RO水とは?天然水との違い、RO水のメリットやデメリットを知ろう

みなさんは「RO水(あーるおーすい)」という水をご存知ですか?
純度の高さが特徴のRO水は、飲用や調理用、洗浄用など、さまざまな場面で使用されています。最近では、無料で提供しているスーパーやスポーツジムなどもあり、名前だけは知っているという方もおられることでしょう。
しかし、天然水との違いや製造方法、特徴(メリット・デメリット)などについては、まだまだ知らない人が多いようです。特に、RO水の長期飲用に対する懸念点について知っている人はさらに少ないかもしれません。
今回は、それらの懸念点の紹介も含め、RO水の基礎知識について解説をしていきます。
目次
RO水とは
RO水とは、「逆浸透」という浄水技術によって製造された水のことです。
「逆浸透(Reverse Osmosis)」の略称である「RO」が、名前の由来になっています[※1]。
名前だけをきくと、少しとっつきにくい印象があるかもしれませんが、実はふつうに市販されていて、一部のスーパーやスポーツジムなどでは、集客用に無料で提供しているところもあります。
RO水の製造方法である「逆浸透」という浄水技術は、高校時代に学んだ「浸透現象」と関係があります。浸透現象とは、水などの液体が、水分子だけを通す特別な膜(半透膜)を通って、溶質の濃度が低い方から高い方へ自然に移動し、全体の濃度を同じにしようとする動きのことです。
一方、逆浸透はその逆で、人工的に圧力をかけて、水分子を濃度の高い方から低い方へ無理やり移動させる技術です。この技術では「逆浸透膜[※2]」という膜が使用され、この膜に対して水を高圧で通すことで、水中に含まれているさまざまな不純物を取り除くことができます。その除去率は「95~99%」と非常に高く、細菌やウイルス、発ガン性物質、環境ホルモン、放射性物質など、水中の不純物(有害物質)をほぼ完全に取り除くことができると言われています。
RO水は、飲み水として使用されるほか、調理用、医療機器の洗浄用、工業用など、幅広く使われています。また最近では、家庭用の「逆浸透膜浄水器」も普及しており、一般家庭で手軽にRO水を飲むスタイルが広がりつつあるようです。とくに、水道水の品質に不安がある地域では、逆浸透膜浄水器は安心材料として導入されることが多く、「徹底的に不純物を除去したい」というニーズに応える浄水器として、注目を集めています。
※1. 「逆浸透水」や「逆浸透膜水」と呼ばれることもあります。また、厳密には異なりますが、類似の意味で「純水」や「ピュアウォーター」などと呼ばれることもあります。
※2. 「約0.0001ミクロン」の穴がたくさんあいている半透膜の性質をもった膜のこと。この膜を使用することで「分子レベル」のろ過が可能になります。
RO水と天然水の違い
水にこだわる人にとって、RO水と天然水の比較は気になるところです。
RO水と天然水の主な違いは、以下の通りです。
【RO水】[※1]
原水:主に水道水を使用
製造方法:圧力を使って、逆浸透膜でろ過する
成分:水中のミネラルや不純物は、ほぼ完全に除去される
味:クセや雑味がなく、スッキリとしている
満足感:のどごしが軽く、人によっては物足りなさを感じることがある。また、のどの渇きが癒されにくい[※2]
安全性:「不純物」から受ける悪影響は、極めて少ない(その他のデメリットや懸念点は後述します)
価格:浄水器のランニングコストはかかるが、水道水を原水に利用しているため比較的安い
【天然水】
原水:特定の水源(湧水・地下水・鉱泉など)から採取
製造方法:採水後に「沈殿・ろ過」などの処理を行い、場合によっては加熱殺菌が施される
成分:採水地の地層を通る過程で、自然に溶け込んだミネラル成分を含む
味:含まれるミネラルの量や種類によって、甘くまろやかに感じる場合や、苦く重たく感じる場合がある
満足感:RO水よりもコクがあり、飲みごたえがある。また、比較的のどの渇きが癒されやすい
安全性:原水の水質に依存するが、食品衛生法第13条に基づく規格基準によって、一定の安全性は確保されている
価格:採水地からの輸送コストや、在庫管理コストなどが付加されるため、比較的高め
※1. 「家庭用の逆浸透膜浄水器で作られたRO水」を比較対象にしています。
※2. RO水はナトリウムなどのミネラルの含有が非常に少ないため、体内での水分保持が弱く、のどの渇きが癒されにくいと言われています。
RO水のメリット
RO水は私たちの暮らしに、どのようなメリットをもたらしてくれるのでしょうか?
