繰り返す口内炎は腸からのサイン?腸内環境を整えて口内炎を予防しよう

「同じ場所に何度も口内炎ができて痛い」
「薬を使ってもすぐ再発する」
そんな悩みを抱えていませんか?
その口内炎の原因、単なる粘膜の傷や刺激だけではないかもしれません。実は、“腸内環境”が口内炎に影響を与えるという見方があります。
今回は「口内炎」と「腸内環境」の意外な関係にフォーカスし、日常生活の中でできる自然な予防法や、今日から試せる生活改善のヒントをご紹介します。
目次
口内炎の種類と原因
口内炎は「唇、頬の内側、舌、歯茎」など、口の中の粘膜に起こる炎症の総称です。その種類はたくさんあり、比較的よく知られるものとしては、以下のものが挙げられます。
アフタ性口内炎 | 過労や睡眠不足、ストレス、ビタミン不足などが原因[※] |
カタル性口内炎 | 物理的な刺激(入れ歯や矯正器具の接触、噛み傷など)が原因 |
ウイルス性口内炎 | ヘルペスなどのウイルスや、カンジダなどのカビが原因 |
アレルギー性口内炎 | 金属や薬品、特定の食品などが原因 |
ニコチン性口内炎 | 喫煙によるニコチンが原因 |
この記事では、もっとも一般的な口内炎といわれている「アフタ性口内炎」を口内炎と呼び、話を進めていきます。
※. アフタ性口内炎の原因ははっきりとは解明されておらず、ここで挙げられているものは推定の原因です。
腸内環境も口内炎に影響する
腸は、栄養の吸収や免疫機能など、私たちの健康を支える重要な役割を担っています。最近では、この腸内環境の乱れが口内炎を引き起こす一因になっている可能性も指摘されています。一見離れているように思える「腸」と「口」ですが、実は体の内側で密接につながっているのです。
ここでは、腸内環境が口内炎にどう影響するのかを、「免疫力」「栄養の吸収」「毒素の産生」という3つの観点から見ていきましょう。
免疫力低下の影響
腸は、「人体最大の免疫器官」と呼ばれるほど、免疫の働きと深く関わっています。その理由は、全身の免疫細胞のおよそ70%が腸に集中しているためです。
腸内には、善玉菌・悪玉菌・日和見菌といった腸内細菌がバランスを保ちながら存在しており、このバランスが整っていることが、免疫機能の正常な働きにつながります。しかし、ストレスの蓄積や睡眠不足、偏った食生活、さらには抗生物質の使用などが続くと、善玉菌が減少し、悪玉菌が優勢となり、腸内環境が乱れてしまいます。このような状態では、免疫機能が低下し、全身の防御力が弱まります。その結果として、粘膜のバリア機能も弱くなり、口の中の粘膜が刺激に対して過敏になってしまいます。たとえば、食べ物の熱や摩擦など、ちょっとした刺激であっても粘膜が傷ついて炎症が起き、口内炎が現れやすくなるのです。
また、腸内の善玉菌には、ウイルスや細菌から体を守る「免疫細胞」を活性化させる働きもあります。腸内環境が崩れると免疫細胞の働きも鈍くなり、風邪や感染症にかかりやすくなるとともに、それが引き金となって口内炎が起こるケースも少なくありません。
栄養の吸収低下の影響
腸は食べたものから栄養を取り込み、全身に届ける「栄養の入り口」としての役割を担っています。しかし、腸の状態が悪くなると、体に必要な栄養がうまく吸収されず、さまざまな不調の原因となってしまいます。口内炎との関係においても、ビタミンA、C、B群(B2・B6・葉酸)、鉄、亜鉛など、粘膜の修復や再生に必要な栄養が不足しがちになり、口内炎ができやすくなったり、治りにくくなったりするのです。
また、腸内にいる善玉菌の中には、粘膜に必要な栄養を体内で合成する働きをもつものも存在します。しかし、腸内環境が悪くなると、こうした菌の働きも弱まり、栄養を作り出す力そのものが低下してしまいます。
つまり、腸内環境が悪くなると、「食事から栄養を取り込む力」と「体内で栄養を補う力」の両方が損なわれることになり、その結果、口内炎が発生しやすくなったり、長引いたりする原因となるのです。
毒素産生の影響
腸内環境が悪くなると、善玉菌が減少し、悪玉菌が優勢な状態へと傾いていきます。このとき腸の中では、免疫機能の低下が起きるだけでなく、有害な物質が発生するという別の問題も起きてくるのです。
たとえば、悪玉菌は腸内に残ったたんぱく質や脂質を分解・腐敗させて、アンモニアやアミン、インドール、スカトールなど、体にとって有害な物質をつくり出します。さらに、腸内で悪玉菌の数が増えると、それだけ腸内での菌の代謝や死滅の頻度も高くなり、死骸となった菌の構成成分が蓄積しやすくなります。その代表が、グラム陰性菌の細胞壁に含まれるエンドトキシン(内毒素)です。菌が死滅すると、このエンドトキシンが腸内に放出され、体内に炎症反応を引き起こす刺激となることが知られています。
