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ケトジェニックダイエットの基礎知識

近年、様々なダイエット法が紹介されていますが、その中でも短期間で効率的に痩せる「ケトジェニックダイエット」が注目されています。

この痩身法が注目されている大きな理由は、次の二点です。
①比較的早く体が痩せる
②健康が増進される(長寿にも影響を及ぼす)   

疲れにくくなる、集中力が増す、肌にハリが出て若々しく見える、さらに、糖尿病や高血圧の改善、アトピー性皮膚炎や花粉症の改善など、様々な健康効果も期待されているようです。但し、実践にあたってはいくつかの注意点もあり、やみくもに取り組んでしまうと体を壊してしまう恐れもあります。

今回は、ケトジェニックダイエットの基礎知識について解説をしていきます。

ケトジェニックダイエットとは?

ケトジェニックダイエットは、糖質制限を行いつつも必要な栄養素をしっかりと摂り、ケトン体回路を回して体脂肪を燃焼させる痩身法です。

ケトジェニックとケトン体、この二つの言葉について簡単に説明をしておきましょう。

【ケトジェニック】
ケトジェニックとは「ケトン体生成の」という意味です。ケトジェニックダイエットという言葉においては、「ケトン体を作り、それを活かして行うダイエット」というニュアンスで捉えておけば、ひとまずOKです。

【ケトン体】
「アセト酢酸、β-ヒドロキシ酪酸、アセトン」の三つを総称した言葉です。ケトン体は、体内で糖質が枯渇したときに、肝臓で脂肪酸(脂肪から分解されたもの)から合成され、脳を含むあらゆる細胞でエネルギーとして使われます。

通常、一般的な現代食を食べている私たちの体は、糖質(グルコース:ブドウ糖)をメインのエネルギー源として使用する状態になっています(この状態をグルコジェニックと言う)。

ケトジェニックダイエットでは、糖質を制限することで体内の糖質を枯渇させ、強制的にグルコジェニックからの脱却をはかるわけです。それによって、体はメインのエネルギー源を脂質(脂肪)に切り替え、そこからケトン体というエネルギー物質を作ろうとするのです。

ケトジェニックダイエットの関連本などには、よく「ケトン体回路を回そう!」といった決まり文句が書かれていますが、これはつまり、「グルコジェニック」から「ケトジェニック」へのシフトチェンジを意味しています。

ケトジェニックの状態になると、体にためこまれている脂肪は優先的にエネルギー源として活用されるため、どんどん痩せていきます。また、その過程で生成されるケトン体は、エネルギー物質という役割以外にも抗酸化誘導作用があり、長寿遺伝子を活性化させるということも明らかになっているようです。

とても都合がいい痩身法であるということはご理解頂けたかと思いますが、ここまでの説明をきいて一つ大きな疑問が残ります。
「糖質制限と何が違うの?」・・・この疑問については、次の項で解説します。

糖質制限との違い

ケトジェニックダイエットは糖質制限の一種です。しかし、一般的な糖質制限との最大の違いは、単に糖質を制限するだけでなく、他の栄養素の摂取にも細心の注意を払う点にあります。

単純な糖質制限ダイエットでは、糖質の摂取量を減らそうとするあまり、食事量や食事回数を減らしたり、特定の食品ばかりを食べたりする傾向があります。また、そういった糖質制限を行っている人の中には、カロリーがあるものを強く避ける人もいて、良質な肉や油であっても「ハイカロリー食品」という理由から、食べないようにすることがあります。こういった偏食や非摂取を行えば、確かに体重は減少して体は痩せていきますが、それと同時に必要な栄養素の不足による重大な健康リスクを伴う可能性があるのです。

必要な栄養素というのは、例えば「タンパク質、ビタミン、ミネラル」などのことです。これらの栄養素の不足は、筋肉量の減少や代謝の低下、免疫力の低下などに繋がると考えられています。実際、厳しい糖質制限(単なる糖質制限)を行って、目標体重や目標サイズを達成した人の中には、その代償として、若々しさを失ったり、心身の健康を害してしまう人が多くいるようです。

また、体の欲求(必要な栄養を摂取しようとする欲求)を無理やり抑えているわけですから、どこかのタイミングで限界が訪れ、暴飲暴食に走ってリバウンドを起こしてしまうリスクもあります。

基本的な食事の構成

ケトジェニックダイエットの食事構成を考えるにあたっては、以下のことを意識するとよいでしょう。

糖質─かなり少なめ
・糖質を枯渇させてグルコジェニックからの脱却をはかる

タンパク質─やや多め
・必須アミノ酸を摂取
・筋肉量の維持、基礎代謝の維持、ホルモン分泌量の維持
・食事誘発性熱産生を活用してダイエットを加速
・食後の満足感を高めて過食を防止

