ウォーキングダイエットで重要なポイントは?効果が出るまでの期間や、メリット・デメリットも解説
ダイエットを行うにあたり、運動は欠かすことができない大切な要素の一つです。しかし、ただやみくもにハードな運動を行っても長続きせず、場合によっては体を壊しかねません。
ダイエット初心者が最初に行う運動としては、無理なく気軽に続けられる「ウォーキング」がおすすめです。まずは、ウォーキングで基礎体力をつけ、脂肪が燃焼しやすい体を目指しましょう。
今回は、ウォーキングダイエットの基礎知識について解説します。
目次
ウォーキングでのダイエット効果

ウォーキングがダイエットに効果的な理由は、単に歩くことでカロリーを消費するだけではありません。継続的な有酸素運動により、脂肪燃焼、基礎代謝の向上、血糖値の安定、食欲調整といった複数の生理的メカニズムが同時に働きます。
それぞれのダイエット効果について、詳しく見ていきましょう。
脂肪燃焼
ウォーキングは代表的な有酸素運動で、体脂肪を効率的に燃焼させます。
歩き始めから糖と脂肪の両方が使われますが、運動を続けるにつれて脂肪の利用割合が高まり、継続することで内臓脂肪や皮下脂肪の減少が期待できます。特に中強度での歩行は脂肪燃焼に適しており、長時間継続しやすい点も大きなメリットです。
基礎代謝の向上
定期的なウォーキングは筋肉量の維持・増加につながり、基礎代謝の向上をもたらします。
特に下半身の大きな筋肉群が鍛えられることで、安静時のエネルギー消費量が増加します。基礎代謝が上がると、日常生活でも多くのカロリーを消費できる体質へと変化し、リバウンドしにくい体づくりが実現できます。
血糖値の安定
ウォーキングは血糖値の安定化にも貢献します。
食後にウォーキングを行うと、筋肉がブドウ糖を積極的に取り込み、血糖値の上昇を抑えます。その結果、インスリンの過剰分泌が抑えられ、ブドウ糖が中性脂肪として蓄積されにくくなるのです。ウォーキングは糖尿病予防にも役立つため、ダイエットと健康の両面で効果が期待できます。
食欲の調整
適度なウォーキングは、食欲を自然に調整する効果があります。
ウォーキングを行うことで、食欲増進ホルモン(グレリン)の分泌が減り、食欲抑制ホルモン(ペプチドYY)の分泌が増えるため、過食を防ぎやすくなります。また、ウォーキングにはストレス発散効果もあるため、ストレス性の過食も抑えることができるでしょう。
ウォーキングによる消費カロリー
どれくらいウォーキングを行うと、どれくらいのカロリーが消費されるのか、これを把握しておくことは、ダイエットを成功させる上でとても重要です。消費カロリーは体重や歩行速度によって変わるため、それらを考慮した計算方法を理解する必要があります。
ここでは、運動強度「METs」と消費カロリーの計算方法について解説します。
運動強度METsとは
「METs(メッツ)」とは、運動強度を表す国際的な単位で、安静時を「1」とした場合、運動がその何倍のエネルギーを消費するかを示す指標です。例えば、普通の歩行は「3.0METs」、やや速い歩行は「4.3METs」とされています。この数値が高いほど運動強度が高いことを意味し、より多くのカロリーを消費することができるのです。
METsを理解することで、自分の運動レベルを客観的に把握し、適切な強度でウォーキングを行うことができるようになります。
消費カロリーの計算方法
消費カロリーは次の式で概算できます。
消費カロリー(kcal)=「METs×体重(kg)×時間(h)×1.05」
例えば、体重70kgの人がやや速い歩行(4.3METs)を1時間行うと、「4.3×70×1×1.05=約316kcal」となります。普通の歩行(3.0METs)なら約221kcalです。
体脂肪1kgはおよそ7,000kcalに相当するとされており、仮に1日100kcalの消費増を続ければ、計算上は1ヵ月で約0.4kg、半年で約2.6kg、1年で約5.0kgの減量が期待できます。これは体重70kgの人であれば、やや速い歩行で約19分、普通の歩行で約27分を毎日続けることに相当します。
実際の効果には個人差がありますが、無理のない減量を目指す上での目安として活用できるでしょう。
ウォーキングのメリット4選
ウォーキングにはさまざまなメリットがあり、例えば次のようなものが挙げられます。
・手軽に始められる
・ケガのリスクが低い
・社交性がある
・脳を成長させる
それぞれのメリットについて、見ていきましょう。
手軽に始められる
ウォーキングの大きな魅力の一つは、誰でも手軽に始められることです。ジムに通う場合や、特別な器具を使う運動では、会費や器具の購入費などが必要ですが、ウォーキングならそれらの費用を工面する必要はありません。必要なのは、歩きやすい靴と動きやすい服装といった、すでに日常生活で使っているものだけです。
経済的な負担がほとんどなく、誰でも気軽に取り組むことができるでしょう。
ケガのリスクが低い