飲用水・生活用水に使用した場合の主なメリットは、以下の通りです。
飲用水としてのメリット
・RO水から不純物(有害物質)を摂取するリスクはかなり低い
・クセや雑味が、ほとんどない(ミネラルや不純物をほぼ含まないため)
・カルキ臭が、ほとんどしない(水道水中の残留塩素が除去されるため)
・乳児用ミルクの調乳に使いやすい[※]
生活用水としてのメリット
・電気ポットにスケールがつきにくい
・加湿器からホワイトダストが出にくい
・拭き掃除に使っても、水垢が残りにくい
・アクアリウム用の水を作る際、ベースの水として使いやすい(ミネラル調整がしやすい)
※. ただし、RO水をそのまま飲ませたり、RO水で希釈しすぎたミルクを過剰に飲ませると、低ナトリウム血症を引き起こすリスクがありますので、注意が必要です。
RO水のデメリット
RO水は、不純物をほとんど含まない「純度の高い水(きれいな水)」です。しかし、純度が高いということは、有害物質の含有が少ないだけでなく、有用なミネラルの含有も少ないことを意味しています。
つまり、RO水をたくさん飲んだとしても、ミネラルはほとんど摂取することができず、長期的には「ミネラル欠乏症」に繋がる可能性があると言われています。もちろん、ミネラルの摂取は水からだけではなく、食品からも摂取することができるため、適正な食事を摂っていればミネラル欠乏症に陥ることはありません。
しかし、近年の食生活はインスタント食品や精製食品など、ミネラルの含有が少ない食事メニューに偏りがちです。そのような食生活を送っている人たちにとって、水からのミネラル摂取が減少することは、とても大きな問題と言えるでしょう。
また、RO水を調理用に使う場合でも、調理方法によってはミネラルの欠乏を招くおそれがあります。例えばRO水を使って、野菜などの食材を茹でたり、湯がいたりした場合、RO水の溶解性[※1]によって、食材中のミネラルが水中に溶出しやすくなると言われています。そして、その水をシンクに捨てた場合、食事から得られるミネラルの総量が少なくなってしまうのです。
このように、RO水を長期的に飲み続けたり、特定の方法で調理をすると、ミネラルが欠乏してしまう可能性があるため、注意しなければいけません。
では、ミネラルが欠乏すると、どのようなデメリットが表れるのでしょうか?
一般的には「体の機能維持が難しくなる(頭痛・疲労・筋肉のけいれん・免疫力の低下など)」ということが知られていますが、実はそれだけではありません。
例えば、摂取した飲食物に有害金属が含まれている場合、その悪影響(毒性)を受けやすくなることも挙げられます。カルシウムやマグネシウムなどのミネラルには、「抗毒性(有害金属に対する拮抗・解毒作用)」という性質があり、この性質が体内での有害金属の吸収を抑えたり、作用を妨げたり、排出をサポートしています。しかし、ミネラルが欠乏すると、抗毒性の作用が得られなくなり、有害金属による悪影響を受けやすくなってしまうのです。
RO水はメリットの多い水ですが、それと同時に、大きなデメリット(ミネラル欠乏リスク)もはらんでいます。RO水を長期的に飲まれる場合には、適正な再ミネラル化処理[※2]を行った方がよいでしょう。
※1. 溶解性とは、水中に含まれているさまざまな成分を均一に溶かす性質のことで、水中の不純物が少なければ少ないほど、強く表れると言われています。
※2. 人工的にミネラルを添加する処理のこと。
指摘されている懸念点
RO水を長期飲用することについては、上記のデメリット以外にも、いくつかの健康上の懸念点(リスク要因となる可能性)が、専門家によって指摘されています。ただし、それらの指摘のすべてに、十分な科学的データがそろっているわけではなく、中には動物実験や疫学研究の結果が根拠として示されていることもあるようです。
このような背景もあってか、WHOはRO水の飲用に関して、ミネラル補給の必要性や、水質管理の重要性に言及しつつも、「推奨・非推奨」の判断については中立の立場をとっています。
専門家、RO水メーカー、WHOと、三者三様の考えがあるようですが、「必ずしも安全とは言い切れない」という懸念点が指摘されている以上、私たちはそれらを「参考情報」として知っておくべきではないでしょうか?そして、その参考情報を元にして、かかりつけ医からもアドバイスをもらい、総合的に判断をした方がよいでしょう。
以下のリストは、専門家が指摘している懸念点の一部です。
RO水(脱塩水[※1])を長期飲用した場合の懸念点
・恒常性維持機能[※2]への悪影響
・ミネラルと水分代謝への悪影響
・心血管疾患(高血圧、冠状動脈疾患など)
・子供の骨折
・特定の神経変性疾患
・一部のガン
・早産
・出生時低体重
・妊娠障害(妊娠中毒症)
・運動ニューロン疾患(ALSなど)
・胃潰瘍
・十二指腸潰瘍
・慢性胃炎
・甲状腺腫
・胃腸障害
・突然死
※1. 脱塩水(demineralised water)とは、海水や地下水、水道水などの原水から、塩類(カルシウムやマグネシウム、ナトリウムなどの無機イオン)を除去して得られる水の総称で、RO水(逆浸透水)もその一つに分類されます。
※2. 体内環境を一定の状態に保とうとするプロセスのこと。
まとめ
RO水は、毎日の暮らしや医療、そして震災時などにも使用される有用な水で、たくさんのメリットがあります。しかし、それと同時にデメリットや懸念点もあり、導入にあたっては、事前にそれらについて知っておいた方がよいでしょう。