脂質─多め
・メインエネルギー源の枯渇を防止
・ケトン体回路、ケトーシスの維持
・ただし、オメガ6系脂肪酸やトランス脂肪酸は極力控える

食物繊維─多め
・便秘の予防
・腸内環境の悪化を予防
・ビタミン、ミネラル、ファイトケミカルの摂取

水分─多め
・便秘の予防
・脱水の予防(ケトーシス状態では尿量が増加する傾向にあるため)

また、これらの前提をふまえつつ、以下のことも意識しましょう。

・同じ食品ばかりを食べ続けないこと(偏食しない)
・ビタミン、ミネラル、ファイトケミカルを満遍なく摂ること
・脂質はアボカドや青魚、ナッツ類などに含まれる良質なものを摂取すること
・オプションとして、ときどきMCTオイルやココナッツオイル、アマニ油を摂取する
・タンパク質はハムや肉団子などの加工食品を避け、卵、肉、チーズ、大豆食品から摂取する

メニューの具体例としては、以下のようなものが挙げられます[※]。

【朝食】
・具だくさんの味噌汁 (数種類の野菜、きのこ類、海藻を入れる)
・サバの塩焼き
・ゆで卵
・納豆
・水

【昼食】
・野菜スティック
・チキンサラダ
・チーズ
・豆腐
・水

【間食】
・コーヒー (シナモン、MCTオイル、ココナッツオイルなどを入れる)
・素焼きのクルミ
・ダークチョコ
・水

【夕食】
・アボカドのサラダ
・牧草牛(グラスフェッドビーフ)のステーキ
・ブロッコリーやニンジンの温野菜(アマニ油をかける)
・水

※. 厳密には根菜類や豆類などには糖質が含まれているため、シビアにケトジェニックダイエットを行う場合は避けた方がよいという意見もあります。

やり方と成功のポイント

一般的にケトジェニックダイエットは痩身法として知られていますが、食事療法や健康食事法という一面もあり、それぞれにやり方が異なります。

ここでは「痩身法」に焦点をあて、大局的な実践方法と成功のポイントを解説します。

自分に適した必要摂取量や摂取許容量を把握する

一般的に、痩身に主眼を置いたシビアなケトジェニックダイエットでは、糖質の摂取量は1食あたり20g以下(1日60g以下)を目安にするのがよいと言われています。また、健康に主眼を置いた緩やかなケトジェニックダイエット(セミケトジェニックダイエット)では、1食あたり20~40g(1日60~120g)が目安です。

しかし、これらの目安は体質や年齢、持病の有無などによって変わるため、かなり大まかな目安にしかなりません。糖質、脂質、タンパク質、食物繊維など、自分にとっての適量は医師(かかりつけ医)との相談によって決めるのが最も確実です。かかりつけ医が、ケトジェニックダイエットに詳しくない場合は、代わりの専門医を見つけ、その方に相談した上で、自分にとっての必要摂取量や摂取許容量を決めるようにして下さい。

食べられる食品をリストアップ(収集)しておく

ケトジェニックダイエットを行うにあたり、もっとも煩わしいのがメニュー決めかもしれません。偏食を避け、バランスの良い食事を行うためには、日ごろからスーパーやコンビニでケトジェニックダイエットに適している食品をリストアップしておく必要があります。

はじめのうちは少し面倒に感じるかもしれませんが、リスト(食品数)が増えていくにつれ、食事のバリエーションが豊かになり、徐々に楽しくなっていくはずです。また、このリストがあれば、急遽、外食をしなければいけないケースや、コンビニ食で済ませなければいけないケースなどが発生しても、すぐに対応できるというメリットがあります。  

強い糖質欲求が出た時の対処法を決めておく

糖質に偏重した食事を長く摂り続けてきた人にとって、糖質を断つことはかなり辛いことです。ケトジェニックダイエット中に糖質への欲求が出たら、どう対処するのかをあらかじめ決めておくとよいでしょう。

参考程度にご提案をすると、まず意識の持ち方としては「糖質への欲求が出ているということは、ちょうど今、ケトジェニックに切り替わろうとしている最中なんだ」と、ポジティブにイメージすることが大切です。

また、日ごろから糖質系のおやつに代わる食品をコツコツとリストアップしておくこともポイントになります。ナッツや小魚、乾燥昆布、スルメ、ダークチョコ、シナモンコーヒーなど、代替品になるものは意外と多く見つかるはずです。

どういった対処法を準備しておくかはご自身の判断によりますが、事前に決めておくことでイライラの感情が抑えられ、意志が揺らぐ時間も少なくなるため、ケトジェニックダイエットの成功率が高まります。

