ヘルスリテラシーを高めよう(後編) | 水と健康の情報メディア|トリム・ミズラボ - 日本トリム

ヘルスリテラシーを高めよう(後編)

専門家や医者の情報は信用できる?

専門家の情報は、一般の人たちが発信する情報よりも比較的信頼性が高いと言えます。ただし、あくまでも「比較的」です。極端な話、専門家の中には「自称専門家」も含まれている場合がありますし、経歴や経験の浅い専門家も含まれている場合があるため、必ずしも信頼性の高い情報が保証されているわけではありません。

医者の場合、「自称」でクリニックを開くことはできませんが、これまで治療(診断)をしてきた病気の種類などによっても、ものの見方や重視するものが異なってくるとも言われています。近年では、よく「セカンドオピニオン(第二の意見)」や「サードオピニオン(第三の意見)」といった言葉が医療分野で聞かれます。これらは、患者が一人の医者の意見だけを参考にして治療に臨むのではなく、二人または三人の医者から意見をきいて、それらの意見を比較・検討した上で治療に臨むことを意味している言葉です。つまり、一人の医者だけでは、提供される情報に不足や偏りがあること示唆しているわけです。

また、「西洋医学」と「東洋医学」の違いによっても見解が異なることがあります。投薬や手術など、体の悪い部分に直接アプローチして治療する西洋医学に対し、東洋医学では体の不調を引き起こしている根本的な原因を探り、それに対してアプローチをする治療を行います。処方する薬も違えば、そもそも病気として取り扱うかどうかという見方も違う場合があります。どちらの医学(医者)が正しいのか、あるいは間違っているのか、という話ではありませんが、西洋医学で改善しなかった病気が、東洋医学によって改善したりすることもあるわけです(その逆もあります)。イメージだけで、どちらか一方だけを妄信していると、本来なら改善できていた病気を長いあいだ患ってしまう可能性があります。

さらに、こういった「ものの見方」の違いは、西洋医学の中だけでも起こりえます。例えば「ガン」という病気に対しては、外科医と病理医、画像診断医では捉え方が異なります。

・外科医 ── 病気として捉える
・病理医 ── 細胞の塊として捉える
・画像診断医 ── 構造物として捉える

専門家や医者の多くは信用に値するプロフェッショナルではありますが、ものの見方に偏りが生じる場合があることは知っておいた方がよいでしょう。

行政機関やマスメディアの情報は信用できる?

行政機関が発信している情報の信頼性は、かなり高いと言えます。ただし「絶対に信用できる情報」というわけではありません。可能性は低いですが、誤った情報をなんらかの手違いによって発信してしまう可能性もあります。また、日本の行政機関から発信されている情報が、必ずしも最先端の情報であるとは限りません。場合によっては、海外の研究機関などから発信された情報の方が、最先端かつ詳細であることもあります(水質汚染物質PFASに関する研究など)。さらに言えば、外部からの圧力によって情報が制限されていたり、変更されている可能性も「完全にない」とは言いきれないのが現状です(新型コロナ感染者数の改ざん疑惑など)。

TV番組や新聞から発信された情報も、信頼性は比較的高いですが、やはり「絶対に信用できる情報」というわけではありません。たとえば、各新聞社は一つの物事(事件や出来事)に対して捉え方が微妙に異なり、発信される情報のニュアンスには違いが生じることもあります。また、TV局についてはスポンサーや国などから圧力を受けやすい立場にあるため、放送法第4条[※]などの規定はあるものの、すべての事実(真実)が、ありのままに報道されているとは言いにくいのが現状です(反原発デモの無報道やワクチン死の捏造疑惑など)。

このような話題において、しばしば取りあげられるのが「偏向報道」や「情報統制」という言葉です。これらの言葉を聞いたとき、多くの人は中国国民の境遇を連想し、哀れみの感情を抱きがちですが、実はわが国日本でも情報統制は行われていると言われています。国際NGO「国境なき記者団」の調査によれば、2023年「日本の報道の自由度」は、世界で68位(昨年は71位)で、主要7カ国の中では、なんと最下位です。私たちはこういった現況を踏まえた上で、情報と向き合っていく必要があるわけです。

※. 放送法(第4条)・・・放送の公平性や公正性などが規定されている

簡単に誤情報を信じてしまうのはナゼ?

