水太りとは？原因と解消方法、水太りしやすい人の特徴について

私たちの体の約60％は水分でできており、水は生命を支える上で欠かすことのできない重要な物質と言えます。また、ダイエットやデトックスを行う際にも、意識して水分をとることが一般的に推奨されています。

しかし、その一方で「水を飲み過ぎると太る」と言われることがあります。このことは、一時的な腹部の膨満（満腹状態）を指しているわけではなさそうです。水はカロリーがないにもかかわらず、なぜ飲み過ぎると太ると言われるのでしょうか？

今回は、水分摂取の弊害の一つ「水太り」について解説をしていきます。

水太りとは？

水太りとは、余分な水分が体内に蓄積されている状態を指します。余分な水分が蓄積されることで体重が増加し、全身（特に下半身）が膨れたような状態になります。

また、余分な水分が体内に残留し続けると、漢方でいうところの「水毒」状態となり、下記のような病気や症状が現れやすくなると言われています。

・糖尿病、脂質異常症
・高血圧
・肝炎、黄疸（おうだん）、胆石
・動悸、息切れ、頻脈、不整脈
・異型狭心症
・胃下垂、胸やけ
・リウマチ
・めまい、メニエール症候群
・自律神経失調症、更年期障害、不定愁訴
・近視、緑内障、涙のう炎、結膜炎
・むくみ
・水腫
・腎炎、ネフローゼ、腎盂炎、ぼうこう炎
・頻尿、乏尿
・神経質、不眠、ノイローゼ、うつ
・てんかん
・アレルギー、アトピー、帯状疱疹（たいじょうほうしん）
・水虫
・がん、膠原病（こうげんびょう）など

水太りになりやすい人の特徴

 「水太りになりやすい人の特徴」として、以下のようなものが挙げられます。
ご自身の体質や病気、生活習慣と照らし合わせてみて、当てはまる項目がないか確認してみましょう。

【体質】
・冷え性
・低代謝
・筋肉量が少ない
・自律神経が乱れやすい

【病気】
・腎臓障害
・循環器系障害
・肝臓障害

【生活習慣】
・運動習慣がない（座りっぱなしなど）
・水分の過剰摂取
・水分の過少摂取（不足）
・睡眠不足
・塩分の過剰摂取（加工食品の摂り過ぎなど）
・カリウムの不足（果物、海藻、きのこなどの摂取量の不足）

水太りの主な原因と悪化要因

水太りは様々な原因によって引き起こされますが、一般的には生活習慣の乱れからくる「水分代謝の低下」が原因で起こると言われています。そして、その状態で水分を過剰に摂り過ぎると、体内に水分が滞留し、水分代謝の低下がさらに進行することになります。

「水分代謝の低下」と「水分の過剰摂取」、この二つの関係性について、みていきましょう。

水分代謝の低下

水分代謝とは、体内で水分が吸収･循環･排出される一連の流れを指します。

通常、口から摂った水分は胃や小腸で吸収され、血液に取り込まれて全身をめぐります。その後、血液中の水分は毛細血管から染み出して細胞外液となり、さらに細胞内へ移動して代謝に利用されます。ところが、この吸収や移動の過程には「熱エネルギー」が必要です。体が冷えている状態では、その熱が不足するため、水分の移動が滞り、細胞外液の段階で水分が停滞してしまうのです。この細胞外液に水分が過剰に滞留している状態が、水太りなのです。

水分の過剰摂取

水分摂取そのものは、本来であれば水太りの原因にはなりません。むしろ、体内の循環を保つうえで欠かせない行為です。

しかし、水分代謝が低下した状態では、余分な水分がうまく排出されず、かえって体内に滞留してしまいます。そして、体内の水分量が十分あるにもかかわらず、細胞内に水分が行き渡っていないと、脳は「潤っていない」と錯覚し、のどの渇きを覚えます。その結果、さらに水分を摂るようになり、冷えが助長され、水太りが悪化するという悪循環に陥ることがあるのです。

