疲労予防で毎日が変わる!生活の中で意識したい4つのポイント

皆さんは疲労に対して、しっかりマネジメントできていますか?
疲労マネジメントができているかどうかで、日々の充実度は大きく変わります。たとえば、疲れにくい身体であれば趣味や目標に積極的に取り組め、家族や友人との時間もより豊かに過ごせます。ビジネスにおいては生産性の向上やミスの軽減、新たな発想の創出にも繋がるでしょう。
さらに、疲れにくい身体は見た目の印象にもプラスに働くため、まさに「やらない手はない」といえます。
疲労マネジメントには、大きく分けて次の2つがあります。
- 疲労予防(疲れをためないよう習慣を改善)
- 疲労回復(疲れた後のリカバリーを早める)
今回はこのうち「疲労予防」にフォーカスし、日常生活でできる具体的な方法をご紹介していきます。
目次
疲労予防の4ポイント
疲労を予防するためには、まず原因を見極めることが大切です。
たとえば、重たいものを高い場所にしまうような動作を繰り返していると、それ自体が疲労の一因になっていることが考えられます。この場合は「収納場所を低い位置に変える」、あるいは「重たいものを軽いものに置き換える」といった改善が有効です。こうした物理的な工夫を少し加えるだけでも、日々の疲労度は大きく変わってきます。
しかし、疲労予防は物理的な改善だけではありません。もうひとつ大切なのが「日常動作=生活習慣の見直し」です。
ここでは、そのための4つのポイントをご紹介します。
・長時間座り続けない
・良い姿勢を保つ
・悪い歩き方を正す
・こまめに水分補給する
それぞれについて、見ていきましょう。
長時間座り続けない
近年はテクノロジーの進展により、デスクワークをする人が増え、娯楽や社交においてもPCに向かう時間が増えています。これらの傾向は、座位時間(座った状態で過ごす時間)の増加と深く関係しています。
座位時間の増加は、「病気のリスク」や「寿命の短縮」といった観点から、医師や専門家のあいだでも問題視されています。
しかし、座位時間の増加がもたらす問題はそれだけでなく、実は「疲労」の原因にもなるのです。座りっぱなしになることで、下半身の血液やリンパ[※]の流れが悪くなるためです。
血液の流れが悪くなると、筋肉や脳に必要な酸素や栄養が届きにくくなり、疲労を感じやすくなります。また、リンパの流れが悪くなると、老廃物や余分な水分の回収が滞り、むくみや倦怠感を引き起こしやすくなります。
座りっぱなしの疲労、いわゆる「座り疲労」を防ぐには、30分に1回は立ちが上がることが大切です。会議中など、どうしても立ち上がれない場合は、座ったままできる「レッグ・タップ」というエクササイズがおすすめです。
レッグ・タップを行うと、ふくらはぎの血流が改善され、ひざ裏のリンパ節も刺激されるため、老廃物の排出が促されます。
レッグ・タップのやり方
・イスに座った状態で、両足のかかとを上げる(つま先は床につけたまま)
・かかとをゆっくり下ろし、再び上げる動作を15秒間繰り返す
・次に、両足のつま先を上げる(かかとは床につけたまま)
・つま先をゆっくり下ろし、再び上げる動作を15秒間繰り返す
※. ひざ裏にはリンパ節があり、主にひざから下のリンパ管が集めてきたリンパ液に含まれる老廃物や異物を処理(ろ過・免疫チェック)する働きがあります。
良い姿勢を保つ
現代人はスマホやPCの長時間使用によって、下を向く時間が増えています。下を向く時間が増えると、体は悪い姿勢を覚え、スマホやPCを使用していない状況でも猫背気味になりがちです。
猫背などの悪い姿勢は、慢性的な肩こりや頭痛、腰痛の原因になるほか、ひどくなると変形性股関節症や変形性脊椎症、椎間板ヘルニアなどの発症リスクも高まります。
さらに、悪い姿勢は疲労の原因にもなります。
悪い姿勢が疲労を招く主な理由としては、以下のとおりです。
【呼吸が浅くなる → 酸素供給の低下】
・背中が丸まることで肺が圧迫され、深い呼吸がしにくくなる
・酸素の取り込みが減り、全身の細胞が酸素不足に → 疲労感の増加
【呼吸が浅くなる → 自律神経のバランスが乱れる】
・猫背は副交感神経(リラックス神経)が働きにくくなる姿勢