誤情報には、それを信じたくなるような「心理的な仕掛け」が施されていることもあります。もちろん、そのような仕掛けがすべての情報に施されているわけではありませんが、この仕掛けのことを知っておくことで、より適切な判断ができるようになるでしょう。

バーナム効果

例えば、占い師から言われた「誰にでも当てはまるようなこと」を、さも「自分のことだ」と思いこむことを「バーナム効果」と言います。占いを妄信している人は、これによって、さらにその占い結果を信じてしまうわけです。エセ占い師がよく用いる手法ですが、特に悪い意図がない情報に対しても「私のことだ」と思った時には、このバーナム効果を疑ってみる必要があるでしょう。

ウィンザー効果

口コミやレビューなど、第三者からの情報に対して信じやすくなってしまうことを「ウィンザー効果」と言います。マーケティング分野では、この効果が消費者の購買行動に大きな影響を与えることが知られており、ショッピングサイトなどのレビューもその役割を果たしています。有益な口コミやレビューがある一方で、営利目的のサクラ(やらせ)情報も紛れていることがあります。また、一時期「新型コロナウィルスは26度のお湯で死滅する、と武漢研究所に勤める友人から聞いた」といった、ウィンザー効果のあるフェイク情報によって、人々の行動が変容させられたケースもあったため、注意しなければいけません。

ハロー効果

権威性など、あるものが持つ強い性質によって評価が歪められる効果を「ハロー効果」と言います。「●●賞を受賞した商品」、「●●大会で1位に輝きました」、「●●大学教授のおすみつき」といったフレーズなどが、それにあたります。これらのフレーズは、商品やサービスを正しく訴求する際にも用いられますので一概に悪いとは言えませんが、中には「●●」の部分(賞の名前、大会の名前、大学の名前など)が、その情報の信頼性を証明するほどの確かな裏付けとなっていないこともあります。情報の受け取り手が、それらの賞や大会について、よく知らない場合「何かよく分からないけど、なんとなくスゴそう」という誤認が生じ、明確な根拠のないままに信じることがあります。

エコーチャンバー現象

SNSなどの閉鎖空間内で、同質(自分の考えと似た)のコミュニケーションが繰り返されることによって、自分の考えが異常に強化されてしまう現象のことを「エコーチャンバー現象」と言います。

近年では、強力なアルゴリズムを持ったSNSアプリ(TikTokなど)がいくつも誕生していますが、これらもユーザーに対して、特定の情報を連続的に発信する仕組みがあり、エコーチャンバー現象を生み出す要因の一つとなっています。また、オンラインサロンやグループチャットなども、場合によっては、この効果の影響を受ける可能性があるでしょう。自分と同質の考えを持っている人の数は、実際はそれほど多くなくても、本人からすると「周りの人はみんなそう思っている」と勘違いする点が、非常に危惧されています。

情報を正しく評価・活用する為に

結局のところ、他人から発信された情報というのは、いろいろな思惑が含まれていたり、間違っていたり、古くなっていることもあるため、すべてをそのまま信じることはできません。これは「正しい情報は、ほとんど存在しない」という意味ではなく、その情報に対して「100%正しい」と言い切れるだけの要素が、完全に揃っているわけではないということを意味しています。

たとえば、ある医者が「●●した方がよい」という病気の診断を行ったとします。それに対してセカンドオピニオンやサードオピニオンを行い、3人の医者がまったく同じ診断を下したとしても、実際にはフォースオピニオン、つまり4人目の医者が正しい診断を下す場合も可能性としてはあるわけです。