近年は、水道水に含まれているPFASなどの有害物質が大きな問題となっており、水質にこだわる人は増えつつありますが、「不純物をほとんど含まない水 = 安全な水」と考えるのは、やや早計な判断なのかもしれません。メリットとデメリットと懸念点、この三つを念頭におき、医師のアドバイスも考慮した上で、ご自身やご家族に合った上手な使い方を見つけてみてはいかがでしょうか?
- 監修者のご紹介 -
参考文献
「RO浄水器ってどんなもの?」一般社団法人浄水器協会
http://www.jwpa.or.jp/ro/ro-junsui.html
WHO「Guidelines for drinking-water quality, 4th edition, incorporating the 1st addendum」
https://iris.who.int/bitstream/handle/10665/254637/9789241549950-eng.pdf?sequence=1
CDC「Hyponatremic Seizures Among Infants Fed with Commercial Bottled Drinking Water -- Wisconsin, 1993」
https://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/00032470.htm
PubMed Central「Demineralization of drinking water:Is it pruden?」
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4223198/
LENNTECH「Demineralized water FAQ Frequently Asked Questions」
https://www.lenntech.com/demi-water-faq.htm
LENNTECH「Demiwater and health」
https://www.lenntech.com/health-risks-demineralized-water.htm
Olympian Water Testing, LLC「Distilled Water is Good for Baby Formula?」
https://olympianwatertesting.com/distilled-water-is-good-for-baby-formula/
Redcliffe labs「Is RO Water Bad for Health? Here's what the water experts say about demineralized water」
https://redcliffelabs.com/myhealth/health/is-ro-water-bad-for-health-heres-what-the-water-experts-say-about-demineralized-water/
Svalbarði Polar Iceberg Water「Can You Drink Distilled Water Safely」
https://svalbardi.com/blogs/water/distilled-safety?utm_source=chatgpt.com
SuSanA「Frantisek Kozisek|HEALTH RISKS FROM DRINKING DEMINERALISED WATER」
https://www.susana.org/_resources/documents/default/3-4295-7-1620809677.pdf
Natural HegeHealth Problems caused due to low mineral water from RO:Gastric disorders」
https://naturalhege.com/blogs/blogs/health-problems-caused-due-to-low-mineral-water-from-ro-gastric-disorders
株式会社三原「逆浸透膜(R/O)とは?」
http://www.mihara-gr.co.jp/ro/
東京都水道局「ミネラルウォーター類-水質に関するトピック-」
https://www.waterworks.metro.tokyo.lg.jp/suigen/topic/12
五つ星ひょうご「非加熱 但馬天然水」
https://www.5stars-hyogo.com/products/722/
株式会社ダイオーズ「ピュアウォーター(RO水)は体に悪い?原因や利用のメリットを解説」
https://www.daiohs.co.jp/water/article/archives/2505/
株式会社ダイオーズ「RO水(ピュアウォーター)とは?メリット、デメリットも紹介」
https://www.daiohs.co.jp/water/article/archives/2426/
大正製薬「ナトリウムとは?必須ミネラルの1つで、体の水分量やミネラルバランスの調整役」
https://www.taisho-kenko.com/special/vitamin-mineral/sodium/
書籍「体をつくる水、壊す水」藤田紘一郎 著
書籍「浄水器かしこい選び方・使い方」池裕次郎 著
