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チョコレートの歴史を紐解く!原料カカオに期待される健康効果

一口食べただけで幸せな気分にさせてくれるチョコレート。甘くてほろ苦い独特のテイストが多くの人を夢中にさせます。

一般的にチョコレートは、スイーツ(甘味)として食べられていますが、実は体にもよい成分が含まれています。そのため、健康志向の強い一部の人たちの間では「健康食品」の一種として食べられることもあるようですが、チョコレートにはどのような成分が含まれていて、どのような健康効果があるのでしょうか?

今回はチョコレートの歴史や原料、成分、効果などについて解説をしていきます。

チョコレートの歴史

チョコレートは歴史の深い食べ物で、その主原料となっているカカオの起源は、紀元前3300年頃にまでさかのぼります。また、起源とされている場所は、アマゾン川の上流地帯およびベネズエラのオリノコ川流域と、「メソアメリカ[※1]」と呼ばれた中南米地域の一帯になります。特にメソアメリカでは、「オルメカ文明・マヤ文明・アステカ文明」など、いくつもの文明が発展しましたが、カカオは常に彼らの文化の中心にあり、さまざまな役割を持っていました。たとえば、神々への供物や交易品、薬、通貨(物品貨幣)などとして使われていたようです。

さまざまな役割を持つカカオですが、主な用途は「食用」で、始めのうちは殻の中にあるカカオ豆を生でそのまま食べていました。そのうち、焼くことによって味や香りが良くなることを偶然発見し、それ以来、焼いたカカオ豆をすり潰して飲むようになりました。これが「飲むチョコレート(カカワトル(チョコラトル))」の始まりと言われています。

カカワトルは、現代のチョコレート飲料とはまったく異なっていて、すり潰したカカオ豆に「水、トウモロコシ粉、唐辛子、アチョテ(食紅用)、数種類のバニラ」を混ぜて、泡立てていたようです。アステカの人々にとってカカワトルは、疲労回復効果に優れたパワードリンクだったようで、「カカワトルを一杯飲めば、何も食べなくても一日中歩ける」とさえ言われていました。しかし、カカオは非常に高価であったため、愛飲できるのは王侯貴族に限られていたようです。

1521年には、エルナン・コルテスというスペイン人がアステカを征服し、その際にカカワトルと出会います。彼は1528年にカカオを自国へ持ち帰り、スペイン王カルロス一世に献上しました。これがヨーロッパにおける「チョコレートの歴史」の始まりとなるのです[※2]。

カカワトルは1570年代にメキシコで「チョコラテ」と呼ばれるようになり、その影響を受けてスペインでも「チョコラーテ」と呼ばれるようになりました(以下、カカワトルをチョコラーテと呼ぶ)。コルテスによってスペインに伝えられたチョコラーテは、最初のうちはアステカ流の飲み方で飲まれていましたが、次第によりおいしい飲み方へと改良されていきます。その結果、水の代わりにお湯で溶かし、そこに砂糖を加えるようになり、現代のホットチョコレートのような飲み物へと変化しました。

スペインでもカカオの栽培が行われるようになり、イタリア、フランスへと広がり始めたチョコラーテはやがて海を越えてイギリスにも伝わり、庶民層にもそのフィールドが広がりました。

1828年には、バンホーテンというオランダ人によって、チョコラーテの新たな製造技術が開発され、1847年にその製造技術を用いたイギリスのフライ社[※3]が「食べるチョコラーテ(固形のチョコラーテ)」を発明しました。つまり、ここにきてようやく私たちがよく知る「チョコレート」の形が作られることになったわけです。しかし、当時のチョコレートはまだ苦みが強く、万人受けするような味ではありませんでした。そこで、1876年にダニエル・ピーターというスイス人が、固形チョコレートにミルクを添加して、この苦みを抑えることに成功しました。これが「ミルクチョコレート」の始まりで、この発明によってスイスはチョコレート王国の道を歩み始めることになるのです。

日本国内において最初にチョコレートが製造されたのは、東京両国の「米津凮月堂(風月堂)」で、そのことが1878年の新聞に掲載されています。しかし、当時製造されていたチョコレートは「原料であるチョコレート」を海外から輸入し、それを加工して製造されたもので、カカオ豆の処理工程を経て製造(一貫製造)されたものではありませんでした。やがて、森永製菓が国内初の一貫製造を行うようになり(1918年)、それに次ぐかたちで明治製菓も一貫製造を行うようになりました(1926年)。

昭和初期には、チョコレートは「ハイカラな洋菓子」として人気が高まりますが、第二次世界大戦(1939~1945年)が始まると、食料統制によってカカオが輸入禁止になり、製造ができなくなります。代わりに別のものを原料とした「代用チョコレート[※4]」が製造されましたが、本物のチョコレートの製造が再開したのは、戦後しばらく経った後でした(1950年頃から)。

そして戦後から現在に至るまで、さまざまな改良やアイデアが施され、「味、食感、見た目、用途」においてたくさんの商品が生み出され、私たちはそれらの商品を購入して味わっているわけです。