ウォーキングは低衝撃運動のため、関節や筋肉への負担が少なく、ケガのリスクが低いです。ランニングに比べて膝への衝撃が軽減され、より安全に取り組むことができます。また、急激な心拍数の上昇もないため、心臓への負担もそれほど大きくありません。
これから運動を始めようとしている方や、高齢者の方にも適していますが、すでに関節に問題がある方や、持病のある方は、事前に医師に相談してから始めると安心です。
社交性がある
ウォーキングは一人でもできますが、家族や友人と一緒に行うことで、社交的な要素が加わります。身近な人が一緒にウォーキングできない場合は、サークルなどに参加することで、同じ目標を持つ仲間と出会え、モチベーション維持にも繋がるでしょう。
また、ウォーキングの最中に積極的に会話を心掛けることで、コミュニケーション能力の向上や、新たな情報へのアクセスが期待できます。さらに、楽しい話題であればストレス発散になり、うつ病予防にも役立ちます。
脳を成長させる
ウォーキングをはじめとする有酸素運動は、脳に良い影響を与えると言われています。65歳以上を対象に週3回、1日40分のウォーキングを半年続けた研究では、脳の厚みが増し、さらに1年間の早歩きで海馬が約2%拡大したという報告もあります。つまり、本来は加齢とともに縮小する海馬を、逆に成長させる可能性が示されたのです。
また、歩きながら計算や言葉遊びをするデュアルタスクでは、認知機能低下の予防に役立つと期待されています。
ウォーキングのデメリット4選
様々なメリットがあるウォーキングですが、以下のようなデメリットもあります。
・即効性が低い
・単調で飽きやすい
・効果の頭打ちになりやすい
・環境要因に影響を受けやすい
それぞれのデメリットについて、見ていきましょう。
即効性が低い
ウォーキングの大きなデメリットとして、即効性の低さが挙げられます。
ウォーキングは運動強度が穏やかで、消費カロリーも比較的少ないため、短期間では大きな変化を実感しにくいのです。明らかな体重の減少を実感するには、最低でも1〜2ヵ月の継続が必要でしょう。
ウォーキングのフォームを工夫して、インナーマッスルを意識すれば、通常よりも高い効果が期待できますが、それでも劇的に即効性が高まるわけではなく、基本的には長期的な取り組みが必要となります。
単調で飽きやすい
ウォーキングは歩くという単一動作の繰り返しであり、技術的な変化や強度の変動が少ないため、慣れると単調さを感じやすくなります。特に同じコースを継続的に歩く場合、刺激不足で新鮮味が失われ、モチベーション低下につながる傾向もあります。
この課題を解決するには、複数のコースをローテーションで利用する、音楽やポッドキャストを聴く、友人と一緒に歩く、風景を撮影するなどの工夫を取り入れることが効果的です。
効果の頭打ちになりやすい
ウォーキングは基礎代謝や体力を高め、継続すれば健康的なダイエットに役立ちます。
しかし、体重が減ると負荷も軽くなるため、同じ運動でも消費エネルギーは少なくなります。また、ウォーキングを続けると歩行動作が効率化して無駄な力を使わなくなるため、その点においても効果は停滞しやすくなるでしょう。これらの要因が重なると、努力量に比して成果を実感しにくくなり、人によっては継続意欲を失ってしまうことがあります。
環境要因に影響を受けやすい
屋外でウォーキングを行う場合、様々な環境要因から直接影響を受ける可能性があります。例えば、雨や雪の日は外出困難となり、猛暑日や厳寒期は熱中症や低体温症などの健康リスクが高まります。また、春先は花粉がアレルギー症状を悪化させ、都市部では排気ガスなどが呼吸器に負担をかけ、息苦しさを感じることもあるでしょう。
これらのリスクを避けるには、スポーツジムや自宅でのトレッドミルの活用、ショッピングモールなどの屋内コースがあると安心です。
ウォーキングダイエットで重要なポイント4選

ウォーキングダイエットを成功させるには、押さえるべき重要なポイントがあります。以下のことを意識することで、効果や継続性が保たれ、ダイエットの成功率が高まるでしょう。
適切な歩行時間を守る
ダイエット効果を得るには、最低でも1回20分以上の歩行が必要です。
脂肪燃焼が本格化するのは運動開始から約20分後のため、これより短いと十分な効果が期待できません。理想は30〜60分程度ですが、初心者は20分から始め、徐々に延長するとよいでしょう。無理をせず、体調に合わせて時間を調整することが継続の秘訣です。
正しい歩行フォームを身につける
背筋を伸ばした状態で、足元の障害物に注意を払いつつ、視線を15メートルほど前方に向けましょう。そしてヒジを軽く曲げた状態で腕を大きく振り、かかとから着地してつま先で蹴り出します。歩幅は普段よりも少し大きめに取ると、消費カロリーが上がりやすくなります。
シューズを正しく選ぶ
シューズ選びでは、つま先部分に1cmほどの余裕、自然に曲がる柔らかさ、十分なクッション性があるものを選びましょう。また、試着は夕方に行うと、足のむくみに対応したサイズ選びができます。
