて調べたいくつかの研究においても、おおむね「7~8時間」の睡眠が、最も発症リスクの低い睡眠時間として示されています。

こういった研究結果を見ると、ついつい「睡眠時間は7時間にしなければいけない」と勘違いしてしまいがちですが、これらの研究結果が示している値は、あくまでも「平均値」だということを忘れてはいけません。例えば、ショートスリーパーのように4時間前後の睡眠時間で十分な人もいれば、ロングスリーパーのように10時間以上の睡眠が必要な人もいるわけです。

つまり、「自分にとっての最適な睡眠時間」というものは、必ずしも研究で示された平均値(7時間前後)になるとは限らず、ご自身の睡眠傾向や体感、そして研究結果などを考慮した上で割り出した「独自の睡眠時間」であるべきなのです。そして、その独自の睡眠時間を元に、年齢や体調にあわせて調整をはかっていくことが、睡眠管理を行う上で強く求められているのです。

※1. 現・北海道大学大学院の玉腰暁子教授の研究。49~70歳の男女、約10~11万人を対象にして、10年間(1988年~)の追跡調査が行われました。
※2. カリフォルニア大学サンディエゴ校の研究チームが保険会社とアメリカがん協会の協力のもと実施した調査。30~102歳の男女、約110万人を対象にして、6年間(1982年~)の追跡調査が行われました。

大まかに割り出す方法

自分にとっての最適な睡眠時間を割り出すには、長期的に睡眠の記録をとる必要があります。この記録は「睡眠ダイアリー」と呼ばれるもので、坪田聡博士が監修をされている「思考と体がスッキリ!睡眠のしくみ」という書籍の中で、詳しく紹介されています。

【記録方法の概要】
・方眼ノートなどの行を使って「24時間目盛り」をつけた長方形を描く
・目盛りは長方形の左端に「昼の12時」、中央に「深夜0時」がくるようにつける
・長方形の左側には「日付欄」、下側には「メモ欄」を作る

【長方形内に記載すること】
・食事をとり終えた時刻──太めの縦線を記入する
・ベッドに入ったが入眠していなかった時間帯──斜線塗りをする
・実際に眠っていた時間帯──ベタ塗りをする(塗りつぶす)
・目覚めてはいたがベッドから出なかった時間帯──斜線塗りをする
・強い眠気を感じた時間帯──矢印マーク(←→)を記入する

※実際に眠っていた時間帯は、スマホの「睡眠アプリ」を使うと計測しやすい(体動検知での計測)
※アプリが使えない場合は、ベッドインからの大よその推計を記入する
※日付欄には、日付のほかに「平日/休日」なども記入する

【メモ欄に記載すること】
・目覚めの体感(満足感がある/目覚めが悪い など)
・夜間尿などでトイレに行った回数
・睡眠薬を使用したかどうか
・寝る前にコーヒーやお酒などを飲んだかどうか
・その他、睡眠に関係がありそうな情報すべて

※毎朝起きてすぐに記録をとり、一週間ごとに見返して睡眠状態をチェックする

【チェックするポイント】
・平日の睡眠時間と、休日の睡眠時間の差の大きさ
・朝や日中に強い眠気が生じる日と、生じない日の違い など

こういったチェックを継続的に行うことで、睡眠の傾向や法則性、改善のポイントなどが発見でき、最終的には「自分にとっての最適な睡眠時間」が割り出せるというわけです。なお、上記の書籍では、睡眠ダイアリーを分析するにあたっての「判断の基準」や「注意すべき傾向」などが、より詳しく解説されており、ここからさらに踏み込んだ改善方法が紹介されています。まずは、概要で示した方法を試し、習慣化できそうなら書籍の内容を参考にしながら、本格的に取り組んでみてはいかがでしょうか。

腸内環境と睡眠の関係

世の中には睡眠不足を改善する方法が、たくさん提唱されています。上記で説明した「睡眠ダイアリー」もその一つですが、他にも以下のような方法が挙げられます。

・寝具や空調の見直し
・入浴方法の見直し
・スリープテックの活用(AIなどを使った科学的な睡眠改善サービス)
・ブルーライトの活用方法
・効果的な日光の浴び方
・効果的な昼寝のとり方
・効果的な運動方法 など

これらは一般的にもよく知られており、既に実践している人も多いのではないでしょうか。
その一方で、効果的であるにも関わらず、あまり知られていない方法があります。それは「腸内環境を整える」という方法です。意外かもしれませんが、腸内環境と睡眠には密接な関係があり、そのことはいくつかの研究でも報告されています。

筑波大学の研究

2020年11月、筑波大学の研究チームはマウスを使った研究成果を報告しています。

二匹のマウスのうち、一匹には抗生物質を投与して腸内細菌を除去、もう一匹には抗生物質を投与せずに通常状態のままにしておきました。両者を比較したところ、腸内細菌を除去したマウスに、以下のような変化が現れました。

本来の睡眠時間帯(日中)・・・ノンレム睡眠の時間が短くなった
本来の活動時間帯(夜間)・・・覚醒時間が短くなったり、ノンレム睡眠に入ることが多くなった

マウスは夜行性動物で、人間とは昼夜の行動が逆になるため、上記の変化(比較結果)がややこしく見える人もいるかもしれません。動物実験の結果を完全に人間にあてはめることはできませんが、話を分かりやすくするため、あえて擬人化して(例え話で)説明をすると、次のような変化が現れたことになります。