私たちにできることは、リスク(誤った情報を受け取ったり、それによって被害を受けること)を受ける可能性をできるだけ小さくすることと、その極限まで小さくなったリスクを受容すること、つまり「腹決め」することにあると言えるかもしれません。

リスクを小さくする方法や、腹決めをしやすくする方法については、以下のようなことが挙げられます。

【リスクを小さくする方法】
・情報発信者が誰かを調べる
・反対派(反対の立場)の意見がないか調べる
・情報ソースを実際に読む
・心理的な仕掛け(トリック)が施されてないかを確認する
・広告目的によって歪められた情報になっていないかを確認する
・最新の情報であるかを確認する など

【腹決めをしやすくする方法】
・情報を網羅的に集める(選択肢を増やす)
・集めた情報の長所と短所を比較する
・自分の体質や環境、状況、価値観にマッチした情報かを確認する
・仮説設定を行う(意思決定後の自分を想像する) など

こういった多面的な捉え方によって、冷静かつ客観的に情報を判断(意思決定)することを、論理学や心理学などでは「クリティカルシンキング」といいます。クリティカルシンキングは、日本語では「批判的思考」と訳されるため、ネガティブ(反論、反対)のイメージで捉えられることもありますが、真意としては、あらゆる情報に対して「正しく恐れ」、「正しく疑う」ことにあります。

さまざまな情報、特に「命」に係わる情報に対しては、私たちは徹底的にクリティカルシンキングを行い、リスクを極限まで小さくする必要があるでしょう。そのクリティカルシンキングを入念に行えば行うほど、最終的な「腹決め(決断)」は容易になるはずです。

さいごに

情報の発信者が間違った情報を発信することは、当然ながら良いことではありません。場合によっては、社会的な責任を追及されることもあります。しかし、その情報を検証(確認)もせず、鵜呑みにしてしまう受け手側(受信者側)にも責任はあるのではないでしょうか。

これからの時代は、AIやテクノロジーの進化も相まって、私たちはよりたくさんの情報にさらされることが予想されます。そのような時代の中、私たち一人ひとりが、情報に対して「どのように判断」し、「どのように活用」していくかが、より一層問われることになるでしょう。

ヘルスリテラシーは、皆さんの幸せを築く「資産」であり、命を守る「武器」でもあります。ぜひ一度、お子様やご両親など、大切な人と一緒に「ヘルスリテラシー」について話し合ってみてはいかがでしょうか。


参考文献

朝日新聞デジタル「接種せず感染した人数を多めに公表 厚労省と官房長官、説明に矛盾も」

https://www.asahi.com/articles/ASQ664JT1Q65UTFL005.html

日本マスコミ文化情報労組会議「報道関係者への「報道の危機」アンケート結果(概要)について」

https://toyokeizai.net/sp/vfiles/2020/04/pressenquete.pdf

日刊工業新聞 電子版「「最近のテレビは偏向報道が増えている」が 67.8%」

https://www.nikkan.co.jp/releases/view/19085

東大新聞オンライン「なぜ官邸デモは報じられなかったのか?『首相官邸の前で』社会学者小熊英二さん」

https://www.todaishimbun.org/oguma0902/

デイリー新潮「「バカにすんのもええ加減にせえよ」 NHK「ニュースウオッチ9」の“捏造”疑惑にコロナワクチン被害者遺族が怒りの告発」

https://www.dailyshincho.jp/article/2023/05241141/?all=1

朝日新聞デジタル「「報道の自由度」日本は68位、G7で最下位 中国がワースト2位に」

https://www.asahi.com/articles/ASR53566JR53UHBI00W.html

e-GOV法令検索「放送法(昭和二十五年法律第百三十二号)」

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=325AC0000000132_20230602_505AC0000000040&keyword=放送法

書籍「健康情報は8割疑え!」中山健夫 著

書籍「池上彰のメディア・リテラシー入門」池上彰 著

書籍「自身を守り家族を守る医療リテラシー読本」松村むつみ 著