※1. 現在のメキシコの南半分からベリーズ、グアテマラ、ホンジュラス、エルサルバドルのあたりまでの地域。
※2. 1502年、コロンブスがホンジュラス近海を航行中に、マヤ人から受け取った交易品の中にカカオ豆があり、それをスペイン王フェルディナンド二世に献上したという説もあります。ただし、そのときは誰もカカオ豆に興味を示さず、普及はしなかったと言われています。
※3. フライ社 = 「JS Fry & Sons, Ltd.」。現在、フライ社のチョコレート製法は、さまざまな改良を経た上でモンデリーズインターナショナル社のブランド「Cadbury(キャドバリー)」として受け継がれています。
※4. カカオ豆の代わりに「百合の球根、サツマイモ、小豆」などを焙炒してパウダー状にした後、油脂を加えて、バニラで香りづけしたものをチョコレートの代用品としていました。

カカオ豆について

カカオは非常にデリケートな植物で、以下のような条件が揃った特別な地域(カカオベルト)にしか生息できないと言われています[※1]。

・赤道を挟んで北緯20°から南緯20°の範囲
・高度は海抜30~300m
・年間平均気温が約27℃
・気温差は小さくなければならない
・年間降雨量は最低1000mm以上

この条件を満たしているのは中南米、西アフリカ、東南アジアなどの国々です。

カカオの実は「カカオポッド」と呼ばれ、ラグビーボールのような形をしています(全長15~25cm)。厚さ1cmほどの硬い殻を割ると、中には20~50粒ほどの種が、白くヌルヌルとした果肉に包まれた状態で姿を見せます。この「種」の部分が、カカオ豆です(カカオ豆は「豆」ではなく「種」なのです)。収穫されたカカオ豆は、果肉と種を分離させるために発酵処理を行い、さらに天日や機械で乾燥させてから出荷されます。   

カカオ豆の品種は「クリオロ種、フォラステロ種、トリニタリオ種」の3系統[※2]に大別され、チョコレートの味や香り、グレードなどがこれによって大まかに決定づけられます。

【クリオロ種】
栽培地域:ベネズエラやメキシコなど、ごくわずかな地域
外観:深い縦みぞと、ゴツゴツとした隆起が特徴で、他の2種よりもやや細長い
味:苦みが少なくマイルド
香り:フルーティーでナッティ。その独特な香りから「フレーバービーンズ[※3]」としても珍重
栽培難易度:病害虫に対する抵抗力が非常に弱く、栽培するのが難しい。現在は絶滅に瀕していることから「幻のカカオ」とも呼ばれている。   

【フォラステロ種】
栽培地域:ブラジルや西アフリカなど、広く栽培
外観:表面はなめらかで、少し小さめのラグビーボールのような形をしている
味:渋みや苦みが強い
香り:酸味が強く刺激的
栽培難易度:成長が早く、病害虫への抵抗力も強いため、栽培しやすい品種(大量生産用)。

【トリニタリオ種】
栽培地域:中米、スリランカ、パプアニューギニアなど
外観:クリオロ種とフォラステロ種の中間的な外観
味:クリオロ種とフォラステロ種の中間的な味
香り:クリオロ種とフォラステロ種の中間的な香り
栽培難易度:「クリオロ種」と「フォラステロ種」の交配種であるため、良質なわりに栽培しやすいのが特徴(品質的には「フォラステロ種」に属す)。

※1. 国内でも、一部地域においてカカオ栽培が行われているため、必ずしもこの限りではありません。
※2. 一般的には3系統に大別されることが多いようですが、最新のDNA解析を用いた細かい植物学的な分類では10系統(アメロナード、コンタマナ、クリオロ、クラレイ、ギアナ、イクィトス、マラニョン、ナショナル、ナネイ、プリュス)に分けられています。         
※3. 風味や香りを増すために使用されるカカオ豆のことを指します。これに対し、生産量が多くチョコレートの土台となるカカオ豆のことを「ベースビーンズ」と呼びます。          

カカオに期待される効果

一般的にお菓子のイメージが強いチョコレートですが、実は体に良い成分がたくさん含まれています。近年ではチョコレートの主原料であるカカオについて、医学的な面からも関心が集まっているようです。

【主な含有成分】
・カカオポリフェノール
・カカオプロテイン
・食物繊維
・ステアリン酸
・テオブロミン
・ビタミン(B1、B2、E)
・ミネラル(カリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、鉄、銅、ナトリウム)など

それでは、期待される代表的な効果について見ていきましょう。

動脈硬化の予防

動脈硬化とは、動脈の血管壁が厚くなって弾力や柔軟性を失った状態を言います。この状態が進行すると、血管が血液の流量にあわせて柔軟に伸縮できなくなり、最悪の場合、血流に耐え切れずに破裂したり、狭くなった血管に血栓ができて詰まってしまうこともあります。原因の一つとしては悪玉コレステロールの酸化が挙げられますが、「カカオポリフェノール」には抗酸化作用があり、血中の悪玉コレステロールの酸化を抑制する効果があると言われています。 