  • 夜間に、深い睡眠が得られにくくなった
  • 日中に、眠気で朦朧としたり、居眠り状態になることが増えた

この実験で示唆されていることは二つあります。
①腸内細菌を除去すると、睡眠と覚醒のリズムが崩れる
②腸内環境が正常であれば、こういった異常は起きない

ノバ・サウスイースタン大学の研究

2019年10月、ノバ・サウスイースタン大学の研究チームは、「腸内にいる微生物の多様性」と「人間の睡眠」との関係性について、研究成果を報告しています。

この実験では被験者に一ヶ月間、身体活動モニターを装着させた状態で調査が行われ、それと同時に便のサンプルも回収して、詳細に分析を行ったそうです。そして、実験の結果、以下のことが明らかになりました。

  • 腸内にいる微生物の種類が豊富であるほど、睡眠の質がよくなる
    →睡眠時間が長くなり、睡眠効率もよく、夜間の中途覚醒の回数も少ない
  • 睡眠の質が良い人の腸内にいる特有の微生物の種類が特定
    →バクテロイデス門(睡眠を促進する神経伝達物質GABAを産生する)
    →コリネバクテリウム属(睡眠を促進する神経伝達物質セロトニンを産生する) など
  • 腸内にいる微生物の種類が豊富な被験者は、血中の「インターロイキン-6」の値が高い
    →インターロイキン-6は、睡眠の質の向上にも役立つ物質

この実験でも示唆されていることは二つあります。
①腸内にいる微生物の多様性が、睡眠の向上に大きく貢献している
②微生物の多様性を保つためには、前提として腸内環境を健やかな状態にしておく必要がある

腸内環境を整えよう

上記の実験以外にも、腸の重要性について発表されている論文はたくさんあります。たとえば、「脳腸相関理論」についての研究では、腸内環境を整えると脳に良い影響を与え、メンタルが安定するという作用が報告されています。メンタルが安定していれば、リラックス状態もつくりやすくなるため、もしかすると上記の研究とも通じるところがあるのかもしれません。

睡眠は心身の健康のほぼすべてに影響を与える重要な生理現象だということは既にお伝えした通りですが、腸はその睡眠を支える大きな柱の一本であることは間違いないでしょう。では、この「腸内環境」を正常に保つには、どうすればよいのでしょうか?いろいろな方法が挙げられますが、基本となるのは、やはり生活習慣の改善でしょう。とくに、食生活の改善は腸内環境の正常化だけではなく、栄養摂取の観点からも非常に重要な取り組みです。「プレバイオティクス」や「プロバイオティクス」など、微生物(善玉菌)の成長や活動を促進する食品をたくさん含んだ食事メニューは、腸内環境の改善に大変有用です。

また、そういった食生活に加えて、毎日使う「水」の選択も腸内環境に大きく左右します。水素を含んだアルカリ性のお水に「電解水素水」があります。電解水素水とは整水器と呼ばれる医療機器から生成されるお水で、「胃腸症状の改善効果」が認められています。胃腸の働きを助け、腸内環境の正常化にとても役立ちますので、毎日のお水にとてもオススメです。

ちなみに、整水器には「医療機器」という少しとっつきにくい肩書がありますが、病院やクリニックで購入するものではなく、インターネットでも手軽に購入することができます。一般家庭でも多くに使用され、便秘になりやすい体質の方や、ストレスで胃腸を壊しがちなビジネスパーソンなどから強い支持を得ています。

食事や運動などの「生活習慣の改善」とあわせて、「電解水素水」の飲用で腸内環境を整え、心身ともに健やかな毎日を送ってみてはいかがでしょうか。

さいごに

睡眠は心身の健康状態に大きな影響を及ぼす重要な生理現象です。その重要性をよく理解している人の中には、睡眠を最重要事項として捉え、徹底的に睡眠の改善・管理に取り組んでいる人もいます。ただ、睡眠を重要視することは大変良いことですが、あまり意気込んでしまうと逆にプレッシャーともなり、寝つきを悪くしてしまうことがあります。

本来、睡眠はリラックスの場や、至福を感じる時間であるはずです。ちょっとしたお洒落心や遊び心なども取り入れつつ、楽しみながら改善・管理に取り組んで頂きたいものです。睡眠にそういった要素を取り入れる場合、「アロマ」や「1/fゆらぎ」などの活用も良いでしょう。アロマでは鎮静系のラベンダー、サンダルウッド、カモミール・ローマン、1/fゆらぎでは極小音量での波の音、小川のせせらぎ音などが、寝つきの改善に定評がありオススメです。


参考文献

PubMed「Daniel F Kripke, et al.|Mortality associated with sleep duration and insomnia」

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11825133/

scientific reports「Ogawa, Y. et al., | Gut microbiota depletion by chronic antibiotic treatment alters the sleep/wake architecture and sleep EEG power spectra in mice」

https://www.nature.com/articles/s41598-020-76562-9

PubMed Central「Robert P. Smith et al.,|Gut microbiome diversity is associated with sleep physiology in humans」

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6779243/

書籍「睡眠のしくみ」成美堂出版 出版

書籍「睡眠の大研究」PHP研究所 出版

書籍「必ず眠れるとっておきの秘訣!」櫻井武 著

書籍「睡眠障害」西野精治 著

書籍「最速入眠プログラム」マイケル・モズリー 著

書籍「眠れない人がぐっすり眠れる本」鴨下一郎 著

書籍「スッキリした朝に変わる 睡眠の本」梶本修身 著

雑誌「Newton(2023年4月号)」ニュートンプレス 出版