「未病」とはどんな状態?未病対策の重要性と基本について | 水と健康の情報メディア|トリム・ミズラボ - 日本トリム

「未病」とはどんな状態?未病対策の重要性と基本について

一般的に、私たちは心身の状態に対して「健康」か「病気」かの二元論で捉えがちです。しかし実際には、ある瞬間を境にして急転直下で病気状態に陥ることは基本的にありません。つまり、健康状態と病気状態の間には、もう一つ別の状態が存在していると考えた方が合理的です。この概念は「未病(みびょう)」と呼ばれ、古くは2000年以上前の中国の医学書「黄帝内経素問」に原点を見ることができます。

一方、日本においては、貝原益軒が江戸時代に記した「養生訓」という書物の中に、未病のエッセンスが取り入れられていることを確認できます。時代が江戸から明治に変わるにつれて、徐々に西洋医学が台頭し、いつしか未病の概念は忘れ去られていきました。しかし、近年では「少子高齢化」や「大病罹患率の増加」といった問題の出現によって、再びこの概念が注目を集めています。

今回は、健康維持に欠かせない概念、「未病」について解説をします。

未病とは?

「未病」とは、発病には至らないものの、健康な状態から離れつつある状態を表した概念です。この未病という概念は、現代医学において「病気の一歩手前」という意味でおおむね解釈が共通しています。

しかし、東洋医学と西洋医学とでは、未病と判断する根拠に若干の違いがあるようです。

東洋医学 検査などで異常は見られないが、患者本人が何らかの軽い症状を感じている状態
(肩こり、のぼせ、しびれ、倦怠感、めまい、冷えなど)
西洋医学 検査などで異常が見られるが、患者本人は何の症状も感じていない状態
(脂肪肝、高脂血症、未破裂脳動脈瘤、軽度認知症など)

いずれにしても未病を放置すれば、やがて大きな病気が発症し、健康が損なわれる可能性があります。しかし、現在の病気に対する一般的な考え方は「発症したら早期に治療する」といった、事後的な考えに重きが置かれているように感じられます。それは、年々増加する重篤な病気の罹患率からも窺い知ることができ、病気に対する警戒心の低さを物語っているのではないでしょうか。もちろん、発症した病気を早期に治療することは大切ですが、それよりも大切なことは病気を寄せつけないように暮らすことや、完全に病気になってしまう前に手を打つことです。

ちなみに医学では、健康な時期から病気を寄せつけないように個人で取り組む生活習慣の改善などを「一次予防」と呼んでいます。そして、検診などによって病気を早期に発見・治療する対策を「二次予防」、病気の治療過程において再発防止対策を講じることを「三次予防」と呼んでいます。未病を早期に発見して改善することは二次予防に該当するわけですが、広義においては一次予防も含んだ「予防医学」の一つとして捉えられることもあります。

いずれにしても、未病は心身の健康を保つ上で、欠かすことのできない重要な概念と言えます。

未病対策の重要性

未病対策の重要性は、大病の発症を未然に防ぎ、健康状態を維持することにあります。特に高齢者の慢性的な疾患は、一度発症すると治療が困難だと言われているため、未病対策を行う意義は極めて大きいと言えるでしょう。

また、動脈硬化で脳梗塞を起こした場合を例に挙げると、治療を行なって運よく一命をとりとめたとしても、その後に運動麻痺や言語障害などの後遺症が残ってしまうことがよくあります。これらの後遺症も、後から完全に修復することは非常に困難です。未病対策は、こういった後遺症のリスクを回避する意味でも重要な取り組みなのです。そして、これらのことを考慮してみると、未病対策への取り組みは、大病リスクが高まる中年や高齢者の方にとって、喫緊の課題だということに気づかされるでしょう。

しかし、未病対策の重要性は本来、若くて健康な人たちこそ知っておくべきものなのかもしれません。「今の自分の体は、病気が発症する一歩手前の状態なのかもしれない」、そういった警戒心を持つことで、喫煙や飲酒などの嗜好品との付き合い方もきっと変わるはずです。また、若者がよくやってしまう「乱れた食生活」や「夜更かし」なども、早い段階で是正することができるでしょう。

未病対策の2つの基本

個々の病気ごとに未病対策を行う場合のやり方は膨大にあります。しかし、どの病気にも共通する未病対策の基本は、以下の2つが挙げられます。

  • 健康診断
  • 生活習慣の改善

それぞれについて見ていきましょう。

健康診断

ビジネスパーソンの多くは、会社で行われる定期健康診断によって、年に1~2回、自分の健康状態を確認するタイミングがあります。

健康診断の診察では、医師から健康状態についての所見やアドバイスを受けることがありますが、医師の優しい口調に安心してはいけません。それらのアドバイスは、未病を見つけるための重要な情報になる場合がありますので、真摯に受け止め、その情報を元にして改善に向けての取り組みを実際に行っていく必要があります。

また、診断結果表の数値もしっかりと確認することが大切です。どの項目がどういった意味を持っているのかを理解すること、そして前回や前々回の数値と比較して、どのような変化を見せているのかということも確認しておきましょう。仮に異常値が見られなくても、体に何らかの症状が現れている場合には、未病の可能性があります。該当検査項目のところには「正常値だが症状あり」とでも記載しておき、より精密な検査を受けるなど、その後の改善に役立てると良いでしょう。