花粉症の軽減

正常な人の場合は花粉に対して何の症状も表れませんが、花粉アレルギーの素因がある人は体内にIgEという抗体が作られます。このIgE抗体の蓄積が一定量に達した後、再び花粉が体内に入って作用すると、鼻水やくしゃみなどが引き起こされるのです。本来、花粉は体内に侵入したとしても過剰に反応する必要のない物質なのですが、免疫細胞の誤認によって過剰に反応してしまう場合があります。しかし、近年の研究では「カカオポリフェノール」を摂取することで誤った免疫応答をある程度抑え、ひいては花粉症の症状も軽減できるのではないかと考えられています。

認知機能の向上

チョコレートに含まれている成分の一つに「テオブロミン[※1]」というものがあり、この成分には認知機能の向上効果が期待されています。

金沢大学と島根大学の共同研究では、ダークチョコレートの摂取によってヒトの認知機能が向上し、摂取を中止してもその状態が3週間維持されたと報告されています。この結果はヒト介入試験[※2]によって得られたものですが、そこからさらにマウス実験を行って有効成分の絞り込みをしたところ、テオブロミンが認知機能の向上に関与している可能性が示されました。また、テオブロミンは脳神経の新生にも影響を及ぼしている可能性があると報告されています。

※1. テオブロミンは、カカオの学名「テオブロマ・カカオ」から名付けられた成分で、自然界においてこの成分を含んでいるのはカカオだけです。
※2. 試験食の有効性や安全性を示す科学的な証拠を得るためのヒト対象試験。

チョコレートに期待される新規機能性

帝京大学の古賀仁一郎教授と株式会社明治の共同研究によると、チョコレートに含まれている「カカオプロテイン(カカオ豆に含まれるタンパク質)」には、便通を改善させる効果が期待できると報告されています。

カカオプロテインはカカオ特有の成分で、その性質は消化酵素に分解されにくい「難消化性タンパク質(レジスタントプロテイン)」であることが、当研究によって明らかとなっています。そのため、カカオプロテインは小腸では消化吸収されず、大腸にまで届けられます。大腸では、便の材料となることで「便のかさ」を増やしたり、腸内細菌のエサになって腸内フローラ(腸内細菌叢)を変化させたりするようです。このような作用が結果的に腸を整え、便通の改善につながっていると述べられています。

さいごに

昨今は、新しいウイルスの誕生などによって、免疫機能の重要性がよく話題にあげられます。そして、そういった話題があげられる際に一緒にあげられるのは「腸の健康状態」に関する話題ではないでしょうか。ご存知かもしれませんが、腸は「免疫の要」とも言われていて、免疫細胞の働きに大きな影響を与える重要な臓器です。

腸活の一環として便通の改善を期待するのであれば、今回紹介したチョコレートを毎日の食事に取り入れてみるのも良いかもしれません。オススメの摂取方法は、ハイカカオチョコレート(カカオ含有量70%以上のチョコレート)を1日あたり50g程度、一度にまとめて食べるのではなく「食前」または「間食」のタイミングで、数回に分けて少量ずつ摂取する方法です。

また、より手軽に便通の改善をはかりたい人は、胃腸症状の改善効果が認められている電解水素水という水の飲用もオススメです。下記の記事では、この水について詳しく解説していますので、気になる方は参考にしてみてはいかがでしょうか。
【付加価値を持つ水とは?腸活に役立つ電解水素水について解説!】
https://www.nihon-trim.co.jp/media/29468/


参考文献

株式会社明治「チョコレートの歴史を解説!世界や日本でチョコレートはどのように広まったのか?」

https://www.meiji.co.jp/hello-chocolate/basic/03.html

平塚製菓株式会社「東京カカオプロジェクト」

https://tokyo-cacao.com/story/

クラシエ「動脈硬化になる仕組みと対処法について」

https://www.kracie.co.jp/ph/k-suisinkai/ketsueki-kekkan/symptom/arteriosclerosis.html

日本チョコレート・ココア協会「第26回チョコ講演集|テオブロミンの認知機能向上への可能性(金沢大学&島根大学)」

http://www.chocolate-cocoa.com/symposium/pdf/sympo_26e.pdf

日本チョコレート・ココア協会「帝京大学(古賀仁一郎)|高カカオチョコレート摂取による便通改善作用」

http://www.chocolate-cocoa.com/symposium/pdf/sympo_21a.pdf

帝京大学「古賀仁一郎准教授が株式会社明治との共同研究成果を発表」

https://www.teikyo-u.ac.jp/faculties/science_tech/topics/topics10

帝京大学「生体分子化学研究室 (古賀仁一郎研究室)」

https://www.teikyo-u.ac.jp/faculties/science_tech/labo/bio_science_koga

書籍「チョコレートの事典」成美堂出版 出版

書籍「チョコレートの手引」蕪木祐介 著

書籍「チョコレートでちゃっかりダイエット」学研プラス 出版

書籍「チョコレートの大研究」日本チョコレート・ココア協会 監修

書籍「チョコレートの奇跡」楠田枝里子 著

書籍「Hanako特別編集 ハイカカオBOOK」マガジンハウス 出版