通常、腸の粘膜はこうした毒素が体内に入らないようバリアの役割を果たしていますが、腸内環境の悪化が続くと粘膜が傷つき、「腸漏れ(リーキーガット)」と呼ばれる状態になることがあります。そうなると、腸内で発生した毒素が血液を通じて全身をめぐり、さまざまな部位に慢性的な炎症を引き起こすようになります。その影響が、粘膜の中でもとくにデリケートな「口の中」に及ぶと、わずかな刺激でも炎症が起こりやすくなり、口内炎につながってしまうのです。
腸活で口内炎を予防しよう
腸内環境の乱れが、口内炎をはじめとするさまざまな不調に影響していることは、これまでに見てきたとおりです。では、私たちは日々の暮らしの中で、どのように腸内環境を整え、口内炎の予防につなげていけばよいのでしょうか。そのヒントになるのが「腸活」です。
腸活とは、腸の働きを整え、腸内フローラのバランスを良好に保つための生活習慣や食事の工夫のことを指します。少し難しく聞こえるかもしれませんが、実際には、毎日のちょっとした心がけで始められるものばかりです。
ここからは、腸内環境を整えるための具体的なポイントを、「食事」「生活習慣」「水分補給」という3つの視点からご紹介していきます。
発酵食品と食物繊維の摂取
腸内環境を整えるうえで、まず意識したいのが「発酵食品」と「食物繊維」の摂取です。
発酵食品には、乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌が含まれており、これらは「プロバイオティクス食品」とも呼ばれます。善玉菌を食事から取り入れることで、腸内フローラのバランスが整いやすくなります。代表的な発酵食品には、ヨーグルト、納豆、キムチ、味噌、ぬか漬け、チーズなどがあります。こうした食品を日常的に取り入れることが、腸の健康を支える基本となります。
また、善玉菌を“育てる”ためには、そのエサとなる「プレバイオティクス食品」の摂取も重要です。プレバイオティクスとは、主に食物繊維やオリゴ糖のことで、腸内細菌の働きを活性化させる役割があります。とくに水溶性食物繊維は、腸内で発酵されると「短鎖脂肪酸」という物質を生成し、腸のバリア機能や免疫機能の維持・向上に役立ちます。水溶性食物繊維を多く含む食材としては、ごぼう、海藻類、オクラ、熟したバナナなどが挙げられます。
一方、不溶性食物繊維には、便のかさを増やし、腸のぜん動運動を促す働きがあります。キャベツ、モロヘイヤ、納豆などは不溶性食物繊維が多く、腸の働きを刺激するのに役立ちます。
水溶性と不溶性のどちらも腸内環境にとって大切な存在です。特定の食材に偏るのではなく、両方をバランスよく取り入れるようにしましょう。
ストレス対策と睡眠の見直し
ストレスや睡眠は、自律神経を介して腸の働きに深く関わっています。自律神経には、活動モードを担う「交感神経」と、リラックスモードを担う「副交感神経」があり、これらがバランスよく切り替わることで、腸のぜん動運動や便通、栄養の吸収がスムーズに行われています。
しかし、ストレスがたまると交感神経が優位になり、腸の動きが抑えられてしまいます。その結果、便秘や下痢といった腸の不調が起こりやすくなり、腸内環境の悪化を招いてしまうのです。また、長期的なストレスを受けると腸粘膜のバリア機能が弱まり、炎症やアレルギー反応を引き起こしやすくなると考えられています。
一方、睡眠も腸の健康に大きな役割を果たしています。睡眠中は副交感神経が優位になり、腸の修復と再生が活発に進む時間帯です。しかし、睡眠時間が短かったり、眠りが浅かったりすると、腸の回復が不十分となり、腸内環境が悪化しやすくなるのです。腸内環境の悪化は、免疫力の低下や栄養吸収の不良を引き起こし、最終的には口内炎を繰り返すリスクを高めてしまいます。
では、ストレスや睡眠不足に対して、具体的にどのような対策ができるでしょうか。
たとえば、1日15〜30分の軽いウォーキングやストレッチは、ストレスを和らげ、自律神経のバランスを整える助けになります。また、深呼吸やマインドフルネス瞑想などのリラクゼーション法を取り入れることも効果的です。さらに、お風呂にゆっくり浸かることで副交感神経が優位になり、心身のリラックスが促されます。
睡眠に関しては、就寝前にスマホやパソコンの使用を控え、部屋の照明を落として脳を落ち着かせる「入眠儀式」を習慣化するのがおすすめです。あわせて、快適な寝具を整え、適切な室温・湿度を保つことで、より深く質の高い眠りをサポートできるでしょう。
胃腸をケアするお水の活用
腸内環境を整えるためには、食事や生活習慣の見直しに加えて、「水分補給」にも意識を向けることが大切です。
水分補給が十分に行われず、体内水分量が不足してくると、便が硬くなって排出しにくくなり、腸内にとどまる時間が長くなります。この状態が続くと、腸内で悪玉菌が増えやすくなり、腸内環境の悪化につながるおそれがあります。そのため、1日あたり1.5~2リットルを目安に、こまめな水分補給を心がけることが重要です。また、体を冷やさないために、できれば常温のお水を飲むか、白湯(さゆ)にしてから飲むこともよいでしょう。