水太りの解消方法

水分代謝の低下によって水太りが起きている場合、血流をよくして体を温め、水分摂取量を適量にすることが重要です。そうすることで、水分がしっかりと細胞内に届くようになり、種々の代謝を終えたあと、汗や尿などによって体外にきちんと排出されるようになります。

具体的な改善方法は、以下の通りです。

運動

運動をすることで、蓄積された水分の排出を促進させることができます。

その理由は、以下の通りです。

①運動によって筋肉細胞などが活性化してくると、基礎代謝がよくなり体温が上がる
②運動によって全身の血行が良くなると、腎臓の血流もよくなり排尿量が増える
③運動時の発汗によって水分が排出される
④筋肉細胞の活動には水分を要するため、筋肉を動かすことで水分が消費される
⑤運動による呼吸数の増加で、呼気から排出される水分（水蒸気）の総量が増える

全身の筋肉の60～70％は下半身にあると言われていますので、効率的に筋肉を刺激するような運動をしたい場合には「スクワット」がおすすめです。強度が高過ぎると思われる方は「ウォーキング」でも構いません。

とにかく、上半身よりも下半身を重点的に鍛えることを意識すると良いでしょう。

入浴

入浴は温熱による血管拡張作用で血行が促進されるため、内臓や筋肉への酸素や栄養の供給が増加します。その結果、腎臓や肺からの水分および老廃物の排出が促進され、水太りの改善が期待できます。

また、水圧で下半身が圧迫されることによって、下半身にある血液が心臓に戻りやすくなることも入浴のメリットとして挙げられます。血液が心臓にたくさん戻ってくると血液循環が改善され、全身の細胞への酸素や栄養の供給が増加します。その結果、腎臓の血流も改善され、尿による水分排出も増えることになるのです。

下半身を効果的に温める方法としては「半身浴」や「足浴」がオススメですが、上半身が寒く感じられる場合には、全身浴である程度温まってから行っても良いでしょう。     

漢方薬

水太りを含む「水毒状態」を改善する代表的な漢方薬と言えば、「五苓散（ごれいさん）」が挙げられます。

五苓散は、次の5つの生薬で作られる漢方薬です。

①朮（じゅつ）：オケラ＝キク科の根茎・・・利尿作用
②茯苓（ぶくりょう）：マツホド＝サルノコシカケ科の菌核・・・利尿作用、強心作用
③猪苓（ちょれい）：チョレイマイタケの菌核・・・利尿作用、止渇作用
④沢瀉（たくしゃ）：サジオモダカの根茎・・・利尿作用、止渇作用
⑤桂皮（けいひ）：クスノキの樹皮・・・血行促進作用

また、上記のうち①～④の生薬には、細胞外液を細胞内に送り込む作用もあると言われています。

五苓散のほかには「苓桂朮甘湯（りょうけいじゅつかんとう）」や「防已黄耆湯（ぼういおうぎとう）」といった漢方薬も、水毒状態に対して効果があると言われています。

いずれもドラッグストアなどで簡単に購入することができますが、体質や薬の飲み合わせなどの心配もありますので、服用前には必ず担当医に相談しましょう。

食べ物

漢方医学では、「体を温める食べ物（陽性の食べ物）」と「体を冷やす食べ物（陰性の食べ物）」という基本理念があり、それらを判断する際には以下のような基準が用いられています。

①冷色（青、白、緑など）を持つ食べ物は、体を冷やす
②暖色（赤、黒、橙、黄など）を持つ食べ物は、体を温める
③北方産または冬季にとれる食べ物は、体を温める
④南方産または夏季にとれる食べ物は、体を冷やす
⑤硬い食べ物は、体を温める
⑥柔らかい食べ物は、体を冷やす　など

①②に関しては、レタスや白菜などを食べるより、ゴボウやニンジンなどの色の濃い食べ物を食べた方が良い（体を冷やさない）ということを意味しています。

③④に関しては、スイカやキュウリ、パイナップルなどを食べるより、リンゴやサクランボ、プルーンなどを食べた方が良いということを意味しています。

⑤⑥に関しては、柔らかい肉の脂身や葉菜類などを食べるより、硬い赤身の肉や根菜類などを食べた方が良いということを意味しています。

これらの判断基準や具体的な食べ物を知りたい場合には、石原結實先生（医学博士）の著書『「水分の摂りすぎ」は今すぐやめなさい』で詳しく紹介されていますので、そちらをご覧になることをおすすめします。