生活習慣の改善

正しい生活習慣は、未病の改善をする上で欠かすことのできない重要なポイントです。

また、単に未病状態を改善するだけでなく、未病以前の健康状態の維持や、未病から進行した病気の治療においても、正しい生活習慣は求められます。特に、現代人の多くが罹患するガンや脳卒中などの大病は、生活習慣の乱れが主な原因であると言われていますので、正しい生活習慣は「命を守る習慣」と言いかえることもできるでしょう。

改善すべき主な項目は「食事・運動・睡眠」ですが、現代では「メンタル」のケアも重要な課題です。理想はこれらすべてを一気に改善することですが、住環境や職場環境、または経済的な理由から部分的にしか改善が行えない人もいるかもしれません。そのような人は、次の2つのルールをあらかじめ設定しておくとよいでしょう。

①改善可能範囲の規定(自分が改善できる範囲を明確にする)
②改善の優先順位決め(範囲内で最も効果的な改善から行う)

この2つのルールは「ターゲット」と「プラン」と言いかえることもでき、これによって「達成度」が測れるようになります。この達成度を測ることによって、気持ちが安定し、より自分を律することができるようになるのです。

逆にこの2つが設定されていないと、「この点が改善できてない」といった中途半端な状態から未達成感や罪悪感が生まれ、気持ちが不安定になります。また、改善できずにいるのは自分のせいではない、という都合のよい口実が、本来、改善できるはずの生活習慣にまで及んでしまい、甘えの気持ちによって生活が全般的に乱れてしまいます。

住環境、職場環境、経済的な理由といった、さまざまな制約がある中で、自分の努力によってどの生活習慣を変えることができるのか、逆に、自分の努力ではどうやっても変えられない生活習慣はどれなのかを明確にしましょう。変えられないものは、後々の課題として一旦きちんと諦め、とりあえずは変えられるものに集中することが大切です。そして、その変えられるものの中で、重要度や緊急度から優先順位を設定し、習慣として一つずつ確実に定着させていきましょう。

腸内環境を整える

健康状態を維持するという意味においては、体の免疫力を下げないようにすることも大切です。

免疫力の低下は、主に乱れた生活習慣を送ることによって引き起こされます。特に、食生活の乱れは「免疫の要」とも呼ばれる腸に対して、とても悪い影響を与えます。例えば、小麦粉食品や、粗悪な脂質が含まれている食品の過剰摂取などが挙げられます。いわゆる「ジャンクフード」や「エンプティカロリー」と呼ばれる食品群が、腸内環境を乱して、免疫力の低下を引き起こす大きな要因となっているのです。また、肉類メインの偏食習慣や日常的な過剰飲酒なども腸内環境を乱し、便秘をはじめとする様々な胃腸症状を引き起こしてしまいます。

繰り返しになりますが、腸は「免疫の要」であり、免疫細胞の約7割がここに集まっています。そのため、腸内環境が乱れるということは、免疫力の大幅な低下を招くことを意味しているのです。免疫力が低下すれば、風邪やインフルエンザにかかりやすくなるほか、ガン細胞の増殖も早めてしまいます。ですので、毎日の食事では食品添加物の摂取を極力避け、食物繊維や発酵食品をしっかり摂取して、腸内環境を健やかに保ちましょう。

また「摂取するもの」で言えば、水分の摂取も重要です。適度な水分摂取は便の硬化を抑制し、便秘の予防に役立ちます。また、寝起きに飲むコップ1杯のお水は、腸の蠕動運動(ぜんどううんどう)を促してくれます。さらに、常飲するお水を「電解水素水」にすれば、胃腸の働きを助けてお通じを良好にしますので、より一層腸を健やかに保つことができます。

電解水素水については、下記の記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてみて下さい。
【付加価値を持つ水とは?腸活に役立つ電解水素水について解説!】
http://www.nihon-trim.co.jp/media/29468/

さいごに

日本人の寿命は他国の人たちの寿命と比べて長く、日本は長寿の国と言われています。しかし、その長い寿命の背後には、高齢者における慢性疾患や認知症などの発症率が高いという問題が存在しています。つまり、寿命は長いけれども、高齢期には闘病生活を余儀なくされることも多いということです。このため、近年では寿命の長さだけではなく、寿命に占める健康寿命(健康な状態で過ごす期間)の割合も重視されるようになりました。こういった気運に伴って、今まで以上に予防医学や未病に対する関心が高まりつつあります。

高齢期は人生の集大成となる時期です。この時期を健やかに送るためには、日ごろからの節制と、未病を疑うご本人の意識が何よりも大切と言えるでしょう。


参考文献

日本学術会議「第7部予防医学研究連絡委員会|次世代の健康問題と予防医学の将来展望」

https://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/17htm/1763z.html#1-1

jinjer Blog「深夜残業が多い人に必要な健康診断とは?」

https://hcm-jinjer.com/blog/kintai/midnight_overtime_medical-checkup/

書籍「次世代の医学・医療がわかる未病医学 入門」金芳堂 出版

書籍「次世代の医学・医療がわかる未病医学 臨床」金芳堂 出版

書籍「温泉・森林浴と健康」大修館書店 出版

書籍「モーツァルト音楽療法で未病克服力をつける」和合治久 著