使用後にソールの溝がなくなったり、かかとの外側だけが極端にすり減っている状態になったら、ケガ予防のために買い替えを検討してください。
目標設定を明確にする
具体的で達成可能な目標を立てることが、モチベーション維持の鍵になります。「月に1kg減量」や「1日8000歩」など、数値化された目標が理想的です。
大きな目標を立てる場合は、小さなステップに分けて一つずつ達成感を積み重ねることで、長期的に継続しやすくなり、ダイエットの成功率も高まります。
ウォーキング時の水分補給

ウォーキングは汗をかきやすく、水分やミネラルが失われやすい運動です。無理なく続けるためには適切な水分補給が欠かせませんが、補給する水分の種類や量、タイミングなどを意識している人は、意外と少ないのかもしれません。
ここでは、ウォーキング時に押さえておきたい水分補給のポイントとして、以下の4つを解説します。
・適切な飲み物
・ウォーキング前の水分補給
・ウォーキング中の水分補給
・ウォーキング後の水分補給
それぞれについて、見ていきましょう。
適切な飲み物
炎天下や長時間のウォーキングでは、電解質補給に優れたスポーツドリンクがよいでしょう。軽い運動や涼しい季節であれば、水や、ノンカフェインでミネラルを少量含む麦茶などがおすすめです。健康志向の方は、胃腸のケアもかねて「電解水素水」を飲むのもよいでしょう。
ウォーキング前の水分補給
季節を問わず、ウォーキング前の水分補給はしっかりと行いましょう。飲むタイミングは、体の水分吸収スピードを考慮して、ウォーキング開始の30分ほど前が推奨されています。飲む量は250~500mLほどを目安にして、少しずつゆっくり飲みましょう。
ウォーキング中の水分補給
ウォーキング中も、こまめな水分補給が大切です。1時間に3~4回、1回あたり200~300mLほどが目安です(喉が渇いていなくても)。ペットボトルや水筒を持ち歩くのが面倒な場合は、ハイドレーションベストを使うと便利です。
ウォーキング後の水分補給
長時間のウォーキングをすると、体は発汗や呼気によって水分が失われ、その分だけ体重が減少します。ウォーキング後の水分補給では、体重減少分の1.25~1.5倍の水分を補給するとよいでしょう。喉が渇いていると一気飲みをしがちですが、胃に負担が掛からないように、なるべく一口ずつゆっくりと飲むようにしてください。
さいごに

今回の記事のまとめは、以下のとおりです。
・ウォーキングダイエットは、ダイエット効果を含むメリットがある一方でデメリットもある
・消費カロリーの計算方法を知っておくと、達成感を得やすく継続しやすい
・単に歩くのではなく、正しいフォームや歩行時間などのポイントを押さえて歩くことが大切
・安全で安定的なウォーキングを続けるためには、適切な水分補給を行うことが重要
ウォーキングを生活に取り入れ、着実にダイエットを進めていきましょう。
- 監修者のご紹介 -
参考文献
松井整形外科(安城市)『ダイエットにおけるウォーキングの効果』メリットとデメリットの双方から解説
https://matsuiseikei.ansyokai.or.jp/news/p2311/
糖尿病ネットワーク「ウォーキングで食欲を抑える 運動後に食べ過ぎないための6つの方法」
https://dm-net.co.jp/calendar/2016/025466.php
株式会社デサント「ULLR MAG.|ウォーキングを始めよう!ダイエット効果や消費カロリー、歩く際のポイントを解説」
https://www.descente.co.jp/media/sports/walking/
厚生労働省「健康づくり(2025年2月号|№562)」
https://www.health-net.or.jp/syuppan/kenkozukuri/saishin_pdf/kenkozukuri202502.pdf
株式会社SHARE「smartway|【体重別消費カロリー早見表付】歩くスピードで消費カロリーが変わる?!ウォーキングの消費カロリー計算方法」
https://www.smartway.co.jp/column/colum/takemura25
BOOKSTAND「NHKテキストビュー|有酸素運動で脳を成長させる 」
https://bookstand.webdoku.jp/news/textview/2015/03/22/080013.html?utm_source=chatgpt.com
PMC(PubMed Central)「Kirk I Erickson et al.|Exercise training increases size of hippocampus and improves memory」
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3041121
秋田県スポーツ科学センター「スポーツコラム|スポーツ選手の水分補給」
https://common3.pref.akita.lg.jp/aiss/science/column5.pdf