・常に交感神経が優位になりやすく、慢性的な緊張や疲労感を招く
【血行不良 → 老廃物がたまりやすくなる】
・背中や肩、首の筋肉が緊張して血流が悪化
・乳酸などの老廃物が筋肉に蓄積 → コリやだるさ、全身倦怠感の原因に
【筋肉の使い方に偏り → 特定部位の慢性疲労】
・肩や首、腰などに負担が集中
・本来使うべき筋肉が使われず、逆に負担のかかった部位が疲労 → 痛みに繋がる
【消化機能の低下】
・胃や腸が圧迫され、食欲不振や胃もたれが起きやすくなる
・栄養吸収が悪くなり、エネルギー不足 → 疲れやすさに繋がる
疲れにくい良い姿勢のポイント
良い姿勢とは、体を横から見たときに「耳、肩、ひざ、くるぶし」の4点を結んだラインが、地面に垂直になっている状態です。この状態を保つことで、体の前後にある筋肉に負担が均等にかかるため、一部の筋肉だけが疲労するようなことはなくなります。
また、肺や胃腸も圧迫されないので、酸素の取り込みや血流、胃腸の動きがスムーズになり、疲労を予防できます。
まずは「耳を肩より前に出さない」、このことを意識するだけでも姿勢はかなり改善されます。
悪い歩き方を正す
前述では、仕事や娯楽で「座位時間が増加傾向にある」とお伝えしましたが、その一方で、一日中歩き回る職業に従事している人も少なくありません。
たとえば、配達員、巡回警備員、看護師、遊園地のキャスト、倉庫内ピッキング作業者、飲食店ホールスタッフ、観光地ガイド、外回り営業、ホテルのベルパーソンなどの方々が、それにあたります。
疲労予防には「適度な運動」が推奨されますが、これらの職業では過度な歩行に陥ることもあります。
一般的に、一日の推奨歩数は「8,000歩以上」と言われていますが、それをはるかに超える歩数で、連日の仕事に従事しつづけることは、体力的な疲労もさることながら、関節疲労も蓄積され、足腰を傷める原因になりかねません。
とはいえ、現実的にはそう簡単に職業を変えるわけにもいきませんので、何らかの対策が必要になります。そこでおすすめなのが、「歩き方の改善(矯正)」です。
まずは、確認の意味もかねて、「悪い歩き方(疲労しやすい歩き方)」から見ていきましょう。結論から言いますと、悪い歩き方というのは「かかととつま先(足裏全体)を同時に地面につける歩き方」のことです。いわゆる「ベタ足歩行」のことで、ドスドス(タンタン)と音がなるような歩き方です。この歩き方は、足首や膝の関節の可動域をほとんど使わないため、筋肉や関節に直接負担(衝撃)がかかり、ケガをしやすくなります。
また、通常の歩行では、地面を蹴った時の床反力を前方への推進力として利用するため、連続的な歩行動作が生まれますが、ベタ足歩行では床反力がうまく伝達されず、歩行動作に連続性がなくなり、各歩幅でいちいち筋力を使うことになります。つまり、ベタ足歩行は歩行効率が悪く、疲れやすいというわけです。
さらに、このベタ足歩行を続けて足腰を傷めたり外反母趾[※]になると、その部位をかばおうとして歩行フォームが乱れ、ますます疲労してしまう可能性もあります。
正しい歩き方のポイント
・歩幅は自分の足サイズの2倍程度を目安に
・疲れてもなるべく同じ歩幅をキープする
・肩甲骨を寄せ、耳と肩を結ぶラインを垂直に保つ
・足裏の接地順は「①かかと → ②足の外側 → ③つま先(親指寄り)」
※. ベタ足歩行を続けると、足裏の筋肉が衰えて偏平足になりやすく、それが外反母趾の原因になることがあります。
こまめに水分補給する
疲労を予防する上で、意外と見落とされがちなのが「水分補給」です。
人間の体の約60%は水分でできており、体内の水分が不足すると血流が滞りやすくなります。血液の流れが悪くなると、脳や筋肉への酸素・栄養の供給がスムーズに行われなくなり、精神的疲労(脳神経疲労)や肉体疲労に繋がります。
また、体内の水分不足は消化液の分泌も減少させ、効率的な消化を妨げます。これによって、胃に負担がかかり、胃もたれなどの内臓疲労を招くくともあります。そのため、こまめな水分補給は内臓疲労を予防するうえでも重要なのです。
水分補給のポイント
大切なのは「水分補給のタイミング」です。