ストレス管理、睡眠管理を行う

意外かもしれませんが、睡眠不足やストレスは、ケトジェニックダイエットを阻害する要因になります。「睡眠の質が低い、睡眠時間が少ない、遅い時間帯に寝る」、「仕事やプライベートのストレス」といった問題が、交感神経を刺激して血糖値を上げ、ケトン体の働きを悪くしてしまうのです。

また、そもそも睡眠不足やストレスというのは、体にとっての異常事態ですので、できるだけ早く事態をおさめるために、体は即効性の高いエネルギーである糖質を強く求めてしまいます。気だるい時やイライラした時に、甘いものを食べてしまう理由はこのためです。

ケトジェニックダイエットを成功させるためには、ストレス管理や睡眠管理を行って、ケトン体の働きを正常に保ち、甘いものへの欲求を抑える必要があります。そのための有効的な方法(解消方法)の一つに運動が挙げられます。ヨガ、ウォーキング、スイミングなど、軽めの運動を比較的長い時間かけて行うとよいでしょう(脂肪燃焼を促進させるという意味でもオススメです)。

注意点

ケトジェニックダイエットは、万人に適して誰でも気軽に取り組めるようなイメージがあります。実際、これまで糖質制限をしてきた人の中には、その流れのまま自己流でケトジェニックダイエットを始めてしまう人もいるようです。

しかし、ケトジェニックダイエットでは、糖質や脂質、タンパク質などの必要摂取量や摂取許容量が人によって異なるため、感覚的に行ってしまうと、思わぬ体調不良を招く危険性があります。また、そもそもケトジェニックダイエットを「やってはいけない人」や「やる際に注意が必要な人」もいますので、医師への確認なしで始めることは、命を危険にさらす恐れもあるのです。

以下に該当している人は、ケトジェニックダイエットを始める前に、必ず医師に相談をして下さい。

・糖尿病と診断された人(治療中の人)
・腎機能が低下している人(クレアチニン濃度の数値が基準値外の人)
・肝機能が低下している人(ALT(GPT)、AST(GOT)、γ-GTPの数値が基準値外の人)
・尿酸値が高い人(尿酸値の数値が基準値外の人)
・妊娠中の人
・成長期の子ども
・何らかの持病や不調がある人

特に、糖尿病の人は治療法の一つに糖質制限療法が確立されていることもあり、安易に取り組んでしまいがちですが、自己流で始めると致命的な症状を引き起こしてしまうリスクがあるので注意しなければいけません。

さいごに

ケトジェニックダイエットは痩身効果が大きく、健康増進にもなる素晴らしい痩身法(食事法)です。しかし、シビア(本格的)なケトジェニックダイエットを自己流で始めてしまうと、体に大きなダメージを与えたり、場合によっては命を危険にさらしてしまうこともあります。

つまり、シビアなケトジェニックダイエットは「一人で始めて(行って)はいけないもの」という認識を持つことが大切です。それでもなおケトジェニックダイエットをやってみたいと思う人は、少し面倒に映りますが、ぜひ専門医を見つける所から始めてみるとよいでしょう。

一方、「ケトジェニックダイエットはちょっと難しそう」、「もっと手軽に取り組めて、より自然なダイエットの方法を知りたい」と思われる人もいるかもしれません。
以下の記事では、より自然で無理のないダイエットを紹介していますので、ぜひ参考にしてみて下さい。
【ダイエットをより自然に 水と睡眠で継続できるナチュラルダイエット】
https://www.nihon-trim.co.jp/media/29668/


参考文献

株式会社ワッション「vol.3 ケトジェニックダイエットのよくある間違い」

https://ketoslim.jp/shop/information/common_mistake

東洋経済オンライン「「間違いだらけのダイエット」見分ける3つの視点 情報に振り回されると不幸な結果につながる」

https://toyokeizai.net/articles/-/771134?page=2

管理栄養士 圓尾和紀の「カラダヨロコブログ」「糖質制限をしなくても、ファスティングによってケトン体が増える」

http://karada465b.minibird.jp/post-2625/

健康管理食ジョイント「ケトン体はダイエットに効果あり?その仕組みややり方をわかりやすく説明!」

https://www.food-joint.shop/column/ケトン体はダイエットに効果あり?その仕組みや/

VitabridC12「美容と健康とビタミンC|ケトジェニックダイエットのやり方とは?糖質制限との違いからおすすめメニューまで解説」

https://vitabrid.co.jp/columns/healthcare/ketogenic2406

書籍「ケトジェニックダイエット」斎藤糧三 著

書籍「いちばんやさしいケトジェニックダイエットの教科書」白澤卓二 著