飲み物

水分摂取の際には過剰摂取を避けることも大切ですが、体を冷やさないようにすることも大切です。特に夏の暑い日や、冬の暖房が効いた温かい（乾燥した）室内では、冷たい水をゴクゴクと一気に飲み干したくなりますが、そういう時こそ飲み物や飲み方には気を付けなければいけません。

この場合であれば、飲み物を温かい白湯（さゆ）に替えて喉の潤い加減を確認しながら、少しずつ飲むと良いでしょう。白湯なら体を極端に冷やすことはありませんし、飲み過ぎ防止にもなります。

白湯が味気ないと感じるのであれば、温かい紅茶や生姜湯などを飲んでも良いでしょう。紅茶には利尿を促進するカフェインやテアニンが含まれていますし、生姜湯には体を温めてくれるショウガオールが含まれています。

むやみに水の摂取量を減らすのは良くない

水分代謝が低下している状態では、水分の過剰摂取は水太りの悪化要因になるため、避けた方がよいでしょう。

しかし、水分摂取自体が水太りの原因になるわけではありません。水分摂取は体内の循環を支える習慣で、健康な代謝状態においては、むしろ必要不可欠と言えます。「水太り ＝ 水で太る」という短絡的な解釈をして、むやみに摂取量を減らすのは良くありません。

では、水太りに陥っている状態で、水分はどれくらい摂ればよいのでしょうか？正確な水分摂取量は、原因や水分代謝の低下具合によって異なるため、医師の診断が必要です。

ここでは、目安として「健康な状態での一日の水分摂取量」についてご紹介します。また、水分摂取に適した飲み物についても、あわせてご紹介していきます。

健康を維持するために一日にどれくらい水分を摂取したらいい？

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準（2020年版）」によると、以下のように報告されています。

上記の水分必要量は、「飲み物からの水分」だけでなく、「食べ物からの水分」も含んだ総水分必要量です。
この総水分必要量に関しては、「健康のために水を飲もう」推進委員会が、以下のような内訳を例示しています。

 【普通に生活した場合の1日の総水分必要量を「2.5L」とした場合の内訳】
食事・・・・・・・・・1.0L
体内で作られる水・・・0.3L
飲み水・・・・・・・・1.2L

水分補給に適した飲み物とは

水分補給に適した飲み物には、お茶や水が挙げられます。ただし、お茶の場合は、利尿作用のある成分（カフェインやカリウムなど）を含んでいないものを選ぶようにしましょう。

たとえば、以下のようなお茶が挙げられます。

・麦茶
・玄米茶（カフェインレス処理済み）
・柿の葉茶
・びわの葉茶
・甜茶

水の場合は、水道水や市販のミネラルウォーターでも構いませんが、よりキレイで安心できるお水をお求めの場合は、浄水器を通した浄水や、整水器を通した電解水素水などがおすすめです。

お水選びについて詳しく知りたい方は、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
【水分補給に適した飲み物は？5つの飲み物を徹底比較！】
https://www.nihon-trim.co.jp/media/2665/

さいごに

水分は体の健康を保つうえで重要な役割を担っていますが、大量に摂取すればよいというものではありません。現代医学では水分摂取を強く推奨しているようですが、それは血行が良好な状態にあり、体の排泄機能も十分に働いていることが大前提です。

体が冷えていたり、血行不良な状態にあるときは排泄機能も十分に機能しませんので、せっかく健康のために摂った水分も、水太りをはじめとする様々な弊害を招くことになります。

水分摂取において、私たちがまず心掛けなければならないことは「水分の過剰摂取をさけること」と「摂った水分を体内で巡らせること」、そして「水分をしっかり排出できる体を保つこと」の3つです。

この3つを心掛けながら正しい水分摂取ができれば、水は皆さんの健康を支える大きな味方になってくれるでしょう。