さらに、お水の種類にこだわることも大切です。毎日飲むお水として、浄水や天然水、ミネラルウォーターなど、さまざまな選択肢がある中で、近年では「電解水素水」という水が腸活実践者の間で注目を集めています。電解水素水とは、整水器(家庭用医療機器)から生成される、水素を含んだアルカリ性のお水のことで、「胃腸症状の改善効果」が認められています。日常の水分補給を電解水素水で行うことで、手軽に腸内ケアができるため、腸活を無理なく継続的に行いたい人は、電解水素水を候補の一つとして考えてみても良いかもしれません。
さいごに
腸内環境と口内炎の関係を知ると、これまで以上に“腸の健康”に意識を向けたくなります。
腸は、栄養の吸収や免疫機能の調整、有害物質の排出など、体全体の健康を支える大切な器官。その腸が乱れると、口の中の粘膜にも影響が出て、口内炎の引き金になることもあります。腸をいたわることは、口の中をいたわることにもつながります。
発酵食品や食物繊維を意識してとる、ストレスや睡眠不足に気をつける、そして水分をこまめに補う。どれも今日からはじめられる、無理のない“腸活習慣”です。
体の内側が少しずつ整ってくると、不思議と外側の調子も整ってきます。毎日のちょっとした意識が、口内炎のない健やかな日々への第一歩になるかもしれません。
- 監修者のご紹介 -
参考文献
第一三共ヘルスケア「くすりと健康の情報局|口内炎の症状・原因」
https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/health/symptom/12_kounaien/
大正製薬「腸内環境を整えて免疫をケア!」
https://brand.taisho.co.jp/contents/livita/558/
エーザイ株式会社「チョコラドットコム|口内炎に効く食べ物は?おすすめの食事と避けるべき食べ物を解説」
https://www.chocola.com/column/kounaien-04
増田歯科医院「口内炎について」
https://www.masuda-shika.net/oyakudachi_column/kounaien/
徳治会歯科医院宇城「口内炎の原因と予防法」
https://yoshinaga-dc.net/column/detail-2152/
腸内細菌学会「用語集|腸内細菌によるビタミン産生」
https://bifidus-fund.jp/keyword/kw073.shtml
日清ファルマ株式会社「ビフィズス菌、乳酸菌などの善玉菌 体内でビタミンまで作っている!?」
https://www.nisshin-pharma.com/column/cat01/009/
つちうら東口クリニック「便秘がアレルギーや健康に大きく影響する」
https://www.tsuchiura-east-clinic.jp/7393.html
大原薬品工業「けんこう名探偵|第3回 冬の便秘を防ごう!」
https://www.ohara-ch.co.jp/meitantei/vol03_5.html
フナコシ株式会社「エンドトキシンを高感度に検出するキット - ToxinSensor Chromogenic LAL Endotoxin Assay Kit」
https://www.funakoshi.co.jp/company
東レ・メディカル株式会社「エンドトキシンとは」
https://www.blood-purification.toray/medical-personnel/sepsis/endotoxin.html
生化学工業株式会社「エンドトキシンとは - LAL試薬」
https://www.lalbiz.com/endo/about/index.html
小西統合医療内科(大阪)「腸管のデトックス機能について【自己治癒力を高める医療】」
https://www.konishi-clinic.com/document/story7.html
いのうえ消化器内科クリニック「泉大津市|水溶性食物繊維をたくさん摂取したら?」
https://inotaku-clinic.jp/水溶性食物繊維をたくさん摂取したら?/
朝日新聞Reライフネット「腸内細菌が免疫機能を整える-「短鎖脂肪酸」の意外な役割」
https://www.asahi.com/relife/article/14375420
岡山大学(稲本拓歩氏)「腸内細菌が産生する短鎖脂肪酸が樹状細胞の突起伸長を誘導し、免疫応答を促進するメカニズムを解明!~「腸活」の普及や新たな疾患予防・治療に期待~」
https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id1135.html