多くの人は「のどが渇いたら飲む」と考えがちですが、このタイミングはすでに脱水が進んでいるサインです。疲労予防の観点では後手になってしまい、体に負担をかけることになります。
水分補給は「先制飲水」が基本です。
つまり、のどが渇く前に少しずつ飲むことが大切です。常に水を手元に置き、こまめに摂るようにしましょう。
ただし、一度にガブガブ飲む「飲みだめ」は、内臓に負担をかけ、体内の電解質バランスも崩れるため避けてください。
以下の記事では、一日の水分補給量の目安や、水分の排出サイクルなどについて解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
【水は一日にどれくらい飲めば良い?健康的な飲み方も知っておこう】
https://www.nihon-trim.co.jp/media/29872/
さいごに
元気で疲れにくい状態は、物理的な作業量を増やせるだけでなく、将来に希望を見出す意志の強さや、人にやさしくできる心の余裕も生み出します。
私たちが生命体である以上、疲労を完全になくすことはできませんが、疲労を減らしたり、回復を早めることは可能です。つまり、疲労を不可抗力として受動的に捉えるのではなく、能動的にマネジメントすることで、より豊かで充実した日々を手に入れることができるというわけです。
- 監修者のご紹介 -
参考文献
厚生労働省 e-ヘルスネット
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp
「入浴によって得られる作用」日本浴用剤工業会
https://jbia.org/knowledge4.html
公益財団法人世田谷区保健センター
http://www.setagayaku-hokencenter.or.jp
「ウォーミングアップとクーリングダウン」独立行政法人日本スポーツ振興センター
https://www.jpnsport.go.jp/anzen/Portals/0/anzen/branch/nagoya/pdf/totsuzenshi8.pdf
さかぐち整骨院「膝窩リンパとは?膝裏のむくみや痛みの原因と対処法を解説」
https://sakaguchi-seikotsuin.com/膝窩リンパ/膝窩リンパとは?膝裏のむくみや痛みの原因と対
新潟大学医学部医学科「News&Topics|リンパ節の精密なフィルター構造の実態」
https://www.med.niigata-u.ac.jp/contents/info/news_topics/208_index.html
株式会社メディカルノート「スマホ使い過ぎで肩こり―その状態は「クロスシンドローム」!正しい姿勢で解消を」
https://medicalnote.jp/nj_articles/190620-001-DW
サモーナスポーツ整骨院「【姿勢と自律神経の乱れ】その密接な関係をご紹介」
https://samona.co.jp/blog/shisei-4/
厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド 2023」
https://www.mhlw.go.jp/content/001194020.pdf
株式会社早稲田エルダリーヘルス事業団「歩行分析システム AYUMI EYE|歩行と床反力の関係」
https://www.ayumieye.com/floor-reaction-force/
じおんじ整骨院「外反母趾の原因は?」
https://jionji-seikotsu.com/2024/01/15/hallux-valgus/
全薬グループ「正しく知って夏を乗り切る水分補給のコツ」
https://www.zenyaku.co.jp/k-1ban/detail/hydration.html
大塚製薬「効率的な水分補給」
https://www.otsuka.co.jp/health-and-illness/heat-disorders/replenish/
書籍「スタンフォード式 疲れない体」山田